複数資料を確認いたしましたが、ご質問の事実に基づいたおまじないなのかそれとも作者の作り事なのか、判断できる資料を見出すことはできませんでした。以下の資料を中心に確認いたしました。
『受けたもの伝えたいもの』 阪田寛夫/著 日本キリスト教団出版局 2003.9 【914.6/7145N/サカ】
p47-54「桃次郎」の項に
「この名を持った物語の主人公と最初に出逢った小学四年生の夏…」
とあり、
桃次郎のエピソード自体は、青少年キャンプの指導者で、日曜学校の牧師さんであるニシゴリさんからのまた聞きとある。
キャンプ地は「大阪から電車と汽車を乗り継いで行く箕島海岸の松林の中」「一九三五年(昭和一〇年)」
その内容は、
「…ただし肝腎の「桃次郎」は、鬼が島の海辺の大きな松の根っこに腰かけて、ヤスリで自分のツノを削っていた、というだけなのです。なぜかジョンさんの赤ちゃんが風邪ひいた、の歌のメロディーで、ヤスリでツノをすりへらし 人間の子になりたいなと歌いながら削っているのですが、それからどうなったのか、こちらが躍起になって聞くのに、姉は「さあねえ」とか「どうなったかなあ」とか言うばかりです…」
また、「…大体こういうお話には、先行する説話があるもので、まだ調べられないでいますが、先日明治の文学者尾崎紅葉の『鬼桃太郎』(1891年)という桃太郎の後日譚を読んでみてギョッとしました…」とあります。
ちなみに、「桃次郎」に「その学校の校章はまつぼっくりで、学期末にもらう通信簿には「第一に力ある人 第二に力ある人 第三に力ある人」というふしぎな標語が印刷されていた」とあるが、氏の出身小学校は帝塚山学院小学校であり、その学校史2ページには、この標語が掲げられている。
またHPによると「帝塚山学院の「帝」の字を中心に、品格を象徴する松を両側に配した校章。 双葉からたゆみない成長を遂げ、実を結ぶさまを描いて、教育の理念を表現しています。」とあり、実際に松が使われている。
「当時の庄野 貞一校長(主事と呼んだ。初代学院長)執筆になる『時代の要求に基づき徹底せる教育を施すべき帝塚山学院小学部趣意書』には、「力の人を作れ 吾学院の第一の評語は『力の人を作れ』という事です。『力の人』 何といふ勇ましい言葉でせう。力! 力は吾々の理想を表現するに無二の善い言葉です。力の教育! 力とは何か。意志の力、情の力、知の力、躯幹の力ー広い意味の力の漲った強い人物、これこそ吾々が学院の中で鍛へ上げねばならぬ人物なのです。」(大正6年2月20日付)とある。(『庄野貞一先生追想録』)」とある。
『紅葉全集』第2巻 【918.68/101N/2】 の鬼桃太郎には松は出てこず。
『松と日本人』 出雲風土と文化 須山定義 北川泉 共著 清文社 【864/201#】1989.12 p64には、
「平安時代に、京都では、男の子が生まれると、正月の初めの子の日に小山に登って、松の実生の苗を引き抜いて帰り、庭に植えたという。男の子に持って帰らせて植えるのは、子供が強く元気に育つようにとの願いをこめるためである。」とある。
『松』 金井紫雲著 芸艸堂出版部 1946 【658/211/#】 p170-185 年中行事と松 の項に
門松と子の日遊びについて記述がある。上記の風習と関係があるかどうかは書かれていない。子の日に小松を曳き、健康を願う。
『松』 ものと人間の文化史 【210.1/8】 高嶋雄三郎?著 法政大学出版局 1975 478.6
p208~221に松についての伝承があるが、病災をはらう松などの例があるのみで、ずばり松かさをお守りにするという例はない。
『阪田寛夫の世界』 和泉選書 谷悦子/著 和泉書院 2007.3 【910.26/4606N/サカ(2)】
p185-201には桃次郎について触れているが、松かさの記述はない。
『梅花女子大学文学部紀要』 児童文学篇11-15<28-32>【P05/705N】 32巻p57-82 坂田寛夫の幻想的世界 にもなし。
『松』 日本の心と風景 有岡利幸?著 人文書院 1994.7 【653.6/2N/(2)】 にもなし。(p242-246に参考文献一覧あり。)
『民間伝承』【P38/14N】 22巻~連載の「松ぼっくり」中平解 当館所蔵分 特に出ず。
『京都大事典』【031/43】 松 で始まる項目には特に出ず。門松の項に根つきの小松を使うことが書かれている。子の日遊びなし。
『日本の文様』【757.7/1】 14 松 特に出ず。
他に見た文献
『わたしの中の女の歴史』 村山リウ/著 【281/181】
『私の歩いた道』 村山リウ/著 【914.6/1848】
『はなやぐ老い』 村山リウ/著 【215/8509/#】
前述の子供の松の話は見つけられず。
『探して楽しむドングリとまつぼっくり』 平野隆久写真 片桐啓子文 山と渓谷社 【657.8/46N】 記述なし
『親指と霊柩車 まじないの民俗』 常光徹著 歴史民俗博物館振興会 【387/288N】 記述なし
『まじない習俗の文化史』 奥野義雄著 岩田書院 【387/170N】 記述なし
『桃次郎』 坂田寛夫著 楡出版 【913.6/1698N】 質問の元になった図書のようですが記述はなし
『日本民俗文化大系』 4 神と仏 小学館 【382.1/85】 記述なし
『日本児童文学』 日本児童文学者協会 【P90/3】38(2)p48-51 記述なし
『奈良県立民俗博物館研究紀要』 奈良県立民俗博物館 【P38/7N】第18号 p22-29 記述なし
『奈良県立民俗博物館研究紀要』 奈良県立民俗博物館 【P38/7N】第19号 p21-26 記述なし
『大法輪』 大法輪閣 【P18/6N】70(4)p68-122 記述なし
『小波お伽全集』 第11巻 伝説篇 本の友社 【918/21N/11】p267-276 記述なし
『探訪神々のふるさと』 第3巻 出雲と瀬戸内の神々 小学館【120/307/#】p135-139 記述なし
『NHK歴史発見』 第8巻 角川書店 【210.08/34N/8(2)】p6-45 記述なし
『週刊神社紀行』 第36巻 吉備津神社 吉備津彦神社 学研 【175.9/185N/36】 記述なし