レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2011/12/18
- 登録日時
- 2012/03/22 02:01
- 更新日時
- 2013/02/01 10:19
- 管理番号
- 6000006341
- 質問
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未解決
ある図書に京都のすき焼きの調理法が特別であると書いてあるが、本当か。
- 回答
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事典類を中心にすき焼き、肉食について調べたが、東西の違いについて言及している資料はあるが、京都という一エリアが特別であるという主旨の記述は見られなかった。調べた資料とその内容については回答プロセスにあり。
- 回答プロセス
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『日本の東西「食」気質』三嶺書房 「地方料理アラカルト」175ページ
「関西型は、脂身で予め肉を焼くことを身上とし、汁の多い煮る状態を好まない傾向がある。調味料をめいめいで加えるので、鍋ごとに味がちがい、やれ甘いの、辛いのと、にぎやかである。関西のすき焼専門店では、店としての味を保つため、サービス係が味を付ける。ところが、このサービス係はかなりの経験を要するし、人件費もたいへんである。そのため、関西風すき焼の店でも割り下を用意し、肉を焼いてからは、この調味液で煮る形をとる店が多くなってきたようだ。」
『たべもの文明考』朝日新聞社 「米食化された『四つ足』」201ページ
「当時の日本人は牛なべやすき焼など、牛肉を野菜といっしょにしょうゆで煮るというしごく日本的な料理法で食べはじめた。」
『全集日本の食文化(異文化との接触と受容)』8雄山閣出版 「文明開化と食物」35ページ
「牛鍋は、もっとも日本人の好みにあった調理法で、古くから行われていた雁鍋や、ももんじやのぼたん鍋などの調理法が用いられたものである。関東で牛鍋が行われていたのに対して、すき焼きは関西の食法で、のちに東京の牛肉店にとりいれられたものである。寛永二十年版の『料理物語』の煮物の部に<中略>あるが、このように鉄鍋を用いていったん脂をしいて肉を焼き、そのあとでたまりを入れて煮る。そこにせりやねぎをなどを加えるという調理法は古くからあったようである。<中略>煮えるまで待つ時間が長いので関西風のすき焼が行われるようになったという説もある。」
『食の百科事典』新人物往来社 「牛鍋とすき焼文化」140ページ
「牛鍋はそもそも関東風の呼び名であり、もちろん鍋料理であるから、汁を沢山入れてじっくりと煮込むのが普通である。まず温まった厚い鍋に肉を入れて炒め、後に、醤油、味醂、砂糖をまぜて水でうすめた割り下地(割下)を入れるのである。元来はあまり野菜などを入れず、ネギを五分切りにしたものだけ少し入れたようである。牛肉の煮込みと言った方が正確かもしれない。
すき焼きとは、関西風の呼び方で、文字通り焼く料理である。まず鍋で肉を炒めた後、順次ネギや白滝などを入れて炒め、最後に関西風の淡口醤油で味付けするのである。味醂、砂糖などは使わない立て前となっているようである。」
同書 「すき焼」269ページ
「脂を溶かした鉄鍋に薄切の牛肉を入れて炒め焼き、割じょう油で味をつけ、ねぎ・焼豆腐・しらたきなどを加えて、煮ながら食べる、鍋料理の一つである。
鶏卵を出すことは関西から始まって、関東でも行われるようになった。
割じょう油は、酒・みりん・しょう油を一・一・二の割合でまぜ、水で二倍に薄めたものを標準にして、好みで変えればよく、さらに砂糖も用いる。」
『京都の食景』淡交社 「すきやき屋」128ページ
「鰻と同様に調理に東と西の違いがあって、五木寛之が『この店のやり方は、最初に鍋に砂糖をざらっと撒いて、その上に肉だけをのせて焼く。一緒にいったカメラマン氏、驚いたような顔で見ていた』(『深夜草紙』〈京都好日〉)と触れているように割下を最初から用いる東京のすきやきのやり方とは異なっている。」
『深夜草紙』part6朝日新聞社 「京都好日」100ページ
「関西のすき焼きは、砂糖をたっぷり使って甘く焼く。関東から東北へと次第にからくなってゆく。前に山形市でごちそうになったすき焼きは、びっくりするほど塩味がきいていた。」
『たべもの日本史総覧』新人物往来社 「牛肉」230ページ
「この時期日本人は牛肉を煮て食べる独特な料理を作り出した。まず牛肉とネギなどの野菜を味噌ないし醤油を入れて煮る牛鍋である。これに対し、魚鳥肉を鋤の刃の上で焼いて食べていた鋤焼をまね、牛肉をまず焼くないし炒めてから野菜、醤油等を加えて煮たのが関西風のスキヤキである。<中略>東京風スキヤキは現在なお割り下を使う点で関西風とは異なる。」
『世界大百科事典』14平凡社 「すきやき」684ページ
