レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2018/05/20
- 登録日時
- 2020/01/08 00:30
- 更新日時
- 2020/01/08 00:30
- 管理番号
- 牛久-1595
- 質問
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解決
北原白秋著『思ひ出』に出てくる「生肝取」とは何か。詩の描写から子どもの生胆を狙っているのはわかるが、「生胆取」が具体的にどういうものか知りたい。また当時の「生胆取」及び「生胆」に関する情報が多く欲しい。
- 回答
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「生肝取」の言葉の意味として次の資料を紹介。
・『故事俗信ことわざ大辞典』(北村孝一/小学館/2012.2)…p74
北原白秋に関する資料で「生肝取」に関して記載のある次の資料を紹介。
・『北原白秋』(三木卓/筑摩書房/2005.3)…p8、p11
・『北原白秋の世界 その世紀末的詩境の考察 』(河村政敏著/至文堂/1997.4)…p190-191
・『トンカ・ジョンの旅立ち 北原白秋の少年時代』(森崎和江著/日本放送出版協会/1988.11)…p56-58
明治時代の事件に関する資料として次を紹介。
・『ニュースで追う明治日本発掘 2』(鈴木孝一編/河出書房新社/1994.8)…p152-153
・『ニュースで追う明治日本発掘 5』(鈴木孝一編/河出書房新社/1995.2)…p82-83
・『新聞資料明治話題事典』(小野秀雄編/東京堂出版/1995.9) …p113
・『20世紀にっぽん殺人事典』(福田洋著/社会思想社/2001.8)…p33-35
- 回答プロセス
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1. 北原白秋の略歴と詩集『思ひ出』について調べようと思い、NDC「910」の参考図書の棚をブラウジングし、次の資料にあたる。
(1)『日本近代文学大事典 第1巻(あ~け』(日本近代文学館/講談社/1977.1)…p487-489 に明治18年1月25日(1885)~昭和17年11月2日(1942)、詩人、歌人。〔思ひ出〕詩集。「おもひで」「OMOIDE」とも表記。明治44年㋅、東雲堂書店刊の記述あり。
2. 『思ひ出』の中の「生肝取」が出てくる箇所を特定するために、フリーワード「北原白秋」+「おもいで」で自館所蔵検索し次の資料にあたる。
(2)『白秋全集 2』(北原白秋/岩波書店/1985.4)…以下の序詩・詩の中に「生胆取」が出てくる。
・序詩「わが生ひたち」(p10,21,27,34)
・詩「水面」(p159~160)
・詩「たそがれどき」(p184~185)
・詩「夜」(p200~202)※p201に「生胆取」の挿絵あり。
3. 「生胆取」の言葉について調べる。
A) 各種事典から調べる。
記載のあった資料
(3)『故事俗信ことわざ大辞典』(北村孝一/小学館/2012.2)…p74に「生き胆を取る」とは「生きている動物からその肝をえぐりとる。人をひどく苦しめる。人をひどく驚かす。どぎもをぬく。」の記述あり。
記載の無かった資料
・『広辞苑』(岩波書店/2018.1)
・『日本国語大辞典 第1巻』(小学館/2000.12)
・『明治のことば辞典』(東京堂出版/1986.12)
・『明治大正 新語俗語辞典』(東京堂出版/1984)
・『ちょっと古風な日本語辞典』(東京堂出版/1997.9)
・『江戸語辞典』(東京堂出版/1991.9 )
・『新修隠語大辞典』(皓星社/2017.7)
・『日本俗語大辞典』(東京堂出版/2003.11)
・『日本民俗大辞典 上』(吉川弘文館/1999.10)
・『日本怪異妖怪大事典』(東京堂出版/2013.7)
B) 「北原白秋」に関する資料から調べる。
個人件名「北原白秋」で自館所蔵検索し、15件ヒットする。書誌情報を確認して次の資料にあたる。
(4)『北原白秋』(三木卓/筑摩書房/2005.3)
…p8に生胆は「民話や歌舞伎の世界では生命力の象徴である」
…p11に、コレラの避病院が患者の生胆を取り井戸に投入して病気の蔓延をはかっていると農民が誤解し、医師が殺害されるという事件があった。(明治十年・千葉県安房)
…p11に、「生胆取」は言うことを聞かないこどもへのおどし文句に使われ、白秋の幼少期の「外界からの恐怖を象徴するイメージである」と記述あり。
(5)『北原白秋の世界 その世紀末的詩境の考察 』(河村政敏著/至文堂/1997.4)
…p190-191に、「生胆取」が幼年期の白秋の何よりの恐怖であり、白秋の「幼年の意識の底にはなまなましい現実として存在した」との記載がある。
(6)『トンカ・ジョンの旅立ち 北原白秋の少年時代』(森崎和江著/日本放送出版協会/1988.11)
…p56に、白秋の故郷では村の年寄りが「わるさすると生胆とりの来っバイ!」と子どもをおどしていたとあり。
