レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 20030213
- 登録日時
- 2005/02/04 02:12
- 更新日時
- 2005/11/21 14:56
- 管理番号
- G2003F0241
- 質問
-
未解決
GHQ文書「戦後文化財処理調査に関する文書」(文部省学術局発)について、(1)英文および邦文の指令文書、(2)指令文書に対する奈良県からの報告文書に該当するものがあるか。
- 回答
-
照会事項の「文化財処理についての調査依頼」に関する文書(文部省社会教育局 昭和21年5月8日付 第1号)と同名・同日付の文書は見あたりませんでした。終戦直後の期間において文部省から各府県に出された主要な通達・通牒は、文部省『文部時報』
または文部省文書課『終戦教育事務処理提要』に掲載される場合があるので調べましたが、該当の文書は見あたりませんでした。
調査したかぎりで、依頼事項と密接に関連すると思われる資料を以下に紹介します。
(1)GHQからの指令
A.昭和20年11月12日付
(邦文)
○「美術品、記念建造物及び文化的・宗教的遺跡並びに施設の保護に関する方針及措置の件」(昭和20年11月12日総司令部連合国軍最高司令官発 終戦連絡中央事務局経由日本帝国政府宛文書)
『終戦教育事務提要 第1集』文部省編(以下『提要』と略す)邦文のみpp.40-42。
※『提要』は復刻版として次の2種類があるが、内容には異動はありません。
国書刊行会版 1997年復刻〔書名:『文部行政資料 第1集』〕
文泉堂出版社版 1980年復刻
(英文)
○”Memorandum concerning Policies and Procedures Relating to the Protection of Arts, Monuments and Cultural and Religious Sites and Installations, 12 November, 1945”(SCAPIN番号:269)(憲政資料室請求記号:SCA1-R2 2コマ分)
上記英文指令を復刻したものとして、『GHQ指令総集成 SCAPIN第2巻』竹前栄治監修 エムティ出版 1993 pp.422-423があります。いずれも原資料の状態がよくないため、判読できない部分があります。
さらに、上記指令を翻刻したものとして、『季刊日本管理法令研究』第5号〔1946.8.15〕(日本管理法令研究会編)pp.15(233)-20(238)〔マイクロ資料請求記号:YA-225〕(複製版:『季刊日本管理法令研究』第2巻 大空社 1992 )があります。
B.昭和21年3月20日付
(邦文・英文)
○「公共蒐集物及び蔵書の疎開現在の位置及び状況に関する件」(昭和21年3月20日連合国軍最高司令部発 終戦連絡中央事務局宛覚書)
○”Information on the Evaluation and Present Location and Condition of Certain Collections and Libraries.”
(上記昭和20年11月12日付け指令にある調査報告が未だ届けられていないため、速やかに提出するよう督促した文書、特に個々の博物館・図書館を明記)
『提要 第2集』(邦文pp.158-159、英文pp.160-162)
(2)文部省社会教育局長から地方長官宛文書
A.昭和20年11月10日付
○「国宝、重要美術品及史蹟名勝天然記念物保存に関する件」(昭和20年11月10日 発社22号 社会教育局長より地方長官)『提要 第1集』pp.187-188
※上記のGHQ/SCAP文書の日付よりも2日前に出されているが、経緯は不明。
B.昭和21年2月5日付
○「重要美術品等調査職員設置に関する件」(昭和21年2月5日 発社22号 社会教育局長より地方長官)『提要 第2集』pp.317-318
C.昭和21年5月7日付
○「重要美術品等調査職員設置に関する件」(昭和21年5月7日 発社820号 社会教育局長より地方長官)『提要 第3集』pp.578-579
3.奈良県分の報告書
憲政資料室所管GHQ/SCAP文書のうち民間情報教育局(CIE)の文書に次の報告書が二つのパートに分かれて収録されています。
A.報告書
○”List of works collections sites and installations requiring protection, prepared by the Educational Ministry, Imperial Japanese Government, April 1946, Nara Prefecture”
※part 1(憲政資料室請求記号:CIE(A)7967~7971、322ページ分)
※part 2(日付不明)(憲政資料室請求記号:CIE(A)8000、66ページ分)
B.文書鑑
奈良県分について文部省で取りまとめ、1946年4月18日付で終戦連絡中央事務局からGHQ/SCAPに提出する旨の文書鑑が存在します。
○”Subject:Policies and Procedures Relating to the Protection of Arts, Monuments and Cultures and Religious Sites and Installations C.L.O. No.1970(PE) 18 April 1946”
この資料は、2種類を確認することができ、一つは提出先であるGHQ/SCAP保管の原資料(憲政資料室請求記号:CIE(D)05191)、もう一つは提出元である終戦連絡中央事務局保管の写し(竹前栄治監修『GHQへの日本政府対応文書総集成 第4巻』エムティ出版 1994 p.392に収録、いずれも1ページのみ)で、前者には終戦連絡中央事務局長のサインやGHQ/SCAPの受領印などが見られます。
この鑑には、Referenceとして、1945年11月12日付GHQ/SCAP覚書、すなわち、上記(1)A文書に対応したものであることが記されています。
ただし、GHQ/SCAP文書においては上記報告書と文書鑑とが別々に保管されていたこと(奈良県に限らず他府県にもあてはまる)、さらにA.報告書とB.文書鑑のタイトルが少なからず異なることから、これらの資料が同一のかたまりを構成していたかどうか定かではありません。しかし、双方の提出または取りまとめの日付が1946年4月であること、内容的にも施策の目的及び指令/回答項目に類似性が認められることは留意する必要があると思われます。
これらの経緯を文化財保存の観点から、出典が明確でない記述もありますが、行政側から概観したものとして次の文献を紹介します。
○『文化財保護の歩み』 文化財保護委員会 昭和35 大蔵省印刷局 <709.2-B792b2>
「第1編 文化財保護の歴史 第7章 太平洋戦争前後における文化財の保護 第2節 戦争直後の保存行政」(pp.88-101)
文化財保護委員会は、昭和25年に文化財保護法が制定されたことに伴い、文部省の外局として設置され、昭和43年に文化局と合併して文化庁へと改組された組織です。
< >内は当館請求記号
- 回答プロセス
- 事前調査事項
-
〔典拠〕文部省社会教育局長が各府県の博物館、図書館あてに文化財処理についての調査依頼文書を送付した(昭和21年5月8日付 第1号)。この文書の写しが大和博物館(現奈良県立橿原考古学博物館附属博物館)にあったとのこと。当該依頼文書(邦文、英文)と各府県からの回答文書がひとまとまりになっていると思われる。
- NDC
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- 芸術政策.文化財 (709 9版)
- 参考資料
- キーワード
-
- 文化財保護
- 連合軍総司令部
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 所蔵調査
- 内容種別
- 質問者区分
- 公共図書館
- 登録番号
- 1000014318