レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2016年10月29日
- 登録日時
- 2016/10/29 14:20
- 更新日時
- 2017/03/27 12:45
- 提供館
- 京都市図書館 (2210023)
- 管理番号
- 右中-郷土-94
- 質問
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解決
江戸時代の魚屋奥八兵衛(おくはちべえ)について,住んでいた場所やどんな人物だったかを詳しく知りたい。
- 回答
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奥八兵衛は江戸時代前期頃に禁中に出入りする,河内屋(かわちや)という魚屋でした。
後光明天皇崩御の際に前例に倣って火葬するというのを聞き,「儒教重視の天皇の遺志に逆らい火葬するなど,不忠不義だ」と訴えて回り,ついには土葬を認めさせたとされる人物です。
河内屋は京都市中京区丸太町通富小路東入にあったとされ,奥八兵衛の墓所は京都市左京区仁王門通東大路西入,大光寺内にあります。
また,奥八兵衛の彰徳碑が,京都市東山区新橋通大和大路東入,知恩院内にあります。
- 回答プロセス
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●“奥八兵衛”で当館所蔵資料,レファレンス協同データベース,google booksを検索するも該当資料が見当たらず。
●オンラインデータベース「ジャパンナレッジlib」内の「日本人名大辞典」で,“奥八兵衛”を検索。
“奥八兵衛 ?−1669 江戸時代前期の商人。京都で河内屋と称し,宮中に魚をおさめていた。承応(じょうおう)3年後光明天皇死去の際,天皇が生前火葬は人の道ではないといっていたことを理由に土葬にすることを朝廷に要請し,認められた。以後,天皇の埋葬は土葬となった。寛文9年1月23日死去。”
●天皇の葬送の変革をした人物ということがわかったので,“天皇 葬儀”をキーワードに当館所蔵資料を検索。
【資料1】p196 「火葬を取りやめ土葬へ転換」の項
“天皇陵の研究者上野竹次郎が大正末に著した『山陵』【資料2】に異説がある。禁中に出入りしていた魚屋の八兵衛という男がいた。この八兵衛天皇が生前土葬を望んでいたのに長年の慣例で火葬にされると聞いて一念発起。「下々のものでも遺志が尊重されて葬られるのに,まして天皇の意に反して玉体を火葬にするのは不忠のきわみ」と各所に訴えて回った。このことが後水尾天皇の耳にも達して,火葬が取りやめになったのだという。明治になって故八兵衛はその忠誠心を称えられ,士分に列せられた。
実際は江戸幕府が統治政策として儒教を重視しており,その影響もあって後光明天皇も儒学に傾倒していた。その為,儒教式の土葬を要望し,その遺志が尊重されたという説が有効だ。”
【資料2】p304 「後光明天皇陵」の項
奥八兵衛について記述あり。
●天皇関連の資料を確認。【資料3・4】
【資料3】p248 「後光明天皇」の項
“今まで天皇は火葬が習慣であったが,このとき,宮中出入りの魚屋八兵衛が荼毘にするには忍びないとして奔走し,土葬にしたという逸話がある。”
【資料4】p18 「歴代葬送の沿革」の項
“魚屋八兵衛の献身的な運動で後光明は土葬に復した。”
p134 「後光明天皇」の項
“葬送はこの頃の例により火葬の筈であったが,常に御用を勤めていた魚屋八兵衛という者,玉体を火化するはもったいなきこと是に過ぎる不忠はない,とて仙洞女院をはじめ権門勢家泉涌寺へも立ち入りいろいろに申し入れをしたので,終には叡聞にも達し火葬の儀は停止された。”
●“後光明天皇”で当館所蔵資料を検索。
【資料5】p438 「正保遺事」の項
奥八兵衞の功績について詳しい記述あり。
●国立国会図書館サーチで“奥八兵衛”を検索,国立国会デジタルコレクションに【資料6】あり。
【資料6】p8 「奧八兵衞傳」の項
“丸太町富小路東屋号河内屋”と住所の記述あり。
●国立国会図書館デジタルコレクションで“魚屋 八兵衛”を検索。【資料7~10】奥八兵衛の功績について記述あり。
●【資料10】は当館に所蔵あり。
p178 「魚屋八兵衛」の項
奥八兵衛の功績,住所,墓所,彰徳碑について詳しい記述あり。
- 事前調査事項
- NDC
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- 系譜.家史.皇室 (288 9版)
- 日本 (281 9版)
- 日本史 (210 9版)
- 参考資料
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【資料1】『天皇と葬儀 日本人の死生観』(井上 亮/著 新潮社 2013)
p196 火葬を取りやめ土葬へ転換 -
【資料2】『山陵』(上野 竹次郎/編 名著出版 1989)
p304 後光明天皇陵 -
【資料3】『面白いほどよくわかる天皇と日本史』(阿部 正路/監修 日本文芸社 2008)
p248 後光明天皇 -
【資料4】『皇陵記』(熊内茂雄/編集 熊内茂雄 1992)
p18 歴代葬送の沿革 -
【資料5】『天皇皇族実録 107 後光明天皇実録』(藤井 讓治/監修・解説 ゆまに書房 2005)
p438 正保遺事 -
【資料6】『美也子新誌 : 絵入人情美也子新誌(27)』(駸々堂 1883-04)
p8 奧八兵衞傳 -
【資料7】『日蓮主義百話』(青村道人 統一閣 1921)
p32 -
【資料8】『愛媛県先哲偉人叢書. 第1巻』(愛媛県教育会 1933)
p82 -
【資料9】『教育勅語服膺の道 : 国民読本』(堂屋敷竹次郎/著 教文社 1941)
p33 -
【資料10】『新京都かくれた史跡100選』(京都新聞社 1972)
p178 魚屋八兵衛
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【資料1】『天皇と葬儀 日本人の死生観』(井上 亮/著 新潮社 2013)
- キーワード
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- 奥八兵衛
- 魚屋八兵衛
- 後光明天皇
- 土葬
- 葬送
- 火葬
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000198915