東大寺「お水取り」の際に用いられる椿の造花及び薬師寺「花会式」で用いられる十種の造花の着色に当時なにが使われていたか、はっきりと記載されていた資料はみつけられませんでした。
『日本史色彩事典』丸山伸彦編 吉川弘文館 <757.3/160 常置> ( 22600340 )
「コラム 古代の色の復元 (吉岡幸雄)」(p250-252)は東大寺、薬師寺等の依頼で往時の色彩を範として再現している方が書かれたものです。ここには
・『正倉院文書』には当時の染料によって染められた「刈安紙」や「胡桃紙」などが記されていること
・正倉院御物として蘇芳という赤の染料や、檳榔樹などの素材そのものも保存されていること
・奈良時代に使われていた染料は、紫草の根(紫根)、紅花、蓼藍(たであい)、蘇芳などほとんどのものが現代でも手に入り、染色の助剤となる稲藁、椿の灰、天然の明礬などもなんとかそろえられる
といったことが書かれています。
吉岡幸雄氏は現在、東大寺お水取り(修二会)の椿の造り花の紅花染和紙、薬師寺花会式の造
り花の紫根染和紙を植物染で奉納しているようです。
(
http://www.sachio-yoshioka.com/about/history.html)(最終アクセス 2014.8.8)
また「お水取りの椿-吉岡常雄」白洲正子著(『白洲正子全集 第9巻』新潮社 2002
<918.68LL/144/ 9>p231-238)では吉岡幸雄氏の父、吉岡常雄氏が東大寺お水取り
の椿のための紙を染める様子を描写しています。
奈良時代の色彩に関しては
『日本色彩文化史』前田千寸著 岩波書店 1960 <757.4/ 1 常置> ( 11742756 )
「第二篇 飛鳥奈良時代」(p79-222)
『日本の色を染める』吉岡幸雄著 岩波書店 2002 <753.8MM/184>( 21563861 )
「第二章 飛鳥・天平の彩り」(p42-72)
『色 染と色彩』前田雨城著 法政大学出版局 1980 <757.4/ 23a> ( 22229181 )
「二 飛鳥・奈良時代の色」(p192-213)
に記載があります。
『日本大百科全書』 小学館 1988 <031/43/24 常置> ( 10092310 )「和紙」の項目〔加工〕に「紙の色染めはすでに奈良時代(8世紀)にはみごとな完成をみていた。元来紙の染色は防虫の目的から出たらしく、黄蘗(きはだ)、藍、紅、紫草、蘇芳、木芙蓉(もくふよう)、蓮、楸(ひさぎ)、橡(つるばみ)などの植物を原料とした天然染料が用いられ、また媒染剤としては灰汁やみょうばんも使用された。濃淡各種の色調を出した「染紙」の名称は『正倉院文書』に約40種もみいだされ、染色方法には、漉き染め、浸し染め、引き染め、吹き染めなどの方法が行われた。(略)」(p774)
と記載があります。
「染紙」については、
『和紙の文化史』久米康生著 木耳社 1976 <585.6/18>(11459930)
「多彩な染紙」(p40-48)
『和紙文化辞典』久米康生著 わがみ堂 1995 <585.6/108 常置> (20937496)
「そめがみ」(p206-207)(「かみばな」(p83-84)もあり)
『紙の博物誌』渡辺勝二郎著 出版ニュース社 1992 <585BB/154>( 20537304 )
「染紙・草木染」(p63-68)
『紙と日本文化』町田誠之 著 日本放送出版協会 1989 <585Y/61> (20157582 )
「染め紙」(p70-75)(「紙の造花」(p112-116)もあり)
『和紙文化誌』久米康生著 毎日コミュニケーションズ 1990 <585.6Y/101> (20244000) 「多彩な染色と金銀装飾加工」(p50-54)
に記載があります。