レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2018/02/08
- 登録日時
- 2020/04/25 00:30
- 更新日時
- 2020/05/02 13:34
- 管理番号
- 所沢柳瀬-2020-001
- 質問
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解決
江戸時代の庶民の名前で、多く使われていたものの傾向が知りたい。
- 回答
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江戸時代の庶民の名前は、男性では律令制官職名由来の名前が多く、女性の名前は漢字名は非常に少なく、訓の2音で表しました。(参考:『日本人の名前の歴史』)
下記の資料に記載があります。
〇『日本人の名前の歴史』 奥富敬之/著 吉川弘文館 2018年
〇『苗字と名前を知る事典』 奥富敬之/著 東京堂出版 2007年
〇『苗字・名前・家紋の基礎知識』 渡辺三男/著 新人物往来社 1994年
〇『日本人なら知っておきたい名前の由来、名付けのいわれ』 大野敏明/著 実業之日本社 2013年
〇『苗字と名前の歴史』 坂田聡/著 吉川弘文館 2006年
〇『ビジュアル・ワイド江戸時代館』 小学館 2002年
〇『名前の日本史』 紀田順一郎/著 文芸春秋 2002年
〇『日本人の姓・苗字・名前』 大藤修/著 吉川弘文館 2012年
- 回答プロセス
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1 所蔵資料の内容確認
〇『日本人の名前の歴史』 奥富敬之/著 吉川弘文館 2018年
p234-236 「一般庶民の名前」の項目に、「(前略)江戸時代に入ると、律令制官職名由来の名前が圧倒的に多くなるが、なかでも『―左衛門』型、『―右衛門』型、『―兵衛』型の三種が、群を抜いて多くなる。宝永五年(1708)三月の相模国西富岡村(伊勢原市西富岡)における水呑を含む全農家の戸主の名前は、次のように分類することができる(伊勢原市 『堀江家文書』)。(中略) それぞれ左衛門型、右衛門型および兵衛型として三型を合すると、実に全体の88.3パーセントになる。(中略) 同じように
女性の名前もやはり単調だった。右に用いた「堀江家文書」から女性名を拾い出すと、さな ちやう とよ えつ (中略) 漢字名は非常に少なく、ほぼすべてが二音節であるという点に、特徴が感じられる。」と記載あり。
〇『苗字と名前を知る事典』 奥富敬之/著 東京堂出版 2007年
p219-221 「一般庶民の実名」の項目に、『日本人の名前の歴史』と同じ内容の記載あり。
〇『苗字・名前・家紋の基礎知識』 渡辺三男/著 新人物往来社 1994年
p334-335 「明治初期まで二音節型が大勢」の項目に、女性の名前について、「いまの京都府亀岡市に属する天保八年(1837)から慶応元年(1865)に至る幕末28年間の宗門改人別帳(しゅうもんあらためにんべつちょう)を材料として人名調査を行ったところ、(中略) 〇〇型(「まつ」のような二音節の名)93%、こ〇〇型(「こまつ」のような、「こ」がつく三音節の名)6%、〇〇〇型(「まつの」のような「こ〇〇型」以外の三音節の名)1%という結果を得たと報告している。(以下省略)」との記載あり。
〇『日本人なら知っておきたい名前の由来、名付けのいわれ』 大野敏明/著 実業之日本社 2013年
p159 「古来からの日本人女性の名付け方」の項に、「江戸時代は公家は『子』、大名、上級武士の子女は『姫』を付け、その他は訓の2音で表しました。この点は中級武士から庶民に至るまで同じです。ただ、『子』や『姫』が付いてはいますが、それをとれば皆同じでした。例えば、公家なら『孝子』、大名なら『孝姫』、庶民なら『孝』で、通称『おたかさん』です」と記載あり。
〇『苗字と名前の歴史』 坂田聡/著 吉川弘文館 2006年
p9 「中世・近世の日本における下の名前」の項目に、「それは決して個人の人格と結びつくものなどではなく、家や村といった共同体のメンバーシップを表示する、分類のための標識として機能していた。(中略) いずれにしろ、当時の人名は個的なものを特定する役割よりも、類的なものを表示する役割の方に、はるかにウェイトが置かれていたとみなすことができょう。」と記載あり。
