このことについて、地域資料から史実を調べる場合、医療史、教育史の両方の観点で資料を探す必要があります。また網羅的に調査する場合、各地の医師会史等のほか、医学校のあった栃木市(当時の栃木町)の地域資料にも関連の情報が掲載されます。
なお今回の調査の過程で、一部の資料の記述に齟齬を確認しました。近年発行の資料類も、出典をいずれの資料とするかで記述内容が変わってくることから、複数の資料を検証する必要があると思われます。今回、項目の掲載を確認した資料を広くお知らせします。
1 県史、医師会史等(※一部、質問者の事前調査資料との重複があり。)
・『栃木県大百科事典』(栃木県大百科事典刊行会/編 下野新聞社 1980)
p.510-511「栃木県医学校」(以下引用)
「1876年(明治9年)に県立栃木病院の中に附属医学校を設置して医師の養成を始めた。1878年4月にこの附属医学所を栃木医学校とし、栃木病院を附属病院にして、県立の医学校が成立した。翌年には栃木県医学校と改称した。」
・『栃木県史 通史編6 近現代1』(栃木県史編さん委員会/編 栃木県 1982)
「第三章 近代教育制度の発足 五 栃木県医学校と足利織物講習所」に「栃木医学校」の項があります。(p.314-316)
『栃木県大百科事典』の記載内容について、一次資料の情報が得られます。なお、廃校に時期について、「明治十五年、民権派議員の意向により廃校となった」とあります。
<今回記述に齟齬を確認した資料>
・『栃木縣史 第6巻(教育編)』(田代善吉/著 臨川書店 1972)
※下野史談会昭和8~17年刊の複製資料です。
p.89-94「医学校」の項があり、「医学校廃止上申書」が収録されています。
栃木県医学校に関する記述がありますが、他の資料と設立年が異なります。
後述の『栃木市史 通史編』(栃木市史編さん委員会/編 栃木市 1988)p.1081に、田代善吉の『栃木県史』における「栃木県医学校」の記述は、足利藩に明治元年設定された藩校、求道館中にあった医学教授のことを混同したものと思われるという指摘があります。
2 栃木市の地域資料
・『栃木市史 通史編』(栃木市史編さん委員会/編 栃木市 1988)
p.1081-1084「栃木県医学校」
・『栃木市の歴史』(日向野徳久/著 栃木市 1966)
p.227-228「第四部 近代・現代 第一章 新政の発足 第三節 学校教育の発足」に「栃木県医学校」の項があり。
・『栃木郷土史』(栃木郷土史編纂委員会/編 歴史図書社 1977)
p.283「第四篇 最近世 第三章 県庁設置より移転まで 第三節 学校教育の新発足」に「(三)栃木県医学校」の項があり。
・『目で見る栃木市史』(栃木市史編さん委員会/編 栃木市 1978)
p.371-372「栃木県医学校」
・『目で見る栃木・小山・下都賀の100年』(小森谷昭平/〔ほか〕編集 郷土出版社 2000)
p.33-34「三、近代教育の始まり-学都栃木に師範学校と医学校」の項があります。
3 医師会史等
・『宇都宮市医師会史 Ⅰ』(宇都宮市医師会史編纂委員会/編 宇都宮市医師会 1986)
p.35-37「第二章 病院の創設と発展 第一節 明治期 県立病院」の項に栃木病院の名が散見されます。
・『宇都宮市医師会史 Ⅱ』(宇都宮市医師会史編纂委員会/編 宇都宮市医師会 1986)
p.384-385年表内に、「明治九年九月 栃木町の県立病院内に「附属医学所」設置。(明十五年廃止)」、「明治十一年四月 栃木病院付属医学所を栃木医学校と改称(修業年三年、定員五十人)」の記述があります。
・『宇都宮市医師会史 Ⅱ』(宇都宮市医師会史編纂委員会/編 宇都宮市医師会 1986)
p.384-385年表内に、「明治九年九月 栃木町の県立病院内に「附属医学所」設置。(明十五年廃止)」、「明治十一年四月 栃木病院付属医学所を栃木医学校と改称(修業年三年、定員五十人)」の記述があります。
・『足利市医師会史 通史編』(足利市医師会会史編纂委員会/編 足利市医師会 1991)
p.153-154「第七節 栃木医学校の誕生と足利地方」の項あり。
・『塩谷郡市医師会史 新生医師会半世紀の歩み』(塩谷郡市医師会史編纂委員会/編 塩谷郡市医師会 2003)
p.13「2.幕末から明治、敗戦までの医療事情」の項に、栃木医学校に関する記述がわずかにあります。
・『図録日本医事文化史料集成 第五巻』(日本医史学会/編 三一書房 1979)
p.234「栃木県の医史」の項があり、栃木県の医育施設に関する記述がわずかにあります。
以下の資料は、お調べしましたが記述を確認できませんでした。
・『足利市医師会史 史料編』(足利市医師会会史編纂委員会/編 足利市医師会 1992)
・『幕末・明治・大正期の医療 塩谷の地から「醫」をさぐる』(塩谷郡市医師会史編纂委員会/編 塩谷郡市医師会 2016)
・『栃木県医師会創立50周年記念誌 温故知新』(栃木県医師会/編 栃木県医師会 2000)
・『県立栃木病院長松岡勇記の生涯 地方医療の先駆者』(内山謙治/編、発行 2009)