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レファレンス協同データベース事業
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第10回レファレンス協同データベース事業担当者研修会 事後課題(3)レポート:レファレンスサービスを強化することによって、図書館業務全体の問題点を探そうと思います。

公立大学法人首都大学東京 東京都立産業技術高等専門学校 品川キャンパス図書館 山崎愛


(1)「レファレンス協同データベース」へのデータ作成・登録の現状について

レファレンス協同データベース事業(以下、レファ協)に昨年から参加している本学図書館であるが、データ登録件数はゼロである。作成にむけ、事例を収集するなど、準備を進めている段階である。

このたび、2キャンパスの図書館を代表して研修に参加した者として、館内でこれからのレファレンス業務について提案・発信し、登録件数を増やしていく責務を感じている。レファ協に参加し、高専図書館第一号として歓迎していただいたものの、運用について全く話し合いがないまま参加手続きを進めてしまったため、職員の大部分はIDもURLも知らない状況のようである。今後、職員を集めてミニ研修会を催し、さらには運用について話し合って決めていくように計画中である。

そのような今後の運用について提案する前に、本学図書館のレファレンスサービスについて、いくつか整理したいと思う。

まず、量の面では「非常に少ない」の一言に尽きる。1キャンパスあたり、蔵書数が約6万冊、学生数が1000人以下、一日の入館者数が平均で100名ほどの小規模な図書館である。利用案内やセルフコピー機の使い方についての質問を除いた受付件数は、月に20件を超えない。(カウント方法もおざなりなので、統計としての信頼性も低いのではあるが。)学生の図書館利用目的のうち、資料の閲覧・貸出以外のものがかなり多い、という結果もあり(2011年度に行なった全学生対象のアンケート結果による)、レファレンスサービスの知名度は低いと言える。

また、質の面では、クイックレファレンスが大多数を占めており、それ以外の、文献調査依頼などのレファレンス受付は、珍しい。中学校を卒業した年齢で入学する高等専門学校は、高等教育機関と位置づけられているものの、その図書館の役割はかなり大学図書館と異なる。教員の中には「保健室と図書館は、学生の退避場所でもあってほしい」と望む傾向もあるように、高学年(高専本科生4・5年:大学1・2年に相当)や専攻科生(大学3・4年に相当)に対する高度な学修支援と同時に、低学年(高専本科生1~3年:高校生に相当)への教育的配慮も求められている。平たく言えば、居心地のよさに繋がる、職員への信頼感と、質問・相談しやすい雰囲気を備えていることが、高専図書館の必須要件なのである。

そのような観点から見ると、レファレンス受付件数が少ないという理由について、1.質問・相談しやすい雰囲気がない? 2.職員には尋ねようと思えない? 3.尋ねる必要性を感じない(高専生は自己解決?)など、想像の域を出ない。なんらかの検証をしてみないことには、サービス改善のポイントが見えてこないのではないかと思っている。


(2)自館のレファレンスサービスを向上させる視点と方法について

上記のように、レファレンス受付の機会が少ない小規模の図書館であるため、「受付内容はその時々でさまざまであり、同じ質問を受けることは考えにくい。記録があっても役には立たない。」というような、記録に関して消極的な意見もきかれる。そこで、レファレンスサービスを向上させる視点と方法について、考察してみた。


A. 職員のスキルアップを兼ねる、という視点

厳しい意見だが、レファレンスサービスの記録を残していない、という事実は、「その時誰かが対応してとりあえずは完了したらしいが、どのような対応をしたのかは不明」、という無責任さが放置されてきた、と言えるのではないだろうか。総じて図書館には「司書資格を持っているのだから、最低限の知識はあるだろう。業務の質については互いに干渉しないし、自己研鑽も個人任せ」という土壌があるように感じられる。

私自身も今回の研修に参加することで、自己流のレファレンス対応に足りなかったものに気づくことができた。レファ協のガイドに沿ってデータを入力することで、誰しもが、調査は充分であったか、回答は質問者にきちんと理解されたか、など、レファレンスサービスの基本を意識することができると思う。意識するようになれば、たまさかに受けたレファレンスについても、その好機を逃さず、より満足度の高いサービスを提供できるよう、スキルアップに繋げていけると期待できる。


B. サービスの質を合わせられる、という視点

レファレンス業務については、自館資料に精通することがより迅速・的確な回答に結びつく、という固定観念から、ベテラン職員でなければ良い案内ができないのが当たり前のように考えられているきらいがある。

