レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2016年04月26日
- 登録日時
- 2016/08/23 10:59
- 更新日時
- 2018/09/11 12:53
- 管理番号
- 中野0588
- 質問
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解決
「雨に悩める海棠」という語句を本で見かけた。この意味を知りたい。インターネットでは何件か出てくるが、本で示したものがほしい。
- 回答
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①【資料1】から【資料6】には「雨に悩める」は載っておらず、類似の言葉として「海棠の雨に濡れたる風情」や「雨にしおれし海棠の花」の記載があった。意味は美人のうちしおれた姿がなまめかしいことの様子や、憂いを含んだ美女のこととある。
【資料1】『広辞苑』(R813.1/コ)p.468「海棠の雨に濡れたる風情」
【資料2】『大辞林』(R813.1/ダ)p.417「海棠の雨に濡れたる風情」
【資料3】『日本国語大辞典』第1巻(R813.1/ニ/1)p.567「雨にしおれし海棠の花」
【資料4】『日本国語大辞典』第3巻(R813.1/ニ/3)p.251「かいどうの雨に濡れたる(帯たる)風情」
【資料5】『故事俗信ことわざ大辞典』(R388.8/コ)p.53「雨にしおれし海棠の花」
【資料6】『故事ことわざ辞典』(R813.4/ス)p.325「海棠の雨に濡れたる風情」
②【資料4】によると、出典は平賀源内著「神霊矢口の渡し」の「見ずしらずのわたし迄、いかいお世話と計りにて、しほるる姿、海棠の雨をおびたる風情」とある。他にも【資料5】では出典として、式亭三馬の「浮世床」には「そりゃあ浄瑠璃の文句にもあるわさ。雨にしほれし海棠の花の、アア、何とか云った」という記述があるが、【資料6】によるとこの「浄瑠璃の文句」というのは「神霊矢口の渡し」を指していると思われる。
【資料7】『新編日本古典文学全集 80 洒落本 滑稽本 人情本』(918/シ/80)p.324
【資料8】『日本古典文学大系 55 風来山人集』(918/ニ/55)p.375
③インターネットで「雨に悩める海棠」を検索した結果、幸田露伴の「花のいろいろ」、小津安二郎監督作「秋日和」劇中の台詞、講談「伊達誠忠録」「天保六歌撰」で、「雨に悩める海棠」という言葉を使っていることがわかった。【資料10】の脚注では「美人の打ちしおれた様を形容する常套句」と解説されている。意味としては「海棠の雨に濡れたる風情」とほぼ同じであることがわかった。
【資料9】『日本の名随筆 1花』(914.68/ニ/1) p.222「…雨に悩める、露に浥ほへる、いづれ艶なるおもむきならぬは無し。」
【資料10】『小津安二郎作品集 4』(912.7/オズ/4)p.255「…あんなのを言うんだね、雨に悩める海棠って」
【資料11】『定本講談名作全集 第六巻』(913.7/テ/6)p.39「高尾只一人、愁然として綱宗の傍に坐してゐるが、其風情は雨に惱む海棠のやう」
【資料12】『講談人情咄集 新日本古典文学大系明治編7』(918/シ/7)p.40「雨に悩める海棠の如く、露を含める寒紅梅、鴬の吹雪に悩むの風情とて…」
④補足
楊貴妃を例える時に「海棠の眠り未だ足らず」という言葉がある。辞典類だとこちらが載っていることが多い。中国の故事で、酒に酔った美女が、眠そうな様子の艶な様子という意味。
【資料13】『三省堂中国故事成語辞典』(R823/サ)p.112まだ眠り足りずに起きたときのなまめかしい姿。「海棠」はここでは美女のたとえ(冷斎夜話・詩出本処)
【資料14】『大人の園芸 庭木花木果樹』(627.7/オ)p.176「楊貴妃の眠る姿の花」中国の唐の玄宗皇帝が酔って眠る楊貴妃をハナカイドウにたとえた
【資料15】『現代俳句歳時記辞典』(911.30/ゲ)p.61「中国の故事に由来して、雨に濡れた海棠を「眠れる花」と形容」
【資料16】『大活字 ことわざ辞典』(388.8/ヤ)p.134「海棠の眠り未だ足らず」酒に酔った美女が、眠そうな様子の艶な容姿。
【資料17】『中国故事たとえ辞典』(R824/チ)p.29「海棠睡り未だ足らず」海棠は風姿綽約(姿がしなやかで優しい)にして女子のごとし
- 回答プロセス
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①辞典類にあたったが「雨に悩める海棠」という語句は見当たらず。