…p57に、「生胆取」は病気が良くなると信じて生胆を飲むと噂されていたとあり。
…p58に、『福岡日日新聞』に時折「生胆取」の記事が出ていて、「幼児を麦畑で殺して腹を裂」いたり、土葬された遺体を掘り起こして肝を取り、清国人に売った事件が掲載されていた。
→記載のなかった資料
・『北原白秋 言葉の魔術師 』(今野真二著岩波書店/2017.2)
・『北原白秋 その青春と風土 』(松永伍一/日本放送出版協会/1981.3)
C) 「明治時代の事件」に関する資料から調べる。
(7)『ニュースで追う明治日本発掘 2』(鈴木孝一編/河出書房新社/1994.8)
…p152-153に、千葉県安房にて「病人の生胆とると医者殺害」の記事あり(明治10年12月23日 大坂日報)
(8)『ニュースで追う明治日本発掘 5』(鈴木孝一編/河出書房新社/1995.2)
…p82-83に、大分県速見郡八坂村にて「眼病の母のため妻の生胆を取る」の記事あり(明治25年10月29日 朝野)
(9)『新聞資料明治話題事典』(小野秀雄編/東京堂出版/1995.9)
…p113に、千葉県安房にて「生胆を抜くとの誤解で医師を殺す」の記事あり(明治10年12月23日 大坂日報)
(10)『20世紀にっぽん殺人事典』(福田洋著/社会思想社/2001.8)
…p33-35に、明治38年にJR中央本線辰野駅北側の辰野という旧宿場町で「生胆取り、四人殺し」の事件が起こる。
→記載のなかった資料。
・『明治ニュース事典 総索引』(毎日コミュニケーションズ/1986)
・『「号外」明治史 Vol.1』(羽島知之編集/大空社/1997.2 )
・『「号外」明治史 Vol.2』(羽島知之編集/大空社/1997.2 )
・『「号外」明治史 Vol.3』(羽島知之編集/大空社/1997.2 )
・『明治百話』(篠田鉱造/角川書店/969)
・『雑学明治珍聞録』(西沢爽著/文芸春秋/1987.11)
・『事件で見る明治100話』(中嶋繁雄著/立風書房/1992.12)
4. 後日追加調査をする。
「生き肝をとる」のキーワードを入れてGoogle検索。
Googleブックス(https://books.google.co.jp/)『健康法と癒しの社会史』の「2章 もっとも近くて遠い秘薬-人肉-」のp67に記述あり。電子書籍で一部閲覧可能。※最終アクセス日2019年11月4日
→同タイトルで自館資料検索するが、当館には所蔵なし。
→茨城県図書館情報ネットワークにて検索した所、県内に所蔵があると判明。
- 事前調査事項
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北原白秋著『思ひ出』を読んでいたら、詩の中に「生肝取」を怖がっている描写が多く出てきた。
- NDC
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- 日本史 (210 10版)
- 詩歌 (911 10版)
- 参考資料
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- B10632838 故事俗信ことわざ大辞典 北村孝一/監修 小学館 2012.2 388.81 978-4-09-501102-8
- B10560956 白秋全集 2 北原白秋/著 岩波書店 1985.4 918.68 9784000909426
- B10062610 トンカ・ジョンの旅立ち 森崎和江/著 日本放送出版協会 1988.11 913.6 9784140051382
- B10507512 北原白秋 三木卓/著 筑摩書房 2005.3 911.52 9784480885210
- B10034918 北原白秋の世界 河村政敏/著 至文堂 1997.4 911.52 9784784301843
- B10273605 20世紀にっぽん殺人事典 福田洋/著 社会思想社 2001.8 368.61 9784390502122
- B10026138 ニュースで追う明治日本発掘 2 鈴木孝一/編 河出書房新社 1994.8 210.6 9784309723228
- B10026140 ニュースで追う明治日本発掘 5 鈴木孝一/編 河出書房新社 1995.2 210.6 9784309723259
- B10028147 新聞資料明治話題事典 小野秀雄/編 東京堂出版 1995.9 210.6 9784490103984
- Googleブックス https://books.google.co.jp/ 2019.11.24 (健康法と癒しの社会史)
- キーワード
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- 北原白秋
- 生肝取
- 思ひ出
- いきぎも
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 言葉
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000272333