本学図書館の職員は、2キャンパスの常勤・非常勤を合わせて5名である。3年以上在籍している職員は少なく、短ければ数ヶ月で替わるケースもあるうえ、近年は、非常勤職員からアルバイトあるいは委託スタッフへの切替も想定される事態になっている。とても、ベテラン職員によるレファレンスサービスを望むことはできない。そうであれば、ベテラン職員なしでも全員が良い案内をできるようになるよう努めなければなるまい。

自館資料についてのレファレンス事例集の蓄積があれば、着任したばかりの職員や、レファレンスサービス経験の浅い職員にも非常に役立つ。また、各自がインターネットに接続可能な環境にあるので、検索サイトや各種のツールと同様に、レファ協のデータベースで他館の登録データを参照することも、もちろん可能である。日常的にレファレンス事例に接することで、より、レファレンス業務への意識を高められる。


C. レファレンスサービスの認知度を上げられる、という視点

現在の広報の中でレファレンスサービスに触れているのは、図書館利用案内(冊子体)の2行と、新一年生向けのガイダンスの中で「わからないことは聞いて下さい。質問を受け付けています。」と紹介されている部分のみである。

実際にレファレンスの事例が記録されれば、図書館だよりなどで報告することも可能であるし、レファ協のサイトへのリンクを貼ることで、ニュースとして一つ取り上げられる。おまけに、認知度を高める ・・・> 受付件数が増える ・・・> 職員の経験値と蓄積データが増える ・・・> さらに広報し認知度を高める ・・・・・・ このような上昇スパイラルを成立させられれば、図書館のサービス全体の向上に繋がるはずである。


D. 利用者との関係性のアップ、業務の問題点を探る、という視点

職員が的確に業務を遂行し信頼に足るということは、教員・学生と図書館との関係を良好に保つ基本でもあるが、レファレンスサービスの向上によって、その関係をいっそう深めることができる。

仮に、上のCが成功してレファレンスサービスや事例の認知度が上がった場合、学生には「こういう事でも、気軽に聞いていいんだ」、「図書館の人は、こんな事でも調べてくれるんだ」と気づいてもらえるであろう。また一方で職員の側にも、わからない事があるようだが聞き方がわからず(あるいは勇気がなく)うろうろしているような学生に対して、積極的に声掛けする習慣ができるであろう。そうなると、本レポート冒頭の(1)で述べたような、レファレンス受付件数が少ない理由について、想像から考察へ深められるのではないだろうか。


E. レファレンスサービスを向上させる方法

研修で紹介された、秋田県立図書館のとりくみ(平成21年度 寄稿 https://crd.ndl.go.jp/jp/library/column_h21_01_akita.html)に倣い、レファ協へのデータの登録を日常業務として全ての職員が入力する、という運用を決めるにあたり、具体的には以下の項目についてミーティングを行なう必要がある。

  1. レファ協の意義についてのおさらい
  2. データ登録のメリット・入力が業務を妨げるものではないことへの理解
  3. 事例と記入例、ガイドラインについての勉強、意識合わせ
  4. 登録・公開のポリシーについての意識あわせ
  5. 業務フローの作成

しかし、懸案は別のところにもある。組織の中で新しいことを提案するには、提案内容の意義について理解を得られなければならない。A~Dの視点からアピールしていくことを考えているが、最初の意識にズレがないように丁寧に確認していく必要がある。そして、責任担当者だけでなく職員全員が携わっていく"持続可能な業務"として定着させるために、定期的なミーティングや勉強会を開催することも提案していきたい。


(3)おわりに

レポートの説明として「個人としての考えを自由に」と書かれていたことに甘えて、かなり脱線した内容になってしまったかと思う。ご担当者様にはお詫び申し上げたい。

研修を受講できたことを契機に、今後レファ協を便利で有用なツールとして利用し、(本当にささやかな件数ながらも)データを登録していけるよう、努力する所存である。もちろん、その目的は、本学の学生が、もっと図書館を楽しんで利用してくれることにあるのは、言うまでもない。レファレンスサービスを含め、利用者のための業務改善、利用者のためのスキルアップという姿勢を継続していきたい。

(平成26年9月8日事務局受領)

※ 本稿は研修参加者による事後課題レポートから講師の谷本先生と事務局で選定し掲載したものです。

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