レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2015年09月07日
- 登録日時
- 2015/11/12 17:30
- 更新日時
- 2015/11/26 14:37
- 管理番号
- 岩手-248
- 質問
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解決
奥州藤原氏について、①なぜ当主を「ミイラ」にしたのか。増えたらどうするつもりだったのか。②秀衡は、なぜ自分の妻を異腹の長男国衡に嫁がせたのか。を知りたい。
- 回答
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①について
雑誌『朝日評論 5巻8号』 朝日新聞社∥出版 1950年の「中尊寺のミイラ座談会」(p42~59)という記事に、下記のような記述がある。
《遺骸をミイラにするということは、未開人の風習またはそれのうけつがれたものであって、それには、死んだ後にも何等かの状態で、その身体を永く存続させようとし、それによって何等かの意味での人の永生を求める考が潜んでいるのであろう》
中尊寺金色堂に収められているミイラに関しては、(A)自然発生したもの、(B)人工的に加工したもの、という二つの説があり、研究者の間でも意見が割れている。
『中尊寺御遺体学術調査最終報告書』
⇒(A)p195~203「中尊寺藤原氏遺体のミイラの成生について」森八郎・町田百合∥著
⇒(A)p317~331「藤原四代の遺体」鈴木尚∥著
⇒(B)p378~388「中尊寺遺体の文献的考証」森嘉兵衛∥著
⇒(A)p449~483「人類学からみた奥州藤原氏とエミシ」(内 p458~466「遺体のミイラ化の問題」)埴原和郎∥著
『平泉町史』
⇒(A)p355~372「遺体に関する諸問題」長谷部言人∥著
『奥州藤原四代甦る秘宝』
⇒p55~58「自然か人工か」
増えた場合についての記述は確認出来なかったが、遺体が収められている金色堂について、つぎのような説がある。
『奥州藤原四代甦る秘宝』
⇒p28
《遺体は金色堂内に収められた。生前の宿願でもあろうから、清衡の場合はある程度肯定もされる。しかし、清衡にならって二代基衡も、三代秀衡も、そして四代泰衡(首だけ)も、それぞれ遺体を金色堂内に収めたとなると問題は複雑である。(略)当初から藤原一門の墓所・葬堂として建立されたのか、それとも当時、京に流行した阿弥陀堂として最初は建て、のちになって墓所・葬堂とするようになったのか(略)現在では、石田茂作文博(奈良国立博物館長)の「阿弥陀兼ねて葬堂の意味をもたせて建立」したとの折衷論に従うものが多い。》
『金色堂はなぜ建てられたか』
⇒p11~12
《(四代泰衡と伝わっている)首の主が(初代清衡の父)経清なら、金色堂からの謎がたちまち消滅する。(略)死後の自分が須弥壇の下に安置されるいぜんに、首級という形にしろ葬るべき実父がいたので、清衡は、最初から金色堂を葬堂として建立したのである。(略)葬堂の形をとった金色堂を建立するいぜんに、堂のなかに葬るべきひとが実在していた(略)清衡は、最初から死後の自分、あるいは子孫のことを予想して金色堂を建立したのではなかったにちがいない。》
②について
『吾妻鏡』『玉葉』を典拠として書かれた下記資料に、異母兄弟の国衡と泰衡の関係を良くしようとした配慮があったという記述がある。
『藤原秀衡』
⇒p205~206
《『玉葉』は、秀衡は、自分の妻(基成の娘であろう)と嫡男国衡とを娶せたという。これは、国衡と泰衡との関係をよくしようとの配慮からでたのであろうと考えられるが、いささか不自然な話である。不自然とはいえ、秀衡の苦肉の策ともいえるから、いちがいに否定はできまい。》
『奥州藤原氏』
⇒p207~212「今わの際の秀衡遺言を解く」
『平泉 北方王国の夢』
⇒p309
《長男国衡に泰衡の母である自らの正室(基成の娘)を娶せて「兄弟和合」の計らいをなすとともに(略)》
- 回答プロセス
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・当館郷土資料書架の奥州平泉関連資料を調査。
- 事前調査事項
- NDC
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- 東北地方 (212 9版)
- 参考資料
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- 『中尊寺御遺体学術調査最終報告書』中尊寺∥編・出版 1994年 (http://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I036178758-00)
- 『平泉町史 第3巻』平泉町史編纂委員会∥編集 平泉町∥出版 1988年 (http://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I014387894-00)
- 『奥州藤原四代甦る秘宝』遠山 崇∥著 岩手日報社∥出版 1993年 , ISBN 4872011465 (http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002295718-00)
- 『金色堂はなぜ建てられたか』高井 ふみや∥著 勉誠出版∥出版 2004年 , ISBN 4585071075 (http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000007429007-00)
- 『藤原秀衡』高橋 崇∥著 人物往来社∥出版 1966年 (http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001080381-00)
- 『奥州藤原氏』高橋 崇∥著 中央公論新社∥出版 2002年 , ISBN 412101622X (http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000003067895-00)
- 『平泉 北方王国の夢』斉藤 利男∥著 講談社∥出版 2014年 , ISBN 9784062585910 (http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I025941657-00)
- キーワード
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- 奥州藤原氏
- 藤原四代
- 金色堂
- ミイラ
- 葬堂
- 阿弥陀堂
- 国衡
- 泰衡
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000183668