レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2020年10月11日
- 登録日時
- 2021/03/28 10:27
- 更新日時
- 2021/03/31 15:58
- 管理番号
- 千県中参考-2020-20
- 質問
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解決
日米での戦争中、日本からの手紙をアメリカへ届けるようなことが可能だったか知りたい。赤十字の活動で郵便を届けていたかも知れない。
- 回答
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戦時中の郵便について、【資料1、2】によると、一般的な郵便については交戦国との郵便の往復は停止されていたようですが、【資料1、3】の資料にあるように軍事郵便、抑留者郵便などの手段で手紙を送ることはできたようです。また【資料4~7】では赤十字社の活動で郵便を届けていたことがわかります。
【資料1】『郵便の歴史』
p232「昭和一六年一二月、わが国が太平洋戦争に突入すると、外国郵便は一部の国を除いて停止状態になる。すなわち開戦直後の一二月一一日、アメリカとイギリス宛の郵便物、暗号などを使用した郵便物の差出が禁止された。」
p239-246「2 軍事郵便」の項で、兵士が戦地から兵士の家族に、兵士の家族が内地から戦地の兵士に差し出すことのできる軍事郵便の運営体制や、野戦郵便局についての説明があります。
p242にアッツ島、キスカ島に野戦郵便隊員が派遣されたとの記述があります。
【資料2】『戦場を駆け抜けた書簡』
p236「まず戦争が始まると、交戦国との郵便の往復が停止される。送達の途上にあった郵便物は、たとえ到着していても敵または敵性機関へは配達されないことが多い。たいていは中立国を通じて返送されてしまう。そうでなければ紛争継続中は配達を保留され、解決後に改めて届けられるか、いずれかになるのである。」
【資料3】『軍事郵便』
p211「リーフ31 玉木淳一」「第二次世界大戦 抑留者郵便」
「昭和16(1941)年12月、太平洋戦争がはじまると、アメリカおよびカナダ政府は日本人、日系人の抑留を開始。昭和17年10月までに14万3,000人の抑留を完了した。昭和18年8月、日米間で抑留者の第二次交換協定が結ばれた。この協定の中には抑留者のへの郵便物の交換も含まれていた。」との記述があります。例として掲載されている手紙はカナダ宛のものです。
【資料4】『世界と日本の赤十字』
p98-101「3 船舶による外交官や民間人などの交換と海外の日本人被抑留者への援助」
日本赤十字社が外国にいる日本人被抑留者に緑茶や慰問品を送ったこと、1942(昭和17)年10月から、在外日系人や被抑留者と日本にいる家族との手紙のやりとりを行った「赤十字通信」事業が始まったことなどが記載されています。
またp100に、アメリカのアイダホ州ミネドカ収容所にいた小平尚道さんが、日本赤十字社を通じて日本からハガキ6枚、手紙1通を受け取った、と自身の手記に書いている、との記述があります。
確認したところ【資料5】『アメリカ強制収容所』(小平尚道著 玉川大学出版部 1980)p187-188「2 日本赤十字社よりの贈り物」に該当の記述がありました。
【資料6】『太平洋戦争中の国際人道活動の記録』
p1「太平洋戦争の最中においても、交戦国の捕虜や敵国に抑留された民間人等に対し、人道的立場から敵、味方の区別なく様々な国際救援活動が行われていたことは、あまりに世に知られていない。当時は、現在のように国連組織もなく、N・G・Oも殆ど育っていなかったため、これらの活動は、赤十字が殆ど一手に引き受け行っていた。」
そのほか、第一次、第二次交換船の派遣や、赤十字通信及び消息電報の内訳等の詳しい記載もあります。
【資料7】立川京一[他]「【研究ノート】政府及び軍と ICRC 等との関係―日清戦争から太平洋戦争まで―(後編)」p105-150(https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1282364)※国立国会図書館デジタルコレクションで閲覧可能。
p123「捕虜・民間人抑留者が祖国の家族と連絡をとる手段として、赤十字通信、捕虜郵便、捕虜・抑留者電報等がICRC と各国赤十字社によって運営された。これらはすべてICRC 経由で送られた。」との記述があります。
- 回答プロセス
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1 日本十進分類法で「郵便」は「693」なので該当の書架を確認。【資料1】に記載あり。
2 【資料1】で「軍事郵便」というキーワードを得たので、自館の蔵書を全項目「軍事郵便」で検索。【資料2】、【資料3】を発見。
3 事前調査事項で赤十字の活動かもしれないとの情報があったので、自館の蔵書を全項目「赤十字」で検索、太平洋戦争中の活動について載っていそうな資料を確認。【資料4】、【資料6】を発見。【資料4】から【資料5】の情報を得る。
4 Googleで「赤十字」&「郵便」&「太平洋戦争」を検索。【資料7】を発見。
(インターネットの最終アクセス:2020年10月11日)
- 事前調査事項
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スタンフォード図書館「邦字新聞デジタルコレクション」(https://hojishinbun.hoover.org/?l=ja)の『ユタ日報』(1943年8月18日)p2「日本からの便り」(https://hojishinbun.hoover.org/ja/newspapers/ytn19430818-01.1.2)に、「當市赤十字支部に懐かしい日本よりの手紙が着い」たとの記述がある。
- NDC
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- 郵便.郵政事業 (693 9版)
- 参考資料
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- 【資料1】『郵便の歴史』(井上卓朗共著 鳴美 2018)(0106609045)
- 【資料2】『戦場を駆け抜けた書簡』(柘植久慶著 原書房 1991)(9105018778)
- 【資料3】『軍事郵便』(日本郵趣協会 2010)(0106191889)
- 【資料4】『世界と日本の赤十字』(桝居孝著 東信堂 2018)(0106644984)
- 【資料5】『アメリカ強制収容所』(小平尚道著 玉川大学出版部 1980)(9100232621)
- 【資料6】『太平洋戦争中の国際人道活動の記録』(日本赤十字社 1993)(9101995132)
- 【資料7】立川京一[他]「【研究ノート】政府及び軍と ICRC 等との関係―日清戦争から太平洋戦争まで―(後編)」(『防衛研究所紀要』11巻2号 2009.1 https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1282364)p105-150
- キーワード
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- 郵便-歴史(ユウビン-レキシ)
- 赤十字(セキジュウジ)
- 太平洋戦争(タイヘイヨウセンソウ)
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 一般
- 質問者区分
- 個人
- 登録番号
- 1000295881