レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2012年 5月 5日
- 登録日時
- 2012/06/23 12:10
- 更新日時
- 2018/08/31 19:20
- 管理番号
- 県立I2012-17
- 質問
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解決
ラブレーの「ガルガンチュワ物語」のガルガンチュワとは巨人の名前のようだが、何語でどんな意味か?
- 回答
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※ 高知県立図書館・高知市民図書館合築に伴い、資料に関する情報が現在の情報とは異なる場合があります。 ※
「ガルガンチュワ」(Gargantua、「ガルガンチュア」と訳されることも)は、ラブレーの『ガルガンチュワ=パンタグリュエル物語』と総称される全4(または5)巻の物語に登場する巨人の名前です。
『世界文学あらすじ大事典』で、この『ガルガンチュアとパンタグリュエル物語(Gargantua et Pantagruel)』のあらすじを確認できます。王女ガルガメルが夫グラングージェの子を宿し、左の耳から赤児を産み落としたとき、赤児の第一声は「おぎゃあ」ではなく、「(酒が)のみたーい!」であったため、驚いた父王が「おまえのはでっかいわい!(ク・グラン・チュ・ア)」(筆者曰く、「咽喉が」の意)と言ったのにちなみ、名前はガルガンチュアと決まったとあります。
また、『第一之書ガルガンチュワ物語』(岩波書店、1984年)の訳注によると、「中世から、ガルガンチュワと呼ばれる巨人の伝説は、ヨーロッパ各地に散在」しており、中世伝説におけるガルガンチュワは、「巨人王グラングゥジェGrandgousierの息子で、同じく巨人。パンタグリュエルPantaguruelの父に当たる」とあり、さらに「ガルガンチュワ」なる名前にについて、「大きな咽喉」あるいは「貪食感」の義であり、「南フランスの方言であろうと推測される。最初の文献(1471年)としては、Gargantuasなる形が残っている」とあります。
なお『白水社 仏和大辞典』には、「gargantua」は「Gargantua Rabelaisの物語Vie inestimable de Gargantua 1534の主人公」で、俗語で「大食家、大食漢」を意味するとあります。
- 回答プロセス
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■『集英社世界文学大事典』を引く
→4巻pp.610-613「ラブレー」・・・「中世民間伝承中の巨人を主人公とした『ガルガンチュワ大年代記』なる小冊子(作者はシャルル・ビヨンか?)が発売されて評判」となり、「これに触発されたラブレーは同じく中世伝説中の小悪魔を主人公とする『パンタグリュエル物語』(通称『第二之書パンタグリュエル』)を短期間に執筆刊行した。パンタグリュエルを勝手に巨人に仕立てあげ、『大年代記』の主人公ガルガンチュワの息子にしてしまったのである。文化と教養の言語であるラテン語ではなく、あえて流動的な民衆の言葉、いわば俗語にすぎないフランス語を駆使し」とあり、詳細な説明がある。
一般に『ガルガンチュワ=パンタグリュエル物語』と総称される全4(または5)巻の物語。
■フランス文学ということで、『フランス文学辞典』を引く
→「ガルガンチュワとパンタグリュエル」の項、「パンタグリュエル」の項を見る。「パンタグリュエル」の項に、「名前の語源はラブレーによれば、「万物は渇した」であるが、言語学者の研究によると「息がつまる、咽喉がからから」というような意味で、酒を飲むことに関係がある」とある。が、ガルガンチュワの語源は見当たらない。
■「中世民間伝承中の巨人の名前」ということで、フランス民話の本を見てみる
→『フランス民話集』巻末に「フランスの民話について」(ポール・ドラリュ/著)が収録されており、そのうちpp.328-330に「ラブレーと伝承」の項目あり。「ガルガンチュアとその息子パンタグリュエルの物語るの着想は、行商人の手でいたるところに広まり、市で売られていた民衆本、『偉大にして巨大な巨人ガルガンチュア大年代記』によるものと思われる。」「ラブレーが不滅のものとして残したガルガンチュアの名は、もっと以前から民衆のあいだでは知られており、『大年代記』は昔からの口頭伝承を記録し、ふくらませたにすぎない。」「ガルガンチュアはすでに1470年から伝説に入っているが」「ガルガンチュアの名は、ラブレーとは無縁の民間伝承の中にも生きており、円盤のようにして投げたとされる多くの巨石や、靴の泥を落とした跡で造ったとする多くの丘や、数々の偉業をなしたとされる多くの土地や川の名前に結び付けられている」とある。
