レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2010年01月21日
- 登録日時
- 2013/06/16 14:35
- 更新日時
- 2013/12/11 10:17
- 管理番号
- T府中-20100121
- 質問
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解決
徳富蘆花からトルストイに宛てた手紙の内容はいろいろな書物に出ていたが、トルストイから徳富蘆花に宛てた手紙は載っていなかった。その内容を見てみたい。
- 回答
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①『トルストイの生涯』のp. 278.に、1906年4月25日、トルストイが徳富健次郎(=徳富蘆花)に宛てた手紙の日本語訳が掲載されていたので提供した。
- 回答プロセス
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②『徳富蘆花とトルストイ』 p. 127に以下の記述があり、この手紙の内容を見たいとのことだった。
「・・・蘆花宛のトルストイの英文の手紙は全文が日本語へ翻訳され、何度も取りあげられているので、ここでは論じることはしない。・・・」
当館や国会、都立の蔵書やインターネット検索で調べたが、実際に蘆花宛の手紙が掲載されているかまでは分からなかったので、当館の蔵書でトルストイについて書かれているものを検索して内容を確認した。
そのうちの一冊、①『トルストイの生涯』 p. 278- 280.に手紙の本文が日本語訳されて掲載されていた。
- 事前調査事項
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全集などを調べたが見当たらなかったとのこと。
- NDC
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- ロシア.ソビエト文学 (980 8版)
- 日本文学 (910 8版)
- 参考資料
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- ①『トルストイの生涯』 ロマン・ロラン/著 岩波書店 1988年 , ISBN 4-00-325561-5 (請求記号:S980/ロ/ブンコ)
- ②『徳富蘆花とトルストイ 日露文学交流の足跡』 阿部 軍治/著 彩流社 1989年 (請求記号:910.2/ト/)
- ③『蘆花徳富健次郎 第二部』 中野 好夫/著 筑摩書房 1972年 (請求記号:910.2/ト/)
- ④『中野好夫集 10 蘆花徳冨健次郎 第二部』 中野好夫/著 筑摩書房 1984年 (請求記号:918.6/ナ/10)
- ⑤『徳富蘆花とトルストイ 日露文学交流の足跡 増補改訂』 阿部軍治/著 彩流社 2008年 , ISBN 978-4-7791-1350-5 (請求記号:910.2/ト/)
- キーワード
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- 徳富蘆花
- トルストイ
- 手紙
- 照会先
- 寄与者
- 備考
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<事後調査>
改めて徳富蘆花に関する資料をあたってみると、資料③『蘆花徳富健次郎 第二部』 p. 442- 444.と資料④『中野好夫集 10 蘆花徳冨健次郎 第二部』(資料③を再録したもの)のp. 442-444.に英語本文と大意を訳出したものが掲載されていた。
これらの資料③・④のp. 441に以下の記述がある。
「・・・この英文書簡、いまさら発見でもなんでもない。・・・〈中略〉・・・ただこの原文、いまだに活字にはなっていないようである。・・・」
この個所から判断すると、この書簡の存在自体は知られていたが、資料③の出版された1972年まで原文は活字になっていなかったようである。
また、同じ個所(p. 441)に以下の記述がある。
「・・・複写コピーは、いつでも恒春園記念文庫に展示されているくらいで、行けば誰でも見られるが、・・・」
しかし、資料①『トルストイの生涯』のp. 278に以下のような記述もある。
「・・・蘆花夫人のご好意によってこのトルストイの手紙(英文)を拝見でき、また発表のご了承を得たので、・・・」
当館所蔵の資料①は第19刷で1988年発行のものだが、初版は1960年発行となっている。
これらの記述から考えると、資料①の初版出版当時は見ることが難しい資料ではあったが、資料③が出版されるまでの約10年の間に一般公開され、誰もが見ることができるようになったようである。
蘆花からトルストイ夫妻宛の書簡に関しては、資料②の増補改訂版である資料⑤『徳富蘆花とトルストイ 日露文学交流の足跡 増補改訂』に書簡原本と日本語訳が掲載されていた。
・『トルストイ宛の最初の書簡』 1906年1月21日 p. 283- 288.
・『トルストイ宛の二通目の書簡』 1906年5月22日 p. 289- 290.
・『トルストイ夫妻への礼状』 1906年10月3日 p. 290- 294.
・『トルストイ夫人への手紙』 1906年10月3日 p. 294- 295.
・『トルストイ夫人へのトルストイ病気見舞いの手紙』 1907年2月2日 p. 296- 299.
・『トルストイ夫人への手紙(トルストイ逝去後)』 1921年7月3日 p.300- 310.(この手紙は『みゝずのたはこと』 徳富蘆花/著 の中にも掲載されている)
また、資料⑤のp. 316以降には徳富蘇峰からトルストイへの手紙も原文が掲載されている。
<追加事項>
蘆花は1906年にトルストイを訪問しているが、その時の様子は『巡礼紀行』 徳富蘆花/著 の中で「ヤスナヤ、ポリヤナの五日」として記されている。
・『明治文学全集 42』 徳富蘆花/著 筑摩書房 1977年 p. 170- 188. (請求記号:918/メ/42)
・『トルストイ全集 別巻 トルストイ研究』 法橋和彦/編 河出書房新社 p. 448- 471.(請求記号:988/ト/)
蘇峰も1896年にトルストイを訪問しており、その様子は『トルストイ翁を訪ふ』 徳富蘇峰/著 として記されている。
・『トルストイ全集 別館 トルストイ研究』 法橋和彦/編 河出書房新社 p. 440- 447.(請求記号:988/ト/)
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 文学
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000132562