レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2018年07月01日
- 登録日時
- 2018/10/23 14:49
- 更新日時
- 2018/10/26 13:06
- 管理番号
- 00001107042
- 質問
-
解決
『防長風土注進案』に見える、「石水刎」「水刎」「除水」「水除」とはどんな設備か。いずれも、洪水を防ぐための施設と推察するが、その違いが知りたい。
- 回答
-
周防長門における江戸期の治水に関する資料及び文献を、当館蔵書検索及び国立国会図書館サーチ等で探したが、適当なものが見当たらなかった。従って、主に辞書類から調査した結果が以下のとおり。
「水刎」については、下記資料1p51に「水刎(みずはね)」の項があり、「河川の流れを変えたり、緩やかにするために設けた工作物」とある。また、資料2p693「水刎(みずはね)」の項には「杭、蛇籠、石塊などを用いて、河川が河川敷の中で蛇行したり流路を変えたりしないように河岸から河身に設けた工作物。水制」とある。なお、資料3p1538「水制(すいせい)」の項も意味はほぼ同様で、同書は「水刎(みずば)ね」と仮名を振っている。
「石水刎」については、資料1p71に「石刎(いしはね)」の項があり、「洪水を防ぐための石組」とある。また、資料4に「古来我国の水制工は水流に下向きに築設せし横工多く、刎・水刎・刎出し・突出し・荒籠・猿尾と称し、更に材料名により、土出し・石出し・寄せ・籠出し・大籠出し・杭出し等と呼べり。」とある。「石水刎」は、石組み又は石で作った水刎と思われる。
なお、資料4は国立国会図書館デジタルコレクションに収録されている。(図書館間送信資料)
国立国会図書館デジタルコレクション:明治以前日本土木史
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1687823
「水除」については、資料1p51に「水除(みずよけ)」の項があり、「排水すること」とある。資料2p700「水除(みずよけ)」の項では「水を防ぐために設けてあるもの。堤防の類」とある。資料5p2810「水除(みずよ)け」の項もほぼ同様。排水路の類か、又は堤防の類と思われる。
「除水」について、資料6「除水(じょすい)」の項には「水を排除すること。排水。駆水」とあり、資料3p1472「除水(じょすい)」もほぼ同様。
なお、資料1p242に「除(よけ)」の項があり、「出会わないようにする、避ける」とある。また、資料6には「避・除(よけ)」の項があり、方言として「水の流れが変わらないように岸などに設けた工作物。水刎(みずはね)。水制。山口県豊浦郡「河よけ」「溝よけ」」とある。除水は、水刎と同じものとも考えられる。
なお、「除水」の例として質問者から例示された『豊浦藩村浦明細書』p267(豊浦郡豊田筋)下段には「一井手九カ所 郡夫普請 大井手 小井手 音井手 樋ノ口川除辻水除共 車ノ本 古川 岡田河原 巻田 岩鼻」とあり、「樋之口川除」「辻水除」と読むこともできるかと思われる。
「川除」については、資料5のp644に「川除(かわよけ)」の項があり、「治水のために川岸・川中に設けた施設。堤防、蛇籠など。」とある。資料8「川除(かわよけ)」では、「堤防などの水害防止施設。またその施設をつくること。」とある。
なお、資料8同項には、方言として「小川の岸、または堰(せき)の土や水をよけるための設備を入れ替えること。山口県豊浦郡」ともあり、資料1のp20「川除(かわよけ)」では「川の氾濫を防ぎ、灌漑用水を確保するため川や溝を浚渫すること。」とある。
- 回答プロセス
-
自館蔵書検索及び国立国会図書館サーチで県内江戸期の治水に関する資料を探す。
「治水」「長州」「萩」等の語で検索したが、それらしい資料は見当たらなかった。
質問者からの例示のあった地域の自治体史(防府市及び旧豊田町)の目次を確認したが、工法や工作物等についての記述は見当たらなかった。
土木関係、治水関係(NDC517)の棚をブラウジング。
『明治以前日本土木史』等を発見、確認。
土木用語辞典の類には記載がない模様。
辞書類を確認
『近世防長古文書用語辞典』を確認、記載あり。
一般的な辞書として『日本国語大辞典』『広辞苑』も参照。
- 事前調査事項
-
『防長風土注進案』の9巻p248上段(植松村)に「一石水刎八ケ所 鯖川南土手付」とある。『防長風土注進案編外 豊浦藩村浦明細書』p267(豊浦郡豊田筋)上段に「一川除四ケ所 郡夫普請」、下段に「一井手九カ所 郡夫普請 大井手 小井手 音井手 樋ノ口川除辻水除共 車ノ本 古川 岡田河原 巻田 岩鼻」とある。
- NDC
-
- 河海工学.河川工学 (517 9版)
- 中国地方 (217 9版)
- 参考資料
-
-
1.石川敦彦 編著 , 石川, 敦彦. 近世防長古文書用語辞典. 石川栄子, 2017.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I028598733-00 (p20,51,71,242) -
2.日本国語大辞典第二版編集委員会 , 小学館国語辞典編集部 , 北原, 保雄 , 日本国語大辞典第二版編集委員会 , 小学館国語辞典編集部 , 北原, 保雄. 日本国語大辞典 第12巻. 小学館, 2000.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I045439350-00 , ISBN 4095210125 (p693,700) - 3.新村出 編. 広辞苑[1] 第7版. 岩波書店, 2018. (p644,1538,1472)
-
4.土木学会 編 , 土木学会. 明治以前日本土木史. 土木学会, 1936.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000000904183-00 (p23) - 5.新村,出 編. 広辞苑[2 第7版. 岩波書店, 2018. (p644,2810)
-
6.日本国語大辞典第二版編集委員会, 小学館国語辞典編集部 編 , 小学館. 日本国語大辞典 第7巻 第2版. 小学館, 2001.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000003020831-00 , ISBN 4095210079 (p368) -
7.日本国語大辞典第二版編集委員会, 小学館国語辞典編集部 編 , 小学館. 日本国語大辞典 第13巻 第2版. 小学館, 2002.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000003061408-00 , ISBN 4095210133 (p577) -
8.日本国語大辞典第二版編集委員会, 小学館国語辞典編集部 編 , 小学館. 日本国語大辞典 第3巻 第2版. 小学館, 2001.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002987787-00 , ISBN 4095210036 (p1193)
-
1.石川敦彦 編著 , 石川, 敦彦. 近世防長古文書用語辞典. 石川栄子, 2017.
- キーワード
-
- 治水--山口県
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000244285