レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2016/03/24
- 登録日時
- 2016/12/04 00:30
- 更新日時
- 2016/12/04 09:17
- 管理番号
- 千県中参考-2016-26
- 質問
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解決
戦国時代、敵将などを討ち取った際に、自分の手柄の証としてその首を持ち帰ることがあったらしいが、これがいつ頃、どのようにして始まったのか知りたい。
- 回答
-
下記資料によると、敵の首を取って検証する慣習は、古くは平安時代末から鎌倉時代にかけての文献に記録されているようです。ただし、いずれも具体的に始まった時期については言及していません。
【資料1】『時代考証日本合戦図典』(笹間良彦著 雄山閣出版 1997)
p.30「首実検」
「討ち取った敵の首の検証が行われる。これを首実検といい古くより行われている。『泰衡征伐物語』『吾妻鏡』『梅松論』『建内記』をはじめとし、武家の記録にしばしば記されて」いるとのことです。
【資料2】『図説日本戦陣作法事典』(笹間良彦著 柏書房 2000)
p.264「首実検」
「首実検が公式に記録に見られるのは『吾妻鏡』で、源義経の首を和田義盛と梶原景時が実検するように命ぜられ」たものとしています。
【資料3】『日本史大事典 2』(平凡社 1993)
p.1043「首実検」
「保元物語」や「平治物語」、「源平盛衰記」、「吾妻鏡」、「太平記」の記述を引用して説明しています。
また、敵の首を取ることの意味・由来については、軍神への生贄や狩猟民としての習俗という観点から考察する資料がありました。
【資料4】佐伯真一「「軍神」(いくさがみ)考」(『国立歴史民俗博物館研究報告』182号)p.7~28
各種の軍記物語を引用して、首をまつる対象としての軍神について述べています。また「血祭り」との関係についても考察しています。
【資料5】久保勇「軍記と絵巻と寺院 初期軍記における「斬首」の表現をめぐって」(『人文社会科学研究科研究プロジェクト報告書』134集)p.25~51
特にp.29では、斬首をめぐる様々な論点についてそれぞれの研究史を概観しています。
【資料6】佐伯真一「盛俊の耳と首 延慶本『平家物語』「越中前司盛俊被討事」私注」(『青山語文』33巻)p.96~107
p.105「首を取るという行為の起源としては、近年、軍神に捧げる生贄として武士の狩猟民としての起源に関連づける議論が有力である」としています。
【資料7】『戦場の精神史』(NHKブックス 佐伯真一著 日本放送出版協会 2004)
p.102「その起源は、軍神への生け贄、狩猟民としての習俗などといったところにさかのぼるかもしれない」と述べています。
【資料8】『武士と文士の中世史』(五味文彦著 東京大学出版会 1992)
p.8「首のフェチシズム」と題して、「首を切り集め晒す行為は、(中略)狩猟民が山の神に鹿の首を供犠として捧げる風習との共通性も指摘できよう」と述べています。
【資料9】黒田日出男「首を懸ける」(『月刊百科』310号)p.13~20
軍記物語や絵巻物を対象に検討し、「中世武士達は、首実検などの戦功証明のために敵の首を掻き切っただけでなく、もう一面として軍神への生贄として生首を欲した」と述べています。
(インターネット最終アクセス:2016年9月28日)
- 回答プロセス
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まず、インターネット検索により、首を取ることに関連するキーワードを得ました。
ウィキペディア「首実検」(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A6%96%E5%AE%9F%E6%A4%9C)
朝日新聞社[ほか]「コトバンク」(https://kotobank.jp/)における見出し語:「首実検」(くびじっけん)、「首級」(しゅきゅう)、「首功」(しゅこう)
日本史、特に戦国時代の辞典類で上記のキーワードを確認して、【資料1】~【資料3】を見つけました。
自館の蔵書検索システムで件名「合戦」や全項目「首実検」で検索して関連資料にあたりましたが、次の2点からは具体的な情報を得られませんでした。
『刀と首取り 戦国合戦異説』(平凡社新書 鈴木真哉著 平凡社 2000)
『歴史読本』(19巻3号 新人物往来社 特集:首取り戦国史)
続いてCiNii Articlesの全文検索で、関連するキーワード(「首実検」や「首取り」)を検索して、【資料4】~【資料6】にあたりました。併せて、それらの論文の脚注に挙げられていた参考文献から【資料7】~【資料9】を参照しました。
- 事前調査事項
- NDC
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- 日本史 (210 9版)
- 参考資料
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- 【資料1】『時代考証日本合戦図典』(笹間良彦著 雄山閣出版 1997)(0105322627)
- 【資料2】『図説日本戦陣作法事典』(笹間良彦著 柏書房 2000)(0105555001)
- 【資料3】『日本史大事典 2』(平凡社 1993)(9102889528)
- 【資料4】佐伯真一「「軍神」(いくさがみ)考」(『国立歴史民俗博物館研究報告』182号 2014.1)p.7~28(オープンアクセス)(http://ci.nii.ac.jp/naid/120005749029)
- 【資料5】久保勇「軍記と絵巻と寺院 初期軍記における「斬首」の表現をめぐって」(『人文社会科学研究科研究プロジェクト報告書』134集 千葉大学大学院人文社会科学研究科 2007)p.25~51(オープンアクセス)(http://jairo.nii.ac.jp/0007/00005593)
- 【資料6】佐伯真一「盛俊の耳と首 延慶本『平家物語』「越中前司盛俊被討事」私注」(『青山語文』33巻 2003.3)p.96~107(オープンアクセス)(http://ci.nii.ac.jp/naid/110006237208)
- 【資料7】『戦場の精神史』(NHKブックス 佐伯真一著 日本放送出版協会 2004)(2101886396)
- 【資料8】『武士と文士の中世史』(五味文彦著 東京大学出版会 1992)(9101949550)
- 【資料9】黒田日出男「首を懸ける」(『月刊百科』310号 1988.8)p.13~20(0503144821)
- キーワード
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- 日本-歴史(ニホン-レキシ)
- 合戦(カッセン)
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 一般
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000200803