【資料1】『広辞苑』(R813.1/コ)p.468「海棠の雨に濡れたる風情」美人のうちしおれた姿がなまめかしいことの形容
【資料2】『大辞林』(R813.1/ダ)p.417「海棠の雨に濡れたる風情」海棠の雨を帯たる風情とも。美人のうちしおれた様子
【資料3】『日本国語大辞典』第1巻(R813.1/ニ/1)p.567「雨にしおれし海棠の花」憂いを含んだ美女の形容
【資料4】『日本国語大辞典』第3巻(R813.1/ニ/3)p.251「かいどうの雨に濡れたる(帯たる)風情」
【資料5】『故事俗信ことわざ大辞典』(R388.8/コ)p.53「雨にしおれし海棠の花」憂いを含んだ美人のさま。出典は、滑稽本・浮世床二・上
【資料6】『故事ことわざ辞典』(R813.4/ス)p.325「海棠の雨に濡れたる風情」あでやかな美人が憂いに打ちしおれているさま。「神霊矢口の渡し」から引用。
類似で「海棠の睡り未だ足らず」という言葉もあり。海棠の花にたとえて、美人が酔って寝た後の、まだ眠り足りないなまめかしい美しさ(冷斎夜話)
②【資料】辞典に出ていた「海棠の雨に濡れたる風情」の出典にあたる。
【資料7】『新編日本古典文学全集 80 洒落本 滑稽本 人情本』(918/シ/80)「浮世床」式亭三馬/著p.324「そりゃあ浄瑠璃の文句にもあるわさ。雨にしほれし海棠の花の、アア、何とか云った」注釈:憂いを含んだ美人の形容
【資料8】『日本古典文学大系 55 風来山人集』(918/ニ/55)「神霊矢口の渡し」平賀源内/著 p.375「見ずしらずのわたし迄、いかいお世話と計りにて、しほるる姿、海棠の雨をおびたる風情」
③インターネットで「雨に悩める海棠」を検索
・幸田露伴の「花のいろいろ」で「雨に悩める」という形容を使っている。
【資料9】『日本の名随筆 1花』(914.68/ニ/1)p.222 「…雨に悩める、露に浥ほへる、いづれ艶なるおもむきならぬは無し。」幸田露伴が海棠を説明した文章の中で、「雨に悩める」という形容を使っている。
・小津安二郎「秋日和」劇中の台詞で出てくる。(昭和45年公開)
【資料10】『小津安二郎作品集 4』(912.7/オズ/4)
p.255「・・・あんなのを言うんだね、雨に悩める海棠って」
・西尾麟慶「伊達誠忠録」(明治)
【資料11】『定本講談名作全集 第六巻』(913.7/テ/6)
p.39「高尾只一人、愁然として綱宗の傍に坐してゐるが、其風情は雨に惱む海棠のやう」とある
・二代目松林伯円「天保六歌撰」(明治25年)
【資料12】『講談人情咄集 新日本古典文学大系明治編7』(918/シ/7)
p.40「雨に悩める海棠の如く、露を含める寒紅梅、鴬の吹雪に悩むの風情とて…」脚注で「美人の打ちしおれた様を形容する常套句」とあり。
p.473補遺83「海棠は「垂糸海棠」のことで唐土舶来、詩人の賞美する花。「雨中海棠」は漢詩の題ともなる。丈余に達するほどに成長する落葉樹で、三月ほんのりと紅い五弁の花を長い柄の先に咲かせるので、美人がうつむいている風情があり、楊貴妃と結び付けられる。」
④「海棠の睡り未だ足らず」について
【資料13】『三省堂中国故事成語辞典』(R823/サ)p.112まだ眠り足りずに起きたときのなまめかしい姿。「海棠」はここでは美女のたとえ(冷斎夜話・詩出本処)
【資料14】『大人の園芸 庭木花木果樹』(627.7/オ)p.176「楊貴妃の眠る姿の花」中国の唐の玄宗皇帝が酔って眠る楊貴妃をハナカイドウにたとえた
【資料15】『現代俳句 歳時記辞典』(911.30/ゲ)p.61「中国の故事に由来して、雨に濡れた海棠を「眠れる花」と形容」
【資料16】『大活字 ことわざ辞典』(388.8/ヤ)p.134「海棠の眠り未だ足らず」酒に酔った美女が、眠そうな様子の艶な容姿。
【資料17】『中国故事たとえ辞典』(R824/チ)p.29「海棠睡り未だ足らず」海棠は風姿綽約(姿がしなやかで優しい)にして女子のごとし
- 事前調査事項
- NDC
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- 辞典 (813)
- 参考資料
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- キーワード
-
- 海棠
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 内容種別
- 言葉
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000196285