レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2020/09/26
- 登録日時
- 2020/10/16 00:30
- 更新日時
- 2020/10/16 00:30
- 提供館
- 宮城県図書館 (2110032)
- 管理番号
- MYG-REF-200031
- 質問
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解決
『伊達治家記録』と『片倉代々記』の慶長5年7月12日の記述について,小原の野伏に鉄砲8丁を手渡す時の場面で,『伊達治家記録』には「来ル廿四日ニハ,白石ヘ出馬シ玉フヘシ,其前何トソ小原ヲ抱持スヘシト仰付ラレ,鉄砲八挺下シ賜フ」とあり,『片倉代々記』には「来る廿四日には白石へ出馬し給ふへき間,其前何とそ小原を抱持すへきの旨仰付られ,鉄砲八挺下し給ふ」とある。共通して使われている「何トソ」「何とそ」の箇所は,伊達政宗公と身分の低い野伏の会話のようだが,政宗公が「何卒」と野伏にお願いしているようである。当時「何とそ」とは何を意味していたのか知りたい。
- 回答
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近世初期における「何とそ」の用法・用例については下記の資料に記載がありました。
※【 】内は当館請求記号。各資料の(1),(2)の後の記述は,用例,出典名や用例の現代語訳。
資料1 中村幸彦, 岡見正雄編『角川古語大辞典 第4巻た-は』角川書店,1994【813.6/コ3/4タR】
p.820 「なにとぞ」の項
なにとぞ【何とぞ・何卒】[副] 「と」「ぞ」は助詞。
(1)手段を尽くす意志を表す。なんとかして。(中略)「なにとそおとづれたいものじや」〔敵討義女英〕
(2)命令表現・願望表現に用いて,相手への強い願いの意を表す。ぜひとも。どうぞ。どうか。(中略)「奢りとは聞とも花の養ひに何とそ酒を池の藤波」〔腹藁〕
資料2 小学館国語辞典編集部編集『日本国語大辞典 第10巻な-はわん』小学館,2001【813.1/00Z/10R】
pp.213-214 「なに-とぞ」の項
なに-とぞ【何卒】[副] (代名詞「なに(何)に助詞「と」「ぞ」が付いてできたもの)
(1)手段を尽くそうという意味を表す。どうぞして。なんとかして。なにとぞして。 信長公記(1598)「其段も何とぞかまひこれあらば,理(ことわり)に及ぶべし」(後略)
(2)相手への強い懇願の気持を表わす。どうか(…して下さい)。どうか(…でありますように)。 虎明本狂言・三本柱(室町末-近世初)「何とぞしあんをさしめ」「何とせうぞ」(後略)
資料3 佐藤孝之, 天野清文編『古文書用語辞典』KADOKAWA,2012【210.5/122/R】
p.592 「なにとぞ」の項
なにとぞ【何卒】
どうか。何とかして。どうかして~してください。是非。どうぞ。 「何卒以御慈悲右願通御聞済被成下候ハ丶,難有仕合奉存候」どうか情けをもって願いのとおりご承諾くだされば,ありがたく存じます。(後略)」
参考までに,下記資料も確認しましたが,記載は見あたりませんでした。
資料4 村上直編『近世史用語事典』新人物往来社, 1993【210.03/キ5/R】
資料5 潁原退蔵,尾形仂編『江戸時代語辞典』角川学芸出版, 2008【813.6/08Y/R】
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
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- 語源.意味[語義] (812 9版)
- 参考資料
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- 藤井/讓治?編. 織豊期主要人物居所集成. 思文閣出版, 2011.6【210.48/2011.6】:
- 白石郷土研究会/編 古田 良一/校閲. 宮城県刈田郡歴史年表 上巻. 白石郷土研究会, 1952【K211/シ1/1】:
- 平重道/編. 伊達治家記録 2. 宝文堂出版販売, 1973.2【K205/タ3/オ2】:
- 刈田郡教育会/編. 刈田郡誌 全. 名著出版, 1972.7【K211/カ2-2】:
- 池/享∥編 矢田/俊文∥編. 上杉氏年表. 高志書院, 2003.9【288.3/2003.9】:
- 花ケ前盛明/編. 上杉景勝のすべて. 新人物往来社, 1995.2【289.1/ウカ1995.2】:
- 中田/正光?著 三池/純正?著. 北の関ケ原合戦. 洋泉社, 2011.2【210.48/2011.2】:
- キーワード
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- その他
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000288320