「ふつう牛肉や鶏肉にネギ、シュンギク、キノコ類、豆腐、白滝、麩などをとり合わせて、しょうゆ、みりん、酒、砂糖などを合わせた割下を注いで煮て食べる。」
『改訂調理用語辞典』全国調理師養成施設協会 「すきやき」610ページ
「関東と関西では、材料はほとんど同じであるが、食べかた、味つけが異なる。関東では割り下を用いて煮るが、関西では砂糖、しょうゆ、酒を好みの量、鍋に直接加えて煮る。」
『新版総合調理科学事典』光生館 「すきやき」284ページ
「関東と関西では材料は同じであるが作り方が異なり、関東では割り下(しょうゆ、砂糖、みりん、だしを合わせた調味液)で煮るのに対して、関西では肉を焼いてから調味する。」
『ブリタニカ国際大百科事典』3ティビーエス・ブリタニカ 「すき焼」813ページ
「鳥獣肉、特に牛肉の日本独特の調理法として国際的にも有名である。厚手の浅い鍋に牛肉の脂身を溶かして薄く切った牛肉を焼き、すぐに割下と野菜(ねぎ、春菊、白菜など)、しらたき、麩、豆腐などを加え煮ながら、生卵につけて食べる。割下をつくらず直接砂糖、醤油、好みにより酒を入れることもある。<中略>また、薄くすき身した肉を味醂、醤油に浸し鉄鍋で両面を焼いて大根おろし、さらしねぎなどの薬味をつけて食べる方法もあり、鍋の代りに鋤で焼いたのが名称の由来であるともいわれている。」
『図説明治事物起源事典』柏書房 「牛鍋」286ページ
「広く受け入れられた大きな理由として、牛鍋の調理法があげられよう。すなわち、牛鍋は醤油や砂糖で煮るという、きわめて日本的な調理法であり、これが庶民の口にピッタリ合っていたのである。」
『全集日本の食文化(魚・野菜・肉)』4雄山閣出版 「肉ジャガとスキヤキ」253ページ
「その河上が東京に移って暮らすなかで、関西風の『鋤焼』ではなく割り下を使う関東風の『牛鍋』になじんでいき、鋤焼を牛鍋とよぶようになる。」
『日本料理語源集』光琳社出版 「ぎゅうすき」「ぎゅうなべ」188ページ「すきやき」355ページ
「牛すきとは牡丹鍋からヒントを得たもので、みそを使うのは肉の臭味を消し肉質を柔らかくするためで、鍋の深さは一・五cmくらいで非常にあさく、<中略>タレは沢山入れられませんから自然焼くと煮るを兼ねた調理法になります。」
『舶来事物起源事典』名著普及会 「牛鍋屋」86ページ(豊中市未所蔵、八尾市より借用)
「牛鍋は牛肉を焼くのではなく煮るという点できわめて日本的な調理法である。味噌、ついで醤油などアミノ酸と砂糖による味つけもまた非西洋的な調理法である。」
『来し方ゆく末和風たべもの事典』農山漁村文化協会 「すきやき」212ページ(豊中市未所蔵、茨木市より借用)
「現在では、すきやきの一般的な調理法は、脂で牛肉を焼き、これに割下を入れ、ねぎなどを加えて煮るやり方となっている。いわば、焼肉料理と鍋料理を折衷した形である。」
『うまい肉の科学』ソフトバンククリエイティブ 「牛鍋とすき焼き」74ページ
「『すき焼き』は、関東と関西ではスタイルが違っていて、関東では割り下に具材を浸して煮る料理(牛鍋スタイル)、関西では醤油・砂糖と共に具材を焼く料理(焼肉スタイル)である。」
- 事前調査事項
- NDC
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- 衣食住の習俗 (383 9版)
- 食品.料理 (596 9版)
- 参考資料
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- 『日本の東西「食」気質』山口 米子/著(三嶺書房)
- 『たべもの文明考』大塚 滋/著(朝日新聞社)
- 『全集日本の食文化 第8巻 異文化との接触と受容』芳賀 登/監修(雄山閣出版)
- 『食の百科事典』食文化研究所/編(新人物往来社)
- 『京都の食景 作家が描いた京都の風味』菊池 昌治/著(淡交社)
- 『世界大百科事典14』(平凡社)
- 『改訂 調理用語辞典』全国調理師養成施設協会/編(全国調理師養成施設協会)
- 『新版 総合調理科学事典』日本調理科学会/編 (光生館)
- 『ブリタニカ国際大百科事典 3 エキ-カイヨ』TBSブリタニカ/編
- 『図説明治事物起源事典』湯本 豪一/著(柏書房)
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『全集日本の食文化 第4巻 魚・野菜・肉』芳賀 登/監修
(雄山閣出版) - 『日本料理語源集』中村 幸平/著(光琳社出版)
- 『うまい肉の科学』肉食研究会/著(ソフトバンククリエイティブ)
- キーワード
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- すき焼き
- 料理
- 牛鍋
- 京都
- 食文化
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 一般
- 登録番号
- 1000104086