レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2003/10/12
- 登録日時
- 2010/07/17 02:00
- 更新日時
- 2012/01/20 10:01
- 管理番号
- 長野市立長野-03-015
- 質問
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未解決
お祝い事などに紅白の色彩が用いられる意味、由来について
- 回答
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①『陰陽五行と日本の民俗』
「陰陽五行思想は大陸からはやく日本に渡来し、その時期はおそらく文字移入の原初までさかのぼるかと思われる(中略)陰陽五行、及びその実践としての陰陽道は日本渡来以来、国家組織の中に組み込まれ、一貫して朝廷を中心に祭政・占術・諸年中行事・医学・農業等の基礎原理となり、時に権力者によって軍事に至るまで広範囲に実戦応用された。」
この本のp31から五行配当表というものについて解説があり、万物の象徴として青、赤、黄、白、黒の五色について書かれています。
それぞれの色の持つ意味についてはp199から書かれています。現在の紅白の持つ意味などに直接つながるものではありませんが、この思想が現在までの間に展開してきたと推測できるのではないかと説いている資料もありましたのでご紹介しました。
②『色彩から歴史を読む』
「日本の民俗文化、いわば日本の民衆が伝承してきた基層文化とは、農村、漁村、山村、町(都市)にて、それぞれの地域性を加えながら展開してきた伝統の文化である。
なかでも色彩表現の伝統的文化は、これまで宗教儀礼や年中行事、芸能などの陰陽五行思想による色の象徴性だけが注目され、私たちの日常生活の色彩表現や社会的機能として記号化された色彩表現、日本人的な感覚因子を内包したデザイン(意匠)としての色彩表現、色彩語を使った日常的な言語表現についてはほとんど触れられることはなかった。民俗文化において色彩が意識的に使われたのは、村落などの社会集団による季節の年中行事や祭礼などの宗教儀礼、生産儀礼、人生儀礼などである。(中略)
人生儀礼は地方ごとに地域差があり、ある種タブー(禁忌)とする色彩があることから、ケガレ(穢れ)と色彩との関係を示す民族に注目される。」
こちらの資料には、各地域において人生儀礼の色彩がどんなときにどう使われているかが書かれています。
また、
「民俗学者の宮田登は、紅白は本来田舎の色であって、江戸の武家社会ではより黒の比重が高かったのに比して、田舎では黒を意識しないで、晴れ着として白や赤系統の色が用いられ、図式的には、都会の黒に対し、田舎の白・赤が存在していると指摘している。」
とあり『日本民俗文化大系 11』を参考文献として挙げています。
「(p232~抜粋)人生儀礼にはある種の禁忌(タブー)をともなうことが多く、出産や月経に関する血のケガレ(穢れ)を赤不浄と称し、また死のケガレを黒不浄と称して人々は忌み嫌った。それが何を意味することなのかを、具体的な色彩の民俗事象からとらえる必要がある。」
こちらには、ハレ・ケ・ケガレという意識と色彩との関係性が書かれている図が掲載されています。
③『月とスッポンと日本語』
「(前略)神功皇后の三韓征伐ってあるでしょう。この神功皇后は宇美という所で応神天皇を出産しますが、この出産の折、天から赤と白の沢山の幡が舞い落ちてきて、神功皇后のお姿を隠すんです。応神天皇の誕生は女帝にとってこれ以上ない喜びですし、日本国にとってこれ以上ないお目出度いことでしょう。だから赤白はお目出度いんです。応神天皇は八幡と呼ばれるけど、八幡の由来はこの赤と白の幡にあるんです。
八幡とは沢山の赤白の幡という意味です。応神天皇は武の神・八幡として武家に広く信仰されていくけど、武家の本文は赤白の幡が神功皇后を護り隠したことでも判るように、天皇家をガードすることにあるんです。武家の最初は源氏と平氏ですから、この両家は宇美の地で起きた奇跡、赤白の幡が舞い落ちたことにちなんで平家は赤幡、源氏は白幡になりました。」
この資料は現在の紅白の持つ意味の由来に近いような気がしますが、決め手になる回答とは言えません。
図書館での資料では以上のことしかわかりませんでした。
- 回答プロセス
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県立長野図書館にもレファレンス照会。
以下同図書館より回答。
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赤、白単色についての記述はありますが、紅白の色彩については見当たりませんでした。
検索エンジンGoogleでは諸説書かれており、典拠に記されていました『色彩から歴史を読む』の289pターナーの説などもみられましたが、これはもうお調べとのことですので。その他の説を裏付ける記述は下記資料には見当たりませんでした。
また、民族学関係、陰陽五行思想と色彩などでも紅白の色の由来や意味についての記述は見当たりませんでした。
『人はなぜ色にこだわるか』 村山貞也著 ベストセラーズ
『色の日本史』 長崎盛輝著 淡交社
『色』 江森康文著 朝倉書店
『色』 前田雨城著 法政大学出版局
『生活の色彩学』 加藤雪枝著 朝倉書店
『万葉の色』 日本色彩学会 東京大学出版会
『人生儀礼辞典』 倉石 あつ子著 小学館
『日本色彩文化史』 前田千寸著 岩波書店
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【追記:2012.1.8】
香川県立図書館様よりコメントをいただく。
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この事例を拝見し、
WebcatPlusの一致検索で、色彩×紅白で検索し、次の資料に「紅白」の項がある
ことがわかりました。
・色彩自由自在 末永蒼生/著 晶文社 1988.7 757.3
現物を確認しましたが、この事例への回答としては、少し弱い内容かなあと思いました。
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以上の文献p71-72には次のように記されていた。
「 風習のなかでシンボルが形成されてきた背後には、色彩が備えている独特な性質がある。
波長の長い赤と、明度の高い白が組みあわさることにより、紅白は人の視覚にとって、もっともインパクトの強い配色になる。その結果、心理的にも「ハレ」の興奮をもりあげずにはおかないのだ。
「黒と白」という配色の場合は、悲しみのエネルギーを闇に吸収し、そのことによって浄化をうながす。それゆえに葬儀のシンボルとしてふさわしい。これとの対比でみるとき、エネルギーのすべてを発散することによって「浄化」とする、祝祭における紅白の性質がより鮮明になるのではないだろうか。」
- 事前調査事項
- NDC
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- デザイン.装飾美術 (757)
- 参考資料
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- 『陰陽五行と日本の民俗』吉野 裕子/著 人文書院 1983.06 <382ヨ>
- 『色彩から歴史を読む』神庭 信幸/〔ほか〕監修 ダイヤモンド社 1999.02 <757シ>
- 『月とスッポンと日本語』明石 散人/著 講談社 2000.11 <810ア>
- 『日本民俗文化大系 11』宮田 登/著者代表 小学館 1985.08 <382ニ>
- 『色彩自由自在』末永蒼生/著 晶文社 1988.7 <757ス>
- キーワード
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000069195