レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2011/09/17
- 登録日時
- 2012/03/24 02:00
- 更新日時
- 2012/03/24 02:00
- 管理番号
- 千県中参考-2011-0018
- 質問
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解決
釈迢空の歌「くずの花の踏みしだかれて色あたらし この山道いく人あり」の出典と、この山道がどこか、また、この山道をさぐりだす方法を教えてください。
- 回答
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(1)出典について
釈迢空(しゃくちょうくう)の歌とのことでしたので、釈迢空の歌集について『釈迢空短歌綜集』【資料1】の巻末の「作品初句索引」で確認したところ、該当の短歌はこの図書のp7に掲載がありました。
この図書には釈迢空の複数の歌集が収録されており、該当の歌は、歌集「海やまのあひだ」の中に収録されています。
「大正13年 -52首- 島山」というまとまりの1首目に、「葛の花 踏みしだかれて、色あたらし。この山道を行きし人あり」とあります。
ご質問にありました歌とは、漢字や句点、下の句の文言など細部が異なっていますのでご確認下さい。
釈迢空の歌集「海やまのあひだ」については、大正14年5月30日改造社より刊行されたこと、折口信夫全集にも収録されていることなどが記載されています。
※折口信夫(おりくち しのぶ)は釈迢空の本名です。
なお、この図書には、詠まれた場所について等、1首ごとの解説は掲載されていませんでした。
(2)場所について
『日本文芸鑑賞事典 近代名作1017選への招待 8(大正13~15年)』【資料2】に、歌集「海やまのあひだ」が取り上げられています(p373-380)。
この中で、該当の歌の舞台については「「島山」(14首)の巻頭をかざる「葛の花」の歌は、熊野(和歌山県)の旅での所産か、沖縄や壱岐の旅での所産か長く議論の絶えないところです。」(p380)との記述があります。
『折口信夫必携』【資料3】に収録されている、中井昌一著「折口信夫作品解題 海やまのあひだ」(p128-129)の中に、「葛の花」の歌の詠地については熊野説と壱岐説があることに触れ、「しかし、重層体験と考えるのが、迢空短歌の特質にあう。」との記述があります。
(3)文献の探し方について
上記(2)でご紹介したとおり、この歌の詠地については熊野説と壱岐説があるようですが、更に情報をお調べになりたい場合の、文献の探し方をご紹介します。
大きく分けて、4つの視点(方法)があります。
1.文学事典類、短歌の事典類等で基本的な事項を確認する。
2.該当の歌集が収録されている文学全集等があれば、そこに解説が掲載されていないか確認する。
3.特定の人物(釈迢空)についての研究書を探し、内容を確認する。
4.雑誌論文を探し、内容を確認する。
3と4について、文献を探す方法を説明します。
3.ある人物について書かれている図書を探す場合
図書館の蔵書検索画面で検索項目を「個人件名」にして人名を入力して検索します。(「個人件名」の項目がない検索画面の場合は「件名」で検索します。)
今回の場合は、「釈迢空」のほか、本名の「折口信夫」での研究書も多数あるようですので、両方の名前で検索してみて下さい。
これらの本の中で、歌集「海やまのあひだ」や「葛の花」の歌について論じているもの、あるいは釈迢空の歌全体を論じているものなど、関係しそうな図書をピックアップして内容を確認していきます。
千葉県立図書館で所蔵している図書は、千葉県立図書館ホームページの「図書・雑誌・視聴覚資料の検索」(http://www.library.pref.chiba.lg.jp/cgi-bin/Sopcsmin.sh?p_mode=1)で検索することができます。
4.雑誌論文を探す場合
CiNii Articles - 日本の論文をさがす(国立情報学研究所)(http://ci.nii.ac.jp/)
学術論文情報を検索の対象とする論文データベースです。
論文によっては、Web上で本文を見られるものもあります。フリーワード欄にキーワードを入力して検索します。キーワードの掛け合わせもできます。
キーワードの例:「釈迢空 海やまのあひだ」、「釈迢空 短歌」
なお、読みたい雑誌論文が見つかった場合、Web上で本文を見られないものについては、その雑誌を所蔵している図書館を探す必要があります。
(インターネットの最終アクセス:2012年2月14日)
【追加情報】
回答後、下記の資料に作者本人による記述があることがわかった。
『折口信夫全集 31(自歌自註・短歌啓蒙 歌評)』(折口信夫[著] 折口信夫全集刊行会編纂 中央公論社 1997)
「自歌自註」のうち、p226に該当の短歌が収録され、p227に
「壱岐は島でありながら、伝説の上では神代の一国である。それだけに海としても個性があり、山としても自ら山として整うた景色が見られた。蜑の村に対して、これは陸地・耕地・丘陵の側を眺めたものが集まつてゐる。
山道を歩いてゐると、勿論人には行き逢はない。併し、さういふ道に、短い藤の花房ともいふべき葛の花が土の上に落ちて、其が偶然踏みにじられてゐる。其色の紫の、新しい感覚、ついさつき、此山道を通つて行つた人があるのだ、とさういふ考へが心に来た。」
との記述があり。
- 回答プロセス
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釈迢空の歌集を調査した。
また、タイトル「海やまのあひだ」で所蔵検索したところ、『日本文芸鑑賞事典』の目次情報がヒットした。
該当の歌の舞台については複数の説があるようなので、更に情報を探したい場合の調査方法も案内した。
- 事前調査事項
- NDC
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- 詩歌 (911 9版)
- 参考資料
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- 【資料1】『釈迢空短歌綜集』(釈迢空著 河出書房新社 1987) (9100505522)
- 【資料2】『日本文芸鑑賞事典 近代名作1017選への招待 8(大正13~15年)』(石本隆一[ほか]編 ぎょうせい 1987) (9102911306)
- 【資料3】『折口信夫必携』(岡野弘彦編 西村亨編 学灯社 1993) (9100386575)
- 『折口信夫全集 31(自歌自註・短歌啓蒙 歌評)』(折口信夫[著] 折口信夫全集刊行会編纂 中央公論社 1997) (0105331143)
- キーワード
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- 短歌
- 詠地
- 釈迢空
- 折口信夫
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献調査
- 内容種別
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000104176