レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2020年06月17日
- 登録日時
- 2021/03/08 14:48
- 更新日時
- 2021/03/08 17:03
- 管理番号
- 千県東-2020-0012
- 質問
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解決
演奏の「奏」の字の中は「夭」か「天」とどちらが使われているか、昭和30年代の教科書・新聞などで調べてほしい。
この頃に学校で習ったときは「夭」だったと思ったが、そのころに出版された漢和辞典を見ても「天」の字である。「夭」の字を探すと、『大言海』の見出し語、『大漢和辞典』では「夭」の字が使われていた。
- 回答
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国立教育政策研究所教育図書館に調査依頼をしたところ、『中学校国語二』(学校図書株式会社)の昭和31―35年度使用の教科書と36・37年度使用の教科書は「奏」の下が「夭」(よう)だったが、40年度使用からは「天」であった、とのことでした。
また、当館で契約している新聞データベースで昭和30年代の紙面を確認しましたが、見出しなどに使われているサイズの大きな字では、上の棒が短い「天」のように見えました。
なお、昭和30年代に刊行された漢和辞典を確認したところ、以下は上の棒が短い「天」のように見えました。
『字源』(簡野道明著 角川書店 1955)p440
『大字典』(上田万年[ほか]編纂 講談社 1963)p527
『新字鑑』(塩谷温編 高等教育研究会 1964)p753
こちらは「夭」のように見えました。
『大漢和辞典 巻3』(諸橋轍次著 大修館書店 1956)p586
- 回答プロセス
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・朝日新聞データベース「聞蔵」、毎日新聞データベース「毎索」で、キーワード「奏」で1956年から1964年の新聞記事を検索。
「ソ連の先制功を奏す」(『朝日新聞』1956年(昭和31年)1月8日)p3、「実った好意の五重奏-野口博士の偉業称える胸像、日本へ」(『毎日新聞』1956年(昭和31年)11月10日)p7などが見つかったが、見出しの文字は全て上の棒が短い「天」のように見えた。
・昭和30年代に刊行された漢和辞典を確認。
以下は上の棒が短い「天」のように見えた。
『字源』(簡野道明著 角川書店 1955)p440
『大字典』(上田万年[ほか]編纂 講談社 1963)p527
『新字鑑』(塩谷温編 高等教育研究会 1964)p753
以下は「夭」のように見えた。
『大漢和辞典 巻3』(諸橋轍次著 大修館書店 1956)p586
・「奏」が当時何年生で習っていたかを調査した。
現在は、文部科学省HP「別表 学年別漢字配当表」(https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/youryou/syo/koku/001.html)によれば、6年生で習う漢字になっている。
レファレンス協同データベース「昭和20年代に小学校1年生で習う漢字を知りたい」(https://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000243536)を参考に、『やさしい国語のきまり : 子どもの文法. 5・6年』(石田佐久馬編〔他〕 さ・え・ら書房 1957)(国立国会図書館デジタルコレクション:info:ndljp/pid/1627245)を確認。88コマからの「学年別漢字配当表」に「奏」の字は見つけられなかった。
また、国会図書館デジタルコレクションでキーワード「学年別漢字配当表」と検索し、昭和30年代のものを確認したが、どれにも「奏」という字は見つけられなかった
このことから、「奏」は中学校以上で習う漢字ではないかという推測を立てた。
・当館蔵書検索を件名「教科書 国語」で検索したが、当時の教科書は見つからなかった。
・リサーチ・ナビを「教科書 昭和30年代」で検索したところ、レファレンス協同データベース「昭和30年ごろの中学校国語教科書を探している」(https://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000225263)がヒットした。ここから、国立教育政策研究所 教育図書館で当時の国語の教科書の所蔵がありそうだということがわかった。
・国立教育政策研究所教育図書館に協力レファレンスを依頼したところ、回答が得られた。
その際同図書館から『教科書体変遷史』(板倉雅宣著 朗文堂 2003)という資料の情報を教えていただいたので確認したが、「奏」についての記述は見つけられなかった。
・「学年別漢字配当表」の変遷についての情報を得るため、Googleで「学年別漢字配当表 変遷」と検索したところ、「当用漢字・常用漢字の変遷」(https://sound.jp/mtnest/k/tojo-his.htm)というページが見つかった。そこで1946年に制定された「当用漢字表」の中から、小学校の各学年で学ぶ漢字を選んだものが「学年別漢字配当表」である、という情報を得た。
そこで再度Googleで「当用漢字表」と検索したところ、文化庁ホームページの中の「当用漢字字体表(答申)」(https://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/sisaku/joho/joho/kakuki/syusen/tosin05/index.html)が見つかった。これは昭和23年6月に出されたものだが、この中の「士部~广部」では「奏」は上が短い「天」となっている。ただし、答申の注意事項には「この表の字体は,これを筆写(かい書)の標準とする際には,点画の長短・方向・曲直・つけるかはなすか・とめるかはね又ははらうか等について,必ずしも拘束しないものがある」と書かれていた。
(インタ-ネット最終アクセス:2020年11月26日)
- 事前調査事項
- NDC
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- 教育課程.学習指導.教科別教育 (375 9版)
- 音声.音韻.文字 (821 9版)
- 参考資料
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- 『中学校国語二』(学校図書株式会社)昭和31―35年度使用
- 『中学校国語二』(学校図書株式会社)昭和36・37年度使用
- キーワード
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- 漢字(カンジ)
- 活字-歴史(カツジ-レキシ)
- 教科書(キョウカショ)
- 国語科(コクゴカ)
- 照会先
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- 国立教育政策研究所教育図書館
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 言葉
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000294830