1. 利用者がカウンターにいる間に、ジャパンナレッジや新聞記事データベース等で妖怪「絡新婦」「女郎蜘蛛」について調べたが、有力な情報なし。
唯一「読売新聞(明治・大正・昭和)」で「刺青ばなし・・・一等は女郎蜘蛛」という記事が役立ちそうだというのでプリントアウト。
2. Googleで「絡新婦」「女郎蜘蛛」を検索。まずWikiの「絡新婦」がヒット。
そこに「江戸時代、美女の妖怪(絡新婦)が男を人気のない小屋へ誘い琵琶を弾き聞かせる。
男が美女の姿とその琵琶の音にうっとりとし、油断している隙に蜘蛛の糸を出し巻きつけ、男を喰らうとされる」という記述があるが、この典拠は不明。
「『太平百物語』や『宿直草』などの江戸時代の書物にも絡新婦の名があり・・・」とあったので、DOORSで『太平百物語』と『宿直草』を検索。
どちらも今出川図書館で所蔵あり。確認したところ、確かに『太平百物語』は巻之四の「孫六女郎蜘にたぶらかされし事」に、
『宿直草』は巻二の「急なるときも思案あるべき事」に、それぞれ「女郎蜘蛛」の話が収録されていたが、琵琶で男を誘惑する内容とは異なる。
「静岡県伊豆市の清蓮の滝では、滝の主として絡新婦の伝説がある」ともあったので、
国際日本文化研究センターの「怪異・妖怪伝承データベース」を検索。4件ヒット。
今出川に所蔵のある『静岡県史 資料編 民俗1』のp. 1096にその伝説を確認。しかしこれも内容が異なる。
『天城の史話と伝説』にも「女郎蜘蛛の精」という似た話が収録されている。
3. レファレンス協同データベースに「妖怪」と入れて検索。
「日本の妖怪について調べたい」という質問の回答に挙げられていた事典類の中の
今出川所蔵の3冊『日本伝奇伝説大事典』『日本説話伝説大事典』『日本妖怪学大全』をチェック。特に有力な情報はなし。
4. Ciniiで検索。「蜘蛛説話成立の背景」という論文あり。(日本文学論究, 通号21, p.42-47)
5. 今出川図書館の書庫・開架・参考室ともに388.1(日本の伝説・民話)の書架をブラウジング。
・『絵で見て不思議! : 鬼ともののけの文化史』p. 234-235に「巨大蜘蛛」についての記載あり。
「江戸時代の読本では、美女に化けた蜘蛛の物の怪が登場・・・」ともあり。『白縫譚』に出てくる「大蜘蛛の妖怪」の絵が紹介されていたので、
今出川所蔵の『白縫譚』を確認したが、これも話の内容が異なる。
・『日本伝説名彙』に「女郎蜘蛛」の出てくる伝説は掲載されているが内容が異なる。
・『神話伝説辞典』には「蜘蛛」の項はあるが「女郎蜘蛛」の記述なし。
・『昔話・伝説小事典』の「蜘蛛」の項に「「食わず女房」の西南日本型は、話の後半で、
女がクモに化けて男の命を狙う展開が多く・・・」という記述や、「化物寺の一つである「蜘蛛の糸」では、
クモの化粧した女が三味線を弾くたびに男の首に糸が巻きつく場面が語られる」という記述あり。
・『日本昔話事典』に上記「蜘蛛の糸」の伝説の項あり。「山寺の蜘蛛女」という伝説が岩手県上閉伊郡にあるとの記載。
同系の話が長野県にも見られ、その話の中で、主人公の相手が「美女の場合は三味線、座頭は琵琶を弾く」とある。
蜘蛛が男を楽器で誘惑するという点では内容が一致するが、最後に男が蜘蛛を殺す筋なので、蜘蛛が男を食べる顛末とは異なる。
・『日本昔話大成』の第7巻に「蜘蛛おなご」という項目あり(p. 121)。
ここには、上記『日本昔話事典』に記述のある「山寺の蜘蛛女」の話と思われるものが掲載されている他、
各地に分布する類似の昔話が紹介されている。その中に、上記「蜘蛛の糸」と思われる話もあり。しかし主人公が蜘蛛に殺される筋のものは
一つしかなく、それには琵琶も三味線も出てこない。
6. Googleで「クモ」「女」「三味線」「琵琶」「江戸時代」「刺青」「民話」「伝説」「伝承」などのキーワードから検索。以下のページがヒット。
・「日刊Okimag : 沖縄の民話 蜘蛛(くも)の三味線(さんしん)弾き」
(
http://okinawan.jp/minwa/minwa041.htm [last access: 2008.8.8])
・「福娘童話集 : きょうの日本昔話 クモ女」
(
http://hukumusume.com/douwa/pc/jap/12/04.htm [last access: 2008.8.8])← 「蜘蛛の糸」の同系
・「怪書」 (
http://www004.upp.so-net.ne.jp/thor/FD/book/book1_frame.htm [last access: 2008.8.8])
・・・『伽婢子(おとぎぼうこ)』(江戸時代の怪奇小説集)が紹介してあったので今出川に所蔵のあった『伽婢子』をチェックしてみると、
「蜘(くも)の鏡」という話あり。女も琵琶も出てこないが、蜘蛛が男を糸に絡めて食べる大筋はある。
・「大学教材としての日本近代文学」の中の「第十二回 研究会の報告」
(
http://www.kyy.saitama-u.ac.jp/~yagi/study/REPO_112.html [last access: 2008.8.8])
・・・谷崎潤一郎「刺青」に出てくる女郎蜘蛛の刺青について少し言及あり。
・「世界妖怪図鑑」の「絡新婦・女郎蜘蛛」
(
http://www5f.biglobe.ne.jp/~yuu-tujigiri/youkai/s/si/jorougumo/jorougumo.html [last access: 2008.8.8])
・「長崎市の民話・伝説」の「蜘蛛の琵琶」
(
http://2shin.net/lore/minwa/nagasaki.html)
・・・女は出てこないが、琵琶弾きが登場。蜘蛛はコガネグモ。
簡単な筋しか載っていないので『長崎県の民話』などの冊子体でチェックした方が良いかもしれない。
(※インターネットサイトの情報は信頼できものかどうか慎重に精査した上で、URL、アクセス日など明記して使用すること。
信頼するに足りない場合は参考程度に止める。)
7. 「怪異・妖怪伝承データベース」をお持ちの国際日本文化研究センターに絡新婦について参考調査を依頼。回答待ち(2008.08.22)。
→「有力な情報はありません。
お役に立つが分かりませんが、スペイン語に翻訳された『蜘蛛』が「ちりめんデータベース」で閲覧できます」との回答(2008.8.26)。
(
http://shinku.nichibun.ac.jp/chirimen/picture_list.php?id=45&fid=040&pnum=1&from=cap&disp=JP)