レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2017年5月19日
- 登録日時
- 2017/05/26 15:23
- 更新日時
- 2017/06/16 15:45
- 管理番号
- 県立長野-17-027
- 質問
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未解決
ホウセンカの白色花弁の成分について小学生に説明できる資料が欲しい。
- 回答
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『ホウセンカの絵本』p.10には、花色の種類を紹介し、白い花のキャプションに「白い花には、虫にさされたときのかゆみをとめる成分がふくまれているといわれているよ」とある。また、p.29には利用法として白花の焼酎漬けがあり、「徳島県や長野県では、古くから白いホウセンカの花びらの焼酎漬けが、虫に刺された時のかゆみ止めの常備薬として愛用されているよ。(中略)蚊にさされたとき、これをぬるとすぐにかゆみがひくそうだよ。」とあったが、成分やほかの色の花弁との違いについて書かれていない。
白色花弁の成分については「大阪大学リポジトリ」のサイトに、武庫川女子大学薬学部の奥尚枝准教授の博士論文「抗アレルギ一物資の探索を目的とする新規アッセイ法の開発と応用」の要旨【2017.6.14終確認】に報告事例があった。
(前略)そこで,ホウセンカの白色花弁の成分研究を行い,新規化合物kaempferol-3-0- [2" -0α-L-rhamnopyranosyl-3" -0-βD -glucopyranosyl] -β-D -glucopyranoside と2- hydroxy -3-hydroxyethyl-1, 4-naphthoュquinone を含む12種類のflavonol , 1, 4-naphthoquinone およびρoxybenzoate 誘導体を単離するとともに,それらの活性を検討した。その結果, IB の抗アナブイラキシー活性本体がkaempferol 3-rutinoside などのflavonol 誘導体と2-hydroxy-1 , 4-naphthoquinone などの1 , 4-naphthoquinone 誘導体であることが明らかになった。またその作用メカニズムについては, flavonol 誘導体が免疫担当細胞内でのシグナル伝達を阻害し, 2-hydroxy-1 , 4-naphthoquinone がピリミジン生合成阻害によるIgE 抗体の産生を抑制し, 1, 4-naphthoquinone 誘導体が抗ヒスタミン作用を示す他,活性本体の特定は行っていないがPAF およびNO の血圧低下作用を抑制作用し, PG,プラジキニン,セロトニンの血管透過性充進作用に対する括抗作用を示すことを明らかにした。(後略)
研究報告として書かれた文章のため、小学生に説明する目的には適していない。他も研究報告例は少なく、ほとんど学会の発表要旨で、やさしくまとめられたものは確認できなかった。
- 回答プロセス
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1 漢方薬としての利用があるのだろうと考え、NDC499の薬学周辺の棚の資料を見ていく。全草および種子を薬用として利用する記述がみられるが、白色花弁の利用についての記載はない。赤色花弁は爪を染める化粧品的な利用の記述か見られる。
2 NDC471植物学の棚周辺で、ホウセンカを探すが、白色花弁についての記述は確認できない。
3 児童書でホウセンカについて書かれている資料を探す。『ホウセンカの絵本』に白い花に「かゆみを止める成分がある」とあるが、成分名はない。また、別のページに民間薬として使われていることがわかる記述があった。
4 民間薬ということから、「ホウセンカ」「白」で、データベース「ルーラル電子図書館」【2017.6.14終確認】を検索してみる。成分名はないが、事例が雑誌「現代農業」の読者投稿のような欄にいくつもあることがわかった。
5 研究段階の情報かもしれないと思い、CiNii articles【2017.6.14終確認】で「ホウセンカ」「白」で検索するも、論文のタイトルだけでは内容が判断できないものが多い。Googleで「ホウセンカ」「白」「民間薬」で検索したものの中から、Crassfeel【2017.6.14終確認】という会社のサイトの記述中に、研究者として武庫川女子大学の石黒京子教授の名前があった。
6 CiNii Articlesで著者名検索を行う。ヒットしたものの中からホウセンカ関連のものを見ていく。また、共同研究者の奥尚枝准教授でも検索する。回答の博士論文の要旨からかゆみを止めるための新規化合物を特定したことがわかるが、小学生向けではない。
調査済み資料および参考資料
・『薬になる植物図鑑』増田和夫 柏書房 2006 【499.87/クス】 p.147
・『世界有用植物事典』堀田満 平凡社 1989 【471.9/ホミ】 p.551-552
・『和漢薬百科図鑑 2』難波恒雄 保育社 1994 【499.8/ナツ/2】 p.74-76
・『中国本草図録 巻3』䔥培根 中央公論社 1993 【499.8/シバ/3】 p.135
・『有用草木博物事典』草川俊 東京堂出版 1992 【471.9/クシ】 p.213-216
・「肌の悩みを白ホウセンカが解決」『現代農業』2011.5 p.373
・渡辺紀一「虫刺されには白ホウセンカの焼酎漬け」『現代農業』2004.9 p.42
・奥村昌子「白いホウセンカの花と焼酎でつくる特製化粧水」『現代農業』2000.7 p.52-53
・奥尚枝 石黒京子「アトピー性皮膚炎モデルマウスにおけるホウセンカ白色花弁の効果(第10報)」『日本薬学会年会要旨集』Vol.118 No.2 133p
・奥尚枝 石黒京子 加藤豊也「ホウセンカの抗アレルギー作用に関する研究(第15報)ナフトキノン類のかゆみ及びアトピー様皮膚炎への効果」『日本薬学会年会要旨集』Vol.121 No.2 95p
- 事前調査事項
- NDC
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- 薬学 (499 8版)
- 一般植物学 (471 8版)
- 参考資料
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森源治郎 へん , 市川智子 え , 森, 源治郎, 1943- , 市川, 智子. ホウセンカの絵本. 農山漁村文化協会, 2009. (そだててあそぼう ; 86)
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000010663793-00 , ISBN 9784540091674 (【627/モ】p.10, 29)
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森源治郎 へん , 市川智子 え , 森, 源治郎, 1943- , 市川, 智子. ホウセンカの絵本. 農山漁村文化協会, 2009. (そだててあそぼう ; 86)
- キーワード
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- ホウセンカ
- 抗アレルギー
- かゆみ止め
- 民間薬
- 白色花弁
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 質問者区分
- 小中学生 図書館
- 登録番号
- 1000216592