レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2020年10月09日
- 登録日時
- 2020/11/30 19:34
- 更新日時
- 2023/03/03 13:11
- 管理番号
- 関大総図 20B-7S
- 質問
-
『喜阿銘尽』という本を探してほしい。1381年の本らしい。
東京材木問屋協同組合のウェブサイトに連載されていた、
『文苑・随想』というエッセイの中で言及されている。
日本人 教養 講座 「日本刀」…Japanese Sword…
「♪一家に一本 日本刀・一家に一本 大黒柱♪」
其の39(天下の名刀・小烏丸パート2)
https://www.mokuzai-tonya.jp/05bunen/zuisou/2007/04nihontou39.html【最終アクセス2020/11/30】
*著者は「愛三木材・名倉敬世」、2007年バックナンバーの目次によると、日付は「2007/04」。
また、インターネットを検索をしたところ、
レファレンス協同データベースで『喜阿弥本銘尽』という名称を見かけた。
これは『喜阿銘尽』と同じものか?
https://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000206878【最終アクセス2020/11/30】
- 回答
-
以下の通り回答します。
1.「喜阿銘尽」とは何か?
資料1:鈴木彰「源家重代の太刀「鬚切」説について : その多様性と軍記物語再生の様相」(『日本文学』52(7)収録)
*CiNii Articles→J-StageでPDF取得可
https://doi.org/10.20620/nihonbungaku.52.7_54【最終アクセス2020/11/30】
p.65“使用テキスト一覧”に以下の記述あり。
「喜阿本『銘尽』(所蔵者整理書名『日本国中鍛冶文集』〈以下)同〉……都立中央図書館蔵加賀文庫本」
資料2:鈴木彰『平家物語の展開と中世社会』
p.446-452「付 中世刀剣伝書伝本一覧(稿)」の“(1)銘尽・銘集“に以下の記述あり。
「③加賀文庫本『喜阿弥銘尽』写・袋一冊 都立中央図書館蔵加賀文庫(『日本国中鍛冶文集』)
④宮崎氏旧蔵本『喜阿弥銘尽』写・袋一冊 宮崎道三氏旧蔵(現所有者未詳)
*※抄出「刀剣美術」223~233(1975.8-1976.6)」
(注)この資料では“宮崎道三”となっていますが、後述の『史学雑誌』や『刀剣美術』の記述から、
名前は“宮崎道三郎”が正しいと考えられます。
このように同一人物(鈴木彰氏)の著作でも“喜阿本『銘尽』”や“喜阿弥銘尽”と表記が揺れています。
「付 中世刀剣伝書伝本一覧(稿)」を見る限り、他に“喜阿”の字は見当たらないため、
この加賀文庫本と宮崎氏旧蔵本の2冊が、現在確認できる『喜阿銘尽』に当たると判断しました。
なお補足しますと、「付 中世刀剣伝書伝本一覧(稿)」“(1)銘尽・銘集“にある、
⑩『能阿弥銘尽』の所有者宮崎於菟丸氏は宮崎道三郎氏の嗣子という事です(『史学雑誌』41(10)p.107)。
2.加賀文庫本と宮崎氏旧蔵本
◎加賀文庫本『喜阿弥銘尽』
東京都立中央図書館が所蔵されています。
現在の登録資料名は『日本國中鍛冶文集』(特別文庫室請求記号:加5506)です。
調査依頼をし、中身をご確認いただきました。
写本ですが、概ね楷書体で書かれているようです。
複写を希望の場合はご自身で申し込み手続きをお願いします(大学を通しては依頼できません)。
◎宮崎氏旧蔵本『喜阿弥銘尽』
原本の所在不明のため、『刀剣美術』を所蔵している東京芸術大学附属図書館に問合せました。
223号の冒頭(p.48)に以下の記述があります。
「古書蒐集家として聞こえていた法学博士宮崎道三郎先生珍蔵の一冊で」
複写をご希望の場合は「学外相互利用申込書」をご提出いただければ依頼可能です。
*この記事がレファレンス協同データベースで紹介されていた資料になります。
3.東京木材問屋協同組合の「文苑・随想」の記事との関係について
東京都立中央図書館・東京芸術大学附属図書館それぞれの調査担当者に
「文苑・随想」の記事をお伝えしましたが、
双方とも所蔵されている『喜阿弥銘尽』と「文苑・随想」の記事との関係は分からないとのことです。
また、「文苑・随想」にも参考文献は明記されていません。
これについてはご自身で記事を取り寄せ、精読・調査してください。
回答は以上です。
- 回答プロセス
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〇Googleで「喜阿△銘尽」で検索すると、様々な情報がヒットするが、刀剣愛好家による個人的なブログやウェブサイトも多く、玉石混交な印象がある。
〇日本古典籍総合目録データベースで全項目を対象に「喜阿△銘尽」とするも、ヒット0件。
【2023.3.3追記】
2023/3/1に「日本古典籍総合目録データベース」は「国書データベース」に移行しました。
〇CiNii Articlesの全文検索で「喜阿△銘尽」としたところ、鈴木彰の「源家重代の太刀「鬚切」説について : その多様性と軍記物語再生の様相」がヒット。
J-Stageで全文が参照できた。
〇論文著者鈴木彰氏の著作を調査すると、本学に『平家物語の展開と中世社会』の所蔵があり、かつ目次情報より、「第3部 中世社会への展開と再生(中世刀剣伝書との関係・武家家伝との関係)」という、刀剣書について言及している章があることが分かった。ここから加賀文庫本と宮崎氏旧蔵本の存在が確認できた。
〇『加賀文庫目録 増訂版』で請求記号を確認し、東京都立中央図書館に資料の内容を問合せた。
〇レファレンス協同データベースにあった『刀剣美術』掲載の「古伝書釈文ー喜阿弥本銘尽」については、雑誌を所蔵する東京芸術大学附属図書館に底本になった資料の情報等の問合せを行った。
- 事前調査事項
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各種蔵書検索やGoogleなどで検索。
- NDC
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- 金工芸 (756)
- 参考資料
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- 鈴木彰著. 平家物語の展開と中世社会. 汲古書院, 2006. , ISBN 476293545X (当館請求記号 N8*913.434*9712, 当館資料番号 230681760)
- 東京都立中央図書館編著. 加賀文庫目録 補訂版. 八潮書店, 1980. (当館請求記号 R*029.9*T7*1(2), 当館資料番号 201489503)
- 中田薫編. 【彙報】宮崎先生法制史論集. 1930. 史學雜誌 41(10) p. pp.106-107, ISSN 00182478 (当館請求記号 M*205*S1, 当館資料番号 003661245)
- キーワード
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- 日本刀
- 喜阿銘尽
- 喜阿弥
- 照会先
- 寄与者
- 備考
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『名刀幻想辞典』というウェブサイトに
『喜阿弥銘尽』についての詳細な記述がある。申込者も閲覧済み。
https://meitou.info/index.php/%E5%96%9C%E9%98%BF%E5%BC%A5%E9%8A%98%E5%B0%BD【最終アクセス2020/11/30】
ただしこちらは個人が運営する匿名のサイトで、情報源等不明な点も多いため、
レポートや卒業論文の引用元には適さない事をお伝えした。
サイトの管理者も「おことわり」でその旨明記している。
https://meitou.info/index.php/about【最終アクセス2020/11/30】
- 調査種別
- 文献紹介 書誌的事項調査 所蔵調査
- 内容種別
- 質問者区分
- 学部生
- 登録番号
- 1000289993