レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2015年03月31日
- 登録日時
- 2016/01/21 16:57
- 更新日時
- 2016/03/11 14:49
- 管理番号
- 埼熊-2015-091
- 質問
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未解決
稲荷信仰の本で「豊耕龍雷信仰」という言葉が出てきたが、これについて解説してある本があるか知りたい。
- 回答
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「豊耕龍雷信仰」という言葉、及びその解説のある資料は見つからなかった。ただし、雷神に関する解説の中に、稲作と雷神や竜神を関連付ける記述があり、これを紹介した。
『神道辞典』(堀書店 1968)
「雷神」の項に「雷神の持つ古い農の神・水の神的性格は並存してきた。雷という字は雨が田にふりそそぐ意があり、稲作と深い関係にあるが、そのような文字の理屈をしらない農民の間でも稲妻・稲びかりの多い年は豊作だとか、稲田に落雷すると再び天井しないように直ちにその区域に青竹を立て、注連を張っておくと豊饒をもたらす(関東平野)などと信じられてきた。雷光のことを稲妻(稲の妻)・稲つるび・稲びかりと呼ばれている事実よりしても、稲作と深い関係にあることが察せられる。雷神(天神)が蛇形(稲びかり・稲妻)をもって下界に天降り、稲穂をはらませると信じていたところは多い。」とあり。
『民間信仰辞典』(桜井徳太郎編 東京堂出版 1980)
「雷神」の項に「雷はイナズマ・イナビカリといわれ、稲の豊作をもたらす神とも見られたが、田植えは雷神とオナリの婚姻であり、雷のおちた田に青竹を立てシメを張る風は東日本の各地に見られる。」「雷神は稲荷信仰の基底にあるともいわれ、赤色や鍛冶神とも深い関連を有している。」とあり。
『古代信仰研究 稲荷信仰論』(近藤喜博著 角川書店 1963)
p443「しかし雷龍は分けて考えれば雷と龍であるが、信仰としては一つのものと観念されてくる可能性のあるもので、(中略)古代農耕に関係をもつたイナリの雷神は(中略)この雷公が、狐信仰と或る場で結合する可能性は、別途に述べるとして、ここには略さねばならぬ。」とあり。
『伏見稲荷大社 日本の古社』(三好和義ほか著 淡交社 2004)
農耕や稲作りと関係が深かったことは、p82-97「伏見稲荷大社の歴史と信仰」に書かれている。
『日本神話 日本文学研究資料叢書』(日本文学研究資料刊行会編 有精堂出版 1970)
p187-189「七、雷神と蛇神の信仰」に雷神が龍蛇の神として信仰され、雷雨が稲の生育に極めて適しており豊耕につながるという記述はあり。
- 回答プロセス
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1 神道の事典の調査
『神道大辞典 3 ト―ワ』(臨川書店 1974)
「豊耕」「龍雷」の項なし。
『神道事典』(国学院大学日本文化研究所編 弘文堂 1994)
「竜神信仰」の項に「この水神としての竜神は、雨や稲光をもたらす雷神の信仰とも結びつき」とあり。
『日本神祇由来事典』(川口謙二編著 柏書房 1993)
「雷神」の項に「隣国の中国から渡来した雷の信仰は、竜が昇天して雷となり、その雷音の轟きから、それは太鼓を持った鬼神であるという考え方であったが、それは、我が国の雷神についての概念形成に大いに影響を与えた。蛇が長じて竜となり、竜神となる。」とあり。
「竜神」の項はあるが、関連する記述なし。
『神道辞典』(堀書店 1968)(前掲資料)
2 信仰の事典の調査
『稲荷信仰事典 神仏信仰事典シリーズ 3』(山折哲雄編 戎光祥出版 1999)
p208-215「稲荷信仰の原型について」
「剣と雷」「雷神と鳥」「山神と龍頭太」といった項はあるが、「豊耕龍雷信仰」という記述なし。
『民間信仰辞典』(桜井徳太郎編 東京堂出版 1980)(前掲資料)
索引に「豊耕」「龍雷」なし。
3 関連図書の調査
『稲荷大社由緒記集成 〔7〕 総目次・索引』(伏見稲荷大社編纂 伏見稲荷大社社務所 1988)
索引に「豊耕」「龍雷」なし。
p92「雷石(雷岩⇔劔石) …祠88、120 補129 212 240」
「雷電神…信185」
祠→祠官著作篇 補→補遺篇 信→信仰著作篇
『古代信仰研究 稲荷信仰論』(近藤喜博著 角川書店 1963)(前掲資料)
索引に「豊耕」「龍雷」なし。
『伏見稲荷大社 日本の古社』(三好和義ほか著 淡交社 2004)(前掲資料)
「豊耕龍雷信仰」の記述はなし。
『松前健著作集 3 神社とその伝承』(松前健著 おうふう 1997)
p195-200「第十章 加茂と松尾の雷神たち」
p201-207「第十一章 松尾の祭神と雷神信仰」
「豊耕龍雷信仰」の単語なし。
『日本神話 日本文学研究資料叢書』(日本文学研究資料刊行会編 有精堂出版 1970)(前掲資料)
「豊耕龍雷信仰」の記述はなし。
4 手がかりとなる記述のなかった資料
『稲荷神社資料 5』(稲荷神社 1935)
『稲荷神社資料 8』(稲荷神社 1939)
『稲荷神社資料 9』(稲荷神社 1941)
『神道大系 神社編 9 稲荷』(神道大系編纂会 1991)
『稲荷をたずねて 稲荷信仰の由来と御神徳』(南日義妙編著 文進堂 1977)
『稲荷信仰 民衆宗教史叢書 3』(直江広治編 雄山閣出版 1983)
『雷神・龍神思想と信仰 日・中言語文化の比較研究』(李均洋 明石書店 2001)
『古代は生きている 石灯籠と稲荷の謎』(榎本出雲共著 彩流社 1994)
- 事前調査事項
- NDC
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- 民間信仰.迷信[俗信] (387 9版)
- 参考資料
- キーワード
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- 民間信仰-日本
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 言葉 地名
- 質問者区分
- 個人
- 登録番号
- 1000187314