レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2016年06月03日
- 登録日時
- 2018/01/11 19:14
- 更新日時
- 2018/01/11 19:22
- 管理番号
- 横浜市中央2510
- 質問
-
解決
日本の三大河川と三大河はどう違うのですか
- 回答
-
1 回答
(1) 三大河(さんたいが)=利根川、筑後川、吉野川
三大河は名数(めいすう)のひとつで、坂東太郎(利根川)、筑紫次郎(筑後川)、四国三郎(吉野川)という
兄弟に擬した三つの河川を総称した古くからの表現です。
『日本国語大辞典』、『古事類苑』には江戸時代の使用例が記載されています。
『本朝俗諺志』(1746)、『和訓栞』(1777-1862)、『廻国雑記標注』(1825)。
なお、江戸時代初期の『和漢名数』(1678)を確認したところ、「日本大河」の項目があり、
利根川と筑後川が含まれていましたが、「三大河」という表現はありませんでした。
(2) 三大河川(さんだいかせん)=信濃川、利根川、石狩川
三大河川は、長さもしくは流域面積の統計上の数値による上位三つの河川です。同じ基準で順位が
異なる例も見受けられたので、『理科年表 第90冊(平成29年)』で順位を確認しました。
流路延長(km)①信濃川(367)②利根川(322)③石狩川(268)
流域面積(km2)①利根川(16,840)②石狩川(14,330)③信濃川(11,900)
(3) 三大河と三大河川の区別
名数は、ある分野の事物の中で同類のものやよく知られたものをいくつか集め、その数を冠した慣用的な
言い回しで、必ずしも数値比較が可能な事物によって構成されているわけではないため、いわゆる
ランキング(統計上の数値)とは異なります。
「河川」は数値比較が可能という「名数」としては特異な例であるためか、「三大河」と「三大河川」が
混同されているケースもあるようです。
当館所蔵の名数辞典、数詞・数字を使った用語の辞典、便覧についてそれぞれ数点ずつ確認した結果、
概ね以下のような傾向が見受けられました。
ア 名数辞典、便覧などは「三大河」のみ記載の例が多い。
イ 「三大河川」を記載している資料は、「三大河」も記載している。
ウ 「三大河」の順位は時代によって逆転しており、江戸時代の版本はいずれも「四国次郎」「筑紫三郎」になっている。
エ 「三大河川」は長さもしくは流域面積の統計上の数値による順位を記載しているが、順位が異なる記述も多い。
オ 利根川・筑後川・吉野川を「三大河川」とし、長さ・流域面積に対して「暴れ川」という基準をあてはめている例がある。
カ 信濃川・利根川・石狩川を「三大河」とする例は、調査資料中には見当たらなかった。
2 調査経過
(1)「名数」の定義(辞事典の引用)
ア 『広辞苑』岩波書店
ある数字を冠して、同類の事物をその数だけ集めていう語。「四天王」「五山」「八景」の類。
イ 『日本国語大辞典』小学館
同類のものをいくつかまとめ、上にある数をつけて、特定の内容をさす言い方。
「二王」「三羽がらす」「四天王」「五常」「七福神」など。
ウ 『日本大百科全書』 小学館
…また「三羽烏」「四天王」「七福神」「十干十二支」などのように、いつもある数をつけていう
特定の内容をもった語を名数ということがある。「名数小辞典」→709~713
エ 『平凡社大百科事典』 平凡社
中国では三皇、五穀、九族などと、事物に特定の数を添えて称える慣習があり、これを名数と称した
オ 『wikipedia』https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%90%8D%E6%95%B0
名数(めいすう)とは、同類のものをいくつかまとめ、その数をつけて総称する呼び方のことである。
例えば、景勝地のうち特に優れた3つをまとめて「日本三