p112-114 「『名つけ帳』にみる成人男性名」の項目に、p113の表から読み取れるものとして、「第一に、藤、源、平、清などの漢字が名前につく姓型字(せいがたあざな)の割合は、全成人のうち8%弱で、 (中略)第二に、朝廷の官職の名にあやかった官途名型字(かんとめいがたあざな)は、人名全体の約4割弱にあたる。(中略)第三に、官途名型字は衛門型と兵衛型ですべてである。(中略) 第五に、その他の字は合計すると最も数が多く、全男性名の約半数に及ぶが、その中では〇郎×郎系(三郎五郎など)、孫系(孫太郎など)、彦系(彦次郎など)、甚系(甚三郎など)が目につく。(以後省略)」と記載あり。
p113 表11 「16世紀前半~18世紀前半の紀伊国東村成人男性名の諸類型」に1501年~1750年まで50年毎の人名類型の一覧表の掲載あり。
〇『ビジュアル・ワイド江戸時代館』 小学館 2002年
p342 「男子の名前」の項目に「『〇右衛門(えもん)』『〇左衛門(ざえもん)』『〇兵衛(びょうえ)』といった名前が多い。朝廷の官位(官職と位階)名に由来しているが、官位を授かっていたわけではなく官位に準ずる名前で箔をつける意味があった。地位によって名前は変わったし、また、使用人なら使用人らしい名前のつけ方などがあり、自分勝手な命名は許されていなかった。」と記載あり。「武士の名前」「百姓の名前」「町人の名前」についての詳細な記載あり。
〇『名前の日本史』 紀田順一郎/著 文芸春秋 2002年
p52-53 「百官名を名乗る農民の心理」の項目に天正19年(1591)1月、検地を行った際の検地帳や幕末の嘉永3年(1850)鎌倉郡品濃村(現横浜市戸塚区品濃町)で、桐の木を植える合議書に残されていた農民の男性名について記載あり。
p118-120 「ひらがな二字に固まる女性名」の項目に延宝8年(1680)、足柄上郡千津嶋村(現神奈川県南足柄市千津嶋)の宗門改帳等に庶民の女性名について記載あり。
〇『日本人の姓・苗字・名前』 大藤修/著 吉川弘文館 2012年
p73 「誕生時の名づけ」の項目に「16世紀末以降の近世には経済的な富の象徴である『蔵』や、幸運を願う『吉』を用いた名前が登場し、『太郎』『八郎丸』『次郎法師』のような、出生順を示す排行(はいこう)名の比率も中世に比べ近世には高まっている。」と記載あり。
p75 「命名の呪術」の項目に「近世の庶民の名前は、男子名が漢字表記であるのに対し、女子名は二音節の平仮名表記が原則である」と記載あり。
p92 「当主名の襲名」の項目に「中世後期に百姓層の家が形成されるに伴い、当主=家長の名前が『家名』として代々継承されるようになった」と記載あり。
- 事前調査事項
- NDC
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- 系譜.家史.皇室 (288 9版)
- 日本史 (210 9版)
- 参考資料
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- 日本人の名前の歴史 奥富敬之/著 吉川弘文館 2018.8 288.1 978-4-642-06765-2
- 苗字と名前を知る事典 奥富敬之/著 東京堂出版 2007.1 288.1 978-4-490-10703-6
- 苗字・名前・家紋の基礎知識 渡辺三男/著 新人物往来社 1994.3 288.1 4-404-02092-9
- 日本人なら知っておきたい名前の由来、名付けのいわれ 大野敏明/著 実業之日本社 2013.2 288.12 978-4-408-10976-3
- 苗字と名前の歴史 坂田聡/著 吉川弘文館 2006.4 288.1 4-642-05611-4
- ビジュアル・ワイド江戸時代館 小学館 2002.12 210.5 4-09-623021-9
- 名前の日本史 紀田順一郎/著 文芸春秋 2002.9 288.12 4-16-660267-5
- 日本人の姓・苗字・名前 大藤修/著 吉川弘文館 2012.10 288.1 978-4-642-05753-0
- キーワード
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- 名前
- 名付け
- 江戸時代
- 庶民
- 宗門改人別帳
- 排行名
- 人別帳
- 宗門改帳
- 近世
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- その他
- 質問者区分
- 学生
- 登録番号
- 1000281025