レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2018/01/31
- 登録日時
- 2018/03/24 00:30
- 更新日時
- 2018/03/24 00:30
- 管理番号
- 6001030024
- 質問
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解決
『影の病』という作品について知りたい。芥川龍之介の著作であると聞いた。
- 回答
-
以下の調査資料によりますと、結論としては、芥川龍之介の著作として『影の病』という作品はありませんでした。ただ、芥川龍之介が学生時代に怪談や奇談を蒐集し書き留めたノート『椒図志異』の中に、江戸時代の女流文学者・只野真葛が東北地方の奇談を集めた『奥州波奈志』に収録されている「影の病」が書き写されています。『椒図志異』の「影の病」は只野真葛のものから最後の四行ほどの内容が省かれており、その他にも若干、表現上の差異が見られます。しかし、『芥川龍之介全集 第23巻』(岩波書店)収録の「影の病」の末尾に「奥州波奈志(唯野真葛女著 (仙台の医工藤氏の女也)」と出典が書かれており、芥川の創作した著作物とはいえないようです。
以下、調査した資料です。
■『椒図志異』について
・『芥川竜之介大事典』(志村有弘/編 勉誠出版 2002.7)p.507
「椒図志異」の解説に「一高から帝国大学時代に、書かれたノート。【収録】生前未発表。全集第二三巻収録。【内容】昭和三十年(一九五五)六月、葛巻義敏編で、ひまわり社から写真復刻版(三〇〇〇部)で初めて公にされた。更に、同年八月刊行中だった小型版『芥川龍之介全集』第一九巻に収められた。写真復刻版によればノートの著名は「芥川龍之介」となっている。また、その「解説」で、葛巻は、「これらのノートは、芥川龍之介が旧制高校から大学時代にかけて、先輩、知己、友人、家族、その他等から聞き、また読書などによって識り得た『妖怪』談等の類を分類し、清書したものである」としている。」とあります。
・『芥川竜之介新辞典』(関口安義/編 翰林書房 2003.12)p.295
こちらにも「椒図志異」の解説があります。
■『影の病』について
・『幻想文学、近代の魔界へ(ナイトメア叢書)』(一柳廣孝/編著 青弓社 2006.5)p.233
「芥川の学生時代のノート『椒図志異』には「影の病」(只野真葛)の書き写しがあり」とあります。
・『芥川龍之介全集 第23巻』芥川竜之介/著 岩波書店 1998.1)
p.90-132まで「椒図志異」が掲載されており、p.133-139まで「椒図志異を含むノート」が掲載されています。その中で、p.132に「影の病」が載っていますが、その末尾に「奥州波奈志(唯野真葛女著 (仙台の医工藤氏の女也)」と記されています。
参考までに、もとになった只野真葛の「影の病」は以下の資料に収録されています。
・『徳川時代女流文学麗女小説集 下』(荒木田麗女/著 1915)
p.34に掲載されています。
※この資料は、国立国会図書館デジタルコレクションでインターネット公開されています。
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/945488(2018/1/31現在)
該当のページはコマ番号409です。
・『女流文学全集 第3巻』(古谷知新/編 文芸書院 1919)
p.455に掲載されています。
※この資料も国立国会図書館デジタルコレクションでインターネット公開されています。
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/957685(2018/1/31現在)
p.455はコマ番号236です。
[事例作成日:2018年1月31日]
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
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- 日本文学 (910 8版)
- 参考資料
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- 芥川竜之介大事典 志村/有弘∥編 勉誠出版 2002.7 (507)
- 芥川竜之介新辞典 関口/安義∥編 翰林書房 2003.12 (295)
- 幻想文学、近代の魔界へ 一柳/廣孝∥編著 青弓社 2006.5 (233)
- 芥川龍之介全集 第23巻 芥川/竜之介∥著 岩波書店 1998.1 (283)
- 徳川時代女流文学麗女小説集 下 荒木田/麗女∥著 1915 (34)
- http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/945488 (『徳川時代女流文学麗女小説集 下』(荒木田麗女/著 1915))
- http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/957685 (『女流文学全集 第3巻』(古谷知新/編 文芸書院 1919))
- キーワード
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 書誌事項調査
- 内容種別
- 質問者区分
- 個人
- 登録番号
- 1000233070