レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2014年03月05日
- 登録日時
- 2014/04/27 11:53
- 更新日時
- 2014/05/03 10:49
- 管理番号
- 相橋-H26-001
- 質問
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解決
「おざなり」と「なおざり」という言葉があり、どちらも「いい加減なこと」を示すようだが、使い分けの基準はあるのか知りたい。
- 回答
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混同しやすいが、「おざなり」と「なおざり」は意味を異にする。
「おざなり」は、意識的にいい加減な発言・行動で、その場を取り繕うとすること。
いい加減な取り組みであれ、行為が伴う。
「なおざり」は、注意力が欠落しており、意識せずおろそかな結果になってしまうこと。
行為そのものがなされていない。
- 回答プロセス
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国語辞典や語源辞典のある棚をブラウジングした結果、次の資料が見つかった。
『新明解語源辞典』 小松寿雄/編 三省堂 2011 (自館請求記号:R812)
p165に「おざなり」の項目があり、記述には、「誠意がなくいい加減なこと。(中略)その雰囲気の流れのままというのが「お座なり」のもとの意味だろう。そのままで努力しないというところから、現在の意味になったものと考えられる。」とある。
p682に「なおざり[等閑]」の項目があり、記述には「いい加減。(中略)「なお」が「なほ(直)」であることについては諸説一致するが、広範については意見が分かれる。(中略)漢字表記「等閑」は「なおざり」の意味の漢語である。」とある。
『似た言葉使い分け辞典』 類語研究会/編 創拓社 1991 (自館請求記号:R813.5)
p368-369に「なおざり」の項目があり、「なおざりは、そのことが大切なことと知っていて、当然払わねばならない注意を払わず、打ち捨てていい加減にしておくことを言う。」とある。
『勘違いことばの辞典』 西谷裕子/編 東京堂出版 2006 (自館請求記号:R810)
p9に「おざなり」の項目があり、「「おざなり(御座なり)」は、その場限り、一時しのぎ、間に合わせ、といった意味。「なおざり」と混同して、おろそかにするの意味に用いるのは間違い。ちなみに、「なおざり」は当て字で「等閑」と書く。」とある。
『研究社日本語口語表現辞典』 研究社 2013 (自館請求記号:R817)
p160に「おざなり【御座なり】」の項目がある。「≪解説≫」の項目には「元々は、その場の雰囲気の流れのままという意味である。ここから、意識的に努力などはせず、誠意がなく、いい加減に物事を済ませる場合に使用されるようになった。「なおざり(等閑)」と混同されやすいが、こちらは、無意識に物事に注意を払わない様子で、通常、放っておくことを指す。おもに中高年層が使用する。」とある。
①『記者ハンドブック 第12版』 共同通信社/編 共同通信社 2010 (自館請求記号:R816)
p176に「おざなり(御座なり・御座形)」の項目があり、「おざなり、おざなりな仕事・答弁、おざなりを言う。[注]「すべきことをせず、おろそかにする」意味の「なおざり」との違いに注意。」とある。
p358に「なおざり(等閑)」の項目があり、「なおざり、規則をなおざりにする、なおざりな態度[注]「その場しのぎでやる」意味の「おざなり」との違いに注意。」とある。
②『間違いやすい言葉の事典』 小学館 1997 (自館請求記号:813)
p108に「なおざり」の項目があり、間違いの一例として「× なおざりの改革案でお茶を濁す」とある。また、「「なおざり」はまともに取り組もうとせず、処理すべきことを放っておくこと。「なおざり」は、その場だけの間に合わせでいいかげんに済ませること。例文の場合は、中身はともかく一応改革案を作り上げたのだから、「なおざり」ではなく「おざなり」になる。
③『間違いやすい日本語の本』 日本博学倶楽部/著 PHP研究所 2002 (自館請求記号:B810.4)
p212に「「おざなり」と「なおざり」ふたつの語の違いを説明する記述があり、「おざなりな治療」と「治療をおざなりにする」を例にとり解説しており、「(中略)「おざなり」は不十分ながら行為が伴っているが、「なおざり」では行為そのものがなされていないというわけだ。」とある。
『研究社日本語表現活用辞典』 研究社 2004 (請求記号:R816)
該当する言葉に関する記述はなかった。
『日本語 語感の辞典』 中村明/著 岩波書店 2010 (自館請求記号:R813.1)
ここまでの調査で確認した資料以上には、詳しく記述されていなかった。
コトバンク(http://kotobank.jp/ 2014/03/05 最終確認)でキーワード“おざなり”で検索した結果、次の情報がヒットした。
“おざなり”
「おざなり」と「なおざり」は意味が近く、共にいい加減な言動を指していうが、「おざなり」は「御座成り」と書くように、当座の間に合わせの意味であり、自分で意識的にいいかげんな言動をしてその場を逃れようとすること。一方「なおざり」は、注意深くないことであり、自分では意識せずにおろそかな結果になってしまう言動にも用いる。だから「忙しくて仕事をなおざりにしてしまっていた」なら許される可能性があるが、「仕事をおざなりにした」では、わざとその場逃れの仕事ぶりを発揮していたことになる。
なお、以上の情報の出典は次の資料である旨の記述があった。
④『とっさの日本語便利帳』 朝日新聞社 2003 (自館請求記号:R813)
p54-55に「おざなり」の項目があり、コトバンクの検索でヒットした情報と同じ記述がある。
検索エンジンGoogle(http://www.google.co.jp/ 2014/03/05 最終確認)でキーワード“おざなり なおざり”で検索した結果、次のウェブサイトがヒットした。
NHK アナウンスルーム(http://www.nhk.or.jp/kininaru-blog/55147.html 2014/03/05 最終確認)
このページには、「おざなり」と「なおざり」のニュアンスの違いの解説があり、「~(前略)『おざなり』はいい加減でも"何かする"。『なおざり』はいい加減で"何もしない"。この点が違うのです。~(以下略)」とある。
- 事前調査事項
- NDC
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- 辞典 (813 9版)
- 参考資料
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- 『新明解語源辞典』 小松寿雄/編 三省堂 2011 (自館請求記号:R812)
- 『似た言葉使い分け辞典』 類語研究会/編 創拓社 1991 (自館請求記号:R813.5)
- 『勘違いことばの辞典』 西谷裕子/編 東京堂出版 2006 (自館請求記号:R810)
- 『研究社日本語口語表現辞典』 研究社 2013 (自館請求記号:R817)
- 『記者ハンドブック 第12版』 共同通信社/編 共同通信社 2010 (自館請求記号:R816)
- 『間違いやすい言葉の事典』 小学館 1997 (自館請求記号:813)
- 『とっさの日本語便利帳』 朝日新聞社 2003 (自館請求記号:R813)
- キーワード
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- おざなり
- なおざり
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 言葉
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000152726