レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2013/04/24
- 登録日時
- 2013/12/26 00:30
- 更新日時
- 2013/12/27 18:13
- 管理番号
- 横浜市中央2272
- 質問
-
解決
国宝「十便十宜図」は明末清初の劇作家李漁の詩句を元に
池大雅と与謝蕪村が絵を寄せたものです。
李漁の詩は、もともと「十便十ニ宜詩」だったようですが、
ニつの詩句は削除されてしまったのでしょうか。
- 回答
-
「十便十二宜」はもともと「十宜」しかなかったようです。
横浜市立図書館では「十便十二宜」の原詩の所蔵はありませんが、
インターネット上で閲覧することが可能です。
「Google Books 笠翁一家言全集: 笠翁詩集, 第 2 巻 著者: 李漁 (http://books.google.co.jp/books?id=OOtRAAAAcAAJ&hl=ja&pg=PT519#v=onepage&q&f=false)
ページの左側にある書名・著者名の下の検索枠に「伊園十便」と入力すると、
該当部分を読むことができます。
なお、この資料でも「十二宜」となっていますが、「十宜」しか掲載されていません。
1 李漁について
まず李漁について確認しました。
(1)『中国学芸大事典』 近藤春雄/著 大修館書店 1978.10
p.794に「りぎょ 李漁」の項があり、字が嫡凡、号が笠翁であることがわかりました。
また、「李漁と十便十宜詩 神田喜一郎・古原宏伸(十便十宜画冊 筑摩書房複製)」が
紹介されていますが、当館では所蔵していませんでした。
(2)『和漢詩歌作家辞典』森忠重/著 みづほ出版 1972
p.846に「李漁 りぎょ」の項があり、「字は笠翁、号は湖上笠翁」とありますが、
十便十宜についての情報はありませんでした。
(3)『全訳中国文学大系 第1集 第23巻』東洋文化協会 1958
巻末の「覚世名言十二楼解題」のp.1~に作者の略歴などが載っています。
p.11に「李漁の詩・文・詞・随筆を集めたものとしては<笠翁一家言>十六巻がある」と
ありますが、「十便十二宜」についての記載はありませんでした。
2 「十便十宜」について
当館蔵書検索およびCiniiで検索を行い、「十便十宜」の解説資料の中で
李漁の原詩について解説している部分を確認しました。
複数の資料で、原詩も十首しかないことに言及しています。
(1)「「十便十宜画帖」考」 藤田真一
(『国文学 解釈と鑑賞』2001年2月号 p.128~)
p.130
「問題になるのは、「十宜」のほうである。詩集の題には、「伊園十二宜」
(伊園は笠翁の別業)とあって、ふたつおおい数がしめされている。
ところが、実際の詩としては十詩しか収録されていない。十便にあわせるために、
十二を十に削ったわけではないのだ。「十二宜」と題があるのに、原詩からして
すでに十詩のみだった。稿本では十二であったのが、版本の段階で二詩が
落ちたかなどという推測もあるが、これも判然としない」
(2)『生と死の図像学 明治大学人文科学研究所叢書』 林雅彦/編 至文堂 2003.3
「第六章 「十便十宜図」を読む 徳田武」の中に、次のようにあります(p。271)。
「「十便十宜図」は清の李漁(一六一一~七九あるいは八〇)の
『笠翁一家言全集』巻之七に収まる「伊園十便」「伊園十二宜」(実際には
十首しか存しない)各十首、全ニ十首の七絶を、それぞれ絵画化したものである」
(3)「「十便十宜図」を読む」 小林忠 徳田武 (『江戸文学』17号 p.2~)
p.3に次のようにあり、p.4には『笠翁詩集』が写真で掲載されています。
「徳田…李漁の『笠翁詩集』(巻七)に「十便十二宜詩」がありまして、その序に
この詩の成立事情が書いてあります。ここには「伊園十便詩」があり、続いて
「伊園十二宜詩」があります。「十二宜詩」は、実際には十首しか存して
いないので、「十宜詩」です。」
3 李漁の「十便十二宜」が所収されている資料について
1~2の情報を元に、当館蔵書検索で「李漁」「笠翁」「笠翁一家言全集」
「伊園十便」「伊園十二宜」などを検索をしましたが、「十便十二宜」が所収
されている資料は見つかりませんでした。。
『笠翁一家言全集』を山口県立山口図書館、石川県立図書館で所蔵しています。
Google Booksで『笠翁一家言全集』検索をしたところ、次のページで
「伊園十便」「伊園十二宜」が閲覧できることがわかりました。
「Google Books 笠翁一家言全集: 笠翁詩集, 第 2 巻 著者: 李漁」
4 その他の確認資料
(1)『国宝への旅 6 NHKライブラリー』
日本放送出版協会/編 日本放送出版協会 1997
(2)『NHK国宝への旅 第14巻』
NHK取材班/著 日本放送出版協会 1988
(3)「終の栖を得た「十便十宜」」三山進
『芸術新潮 1972年1月号』 p.105~)
(4)「「十便十宜図」を読む」徳田武
『江戸文学 18号』 p.16~
(5)『漢詩大系 第22巻 清詩選』 集英社 1967
(6)『漢詩の事典』 松浦友久/編 大修館書店 1999
(7)『墨場必携明詩選』 林田芳園/編 二玄社 1997
(8)『墨場必携続明詩選』 林田芳園/編 二玄社 1999
(9)『墨場必携明清古詩選』 林田芳園/編 二玄社 1997
(10)『中国古典文学大系 第19巻 宋・元・明・清詩集』 平凡社 1973
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
-
- 伝記 (280 8版)
- 人生訓.教訓 (159 8版)
- 参考資料
- キーワード
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000142412