■当時俗語であった中世フランス語を駆使して書かれたとのことから、フランス語の辞典を見る
→白水社の『仏和大辞典』p.1152より「gargantua」は「Gargantua Rabelaisの物語Vie inestimable de Gargantua 1534の主人公」で、俗語で「大食家、大食漢」とある。
■『ガルガンチュワ=パンダグリュエル物語』の翻訳書を確認してみる
「ガルガンチュワ」表記の「ガルガンチュア」表記の場合があるので、キーワード「ガルガンチュ」で検索。
→『河出世界文学大系5 ガルガンチュワとパンタグリュエル物語』は「第一之書」から「第五之書」までが収録されている。巻末に訳注と解説(二宮敬/著)があるが、ラブレーの創作のきっかけとなった『大年代記』について「単に民間口伝のガルガンチュワ伝説を当時流行の騎士道物語の枠組みの中に流し込んだものにすぎない」とある。
→『第一之書ガルガンチュワ物語』は「第一之書」の収録しかないが、pp.259-389の訳者略註とpp.392-468の『第一之書ガルガンチュワ物語』解説が大変詳しい。訳注のpp.262-263に「ガルガンチュワ=Gargantua」の訳注があり、「中世伝説においては巨人王グラングゥジェGrandgousierの息子で、同じく巨人。パンタグリュエルPantaguruelの父に当たる」とあり、さらに「ガルガンチュワ」なる名前にについて、「大きな咽喉」あるいは「貪食感」の義であり、南ウランスの方言であろうと推測される。最初の文献(1471年)としては、Gargantuasなる形が残っている」とある。また、「中世から、ガルガンチュワと呼ばれる巨人の伝説は、ヨーロッパ各地に散在していた」とある。
■あらすじの確認をかねて、『世界文学あらすじ大事典』を引く
→pp.549-552「ガルガンチュアとパンタグリュエル物語 Gargantua et Pantagruel」。あらすじに、王女ガルガメルが夫グラングージェの子を宿し、左の耳から赤児を産み落としたときについて、次の記述。「赤児の第一声は「おぎゃあ」ではなく、「(酒が)のみたーい!」である。驚いた父王が「おまえのはでっかいわい!(ク・グラン・チュ・ア)」(筆者曰く、「咽喉が」の意)と言ったのにちなみ、名前はガルガンチュアと決まる。」
- 事前調査事項
- NDC
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- フランス文学 (950 9版)
- 参考資料
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- 『集英社世界文学大事典 4』(集英社 1997年)(R/903.3/シユ/4 自館ID1101542163)
- 『フランス文学辞典』(白水社 1975年)(R/950.3/F 自館ID1101367884)
- 『フランス民話集』(新倉朗子/編訳 岩波書店 1993年)(C/388.3/フ 自館ID1200390753)
- 『仏和大辞典』(白水社 1981年)(R/853/F 1101362125)
- 『河出世界文学大系5 ガルガンチュワとパンタグリュエル物語』(河出書房新社 1980年)(908/K 自館ID1101192704)
- 『第一之書ガルガンチュワ物語』(渡辺 一夫/訳 岩波書店 1984年)(953/R 自館ID1100732039)
- 『世界文学あらすじ大事典 1』(国書刊行会 2005年)(R/903.3/セカ/1 自館ID1106352303)
- キーワード
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- ガルガンチュワ
- ガルガンチュア
- ラブレー
- パンタグリュエル
- フランス民話
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000107752