レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2017/02/26
- 登録日時
- 2018/01/27 00:30
- 更新日時
- 2018/01/27 00:30
- 管理番号
- 参調 17-0059
- 質問
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解決
動物の糞には、特に乳幼児の免疫形成に必要な成分が含まれ、アレルギーになりづらい体づくりになるとききます。そのことを書いている文献を探しているのですが、あれば教えていただけませんか。
●その質問の出典や情報源、調査済み事項など
2008年のNHKスペシャルで見ました。
- 回答
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2008年11月23日に放送されたNHKスペシャル「病の起源」第6集「アレルギー」で取り上げられている。こちらの内容をまとめた書籍「病の起源 2」によると、
「環境衛生が良くなって乳幼児期に感染症のリスクが低下していることが、花粉症の増加につながっている」という、「衛生仮説」と呼ばれる考え方がある。それを裏付けるデータとして、「家畜に接している子はアレルギーになりにくい」という研究が紹介されている。
オーストリア・ザルツブルグ大学では、10年以上にわたって地元の子供たちに対するアレルギー調査が行われている。調査の結果、農家の子は農家以外の子に比べ、花粉症、ぜんそくになる割合が極めて低かった。調査を行ったザルツブルグ大学のヨセフ・リーデーラー博士は、普段から家畜小屋によく出入りしている子たちには、アレルギーになっている子が少ないことに気づいた。ドイツ・オーストリア・スイスの3カ国で子どものアレルギーに関する研究を行ったミュンヘン大学のエリカ・フォン・ムーチウス博士の調査によると、アレルギーでない子どものマットレスから、「エンドトキシン」と呼ばれる成分が見つかった。これは大腸菌などの細菌を覆っている膜の成分で、家畜小屋の空気中に大量に漂っている。
とのこと。このことから、動物の糞に含まれている、アレルギーを予防する効果があると思われる成分は「エンドトキシン」、研究者の名前がヨセフ・リーデーラー、エリカ・フォン・ムーチウスであることがわかったため、これらの言葉をキーワードに当館資料を検索した。
著者「ヨセフ・リーデーラー」「エリカ・フォン・ムーチウス」では該当図書が見つからず。
件名「エンドトキシン」で当館所蔵資料1冊「「病」になる人、ならない人を分けるもの」(杣源一郎著 ワニ・プラス 2014)がヒット。内容を確認したところ、第3章「田舎の子どもは、なぜアレルギー疾患にならないのか」に「NHKスペシャルで、<田舎に住んでいる・きょうだいが多い・動物といっしょに暮らしている>などの子どもはアレルギー体質になりにくく、その分かれ道は幼いときのLPSの曝露量にある、という結論が紹介された」と記述があった。「エンドトキシン」という言葉は使われていないが、「医科学大辞典」によると、「LPSはリポ多糖のことであり、グラム陰性菌細胞壁の外膜の構成成分であり、O抗原およびエンドトキシンの活性成分として知られている」とのことなので、LPSとエンドトキシンを同じものとして扱っていると思われる。
また、「病の起源 2」に参考文献としてあげられている「アレルギーはなぜ起こるか」(斎藤博久著 講談社ブルーバックス 2008) の第1章「アレルギーが増えた理由」の「清潔にしすぎるとアレルギーになりやすい?」に「乳幼児期に農家で牛や馬に囲まれて育った人は、都会育ちの人に比して、アレルギー疾患にかかる率が低いということも知られています」「乳幼児期の細菌やウイルスへの感染のみならず、乳幼児期の環境内に含まれるエンドトキシンとの接触がアレルギー疾患の発症を抑制することがわかったのです」との記述があった。第1章の参考文献として、巻末に9件の論文(全て英語)があげられており、この中に筆者が「Mutius E.」「Riedler J.」となっているものがあるため、おそらくNHKスペシャルで取り上げられた「エリカ・フォン・ムーチウス博士」「ヨセフ・リーデーラー博士」の論文であると思われる。
原綴がわかったため、再度当館システムで著者「Mutius」「Riedler」を検索したが、該当図書はみつからず。
「アレルギーはなぜ起こるか」の著者である斎藤博久の他の著作「Q&Aでよくわかるアレルギーのしくみ」の第2章Q2「衛生環境の変化は、アレルギーの増加に具体的にどう影響しているのですか?」には、エンドトキシンの量が多い家に住んでいる子どもの方が、アレルギーが抑制されやすい傾向がある、との記述があるが、エンドトキシンは「ほこりのなかに存在している細菌の成分」と説明されており、動物の糞とは書かれていない。
「アレルギーはなぜ起こるか」に紹介されている「Mutius E.」の論文は
Renz H, Mutius E, Illi S, et al. “T(H)1/T(H)2 immune response profiles differ between atopic children in eastern and western Germany.”Journal of Allergy and Clinical Immunology.109:338?342(2002)
同じく「Riedler J.」の論文は
Braun-Fahrlander C, Riedler J, Herz U, et al. “Environmental exposure to endotoxin and its relation to asthma in school-age children.”. The New England journal of medicine. 347 (12): 869-877(2002)
いずれも掲載雑誌のHPから、テキストにアクセスが可能。(すべて英文)
http://www.jacionline.org/article/S0091-6749(02)57733-2/fulltext(「Journal of Allergy and Clinical Immunology」HP上「Mutius E.」の論文) 最終確認2017年7月25日
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa020057(「The New England journal of medicine」HP上の「Riedler J.」の論文) 最終確認2017年7月25日
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
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- 内科学 (493 7版)
- 参考資料
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- 1 病の起源 2 読字障害/糖尿病/アレルギー NHK「病の起源」取材班?編著 日本放送出版協会 2009.3 491.69/Y/2
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2 「病」になる人、ならない人を分けるもの 杣/源一郎?著 ワニ・プラス 2014.2 491.8/Y -
3 アレルギーはなぜ起こるか 斎藤/博久?著 講談社 2008.1 493.14/A -
4 医科学大事典 49 りけ?るいしし 講談社 1983.4 490.3/I/49 -
5 Q&Aでよくわかるアレルギーのしくみ 斎藤/博久?著 技術評論社 2015.12 493.14/KY
- キーワード
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- 動物の糞
- 免疫形成
- アレルギー
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事項調査
- 内容種別
- その他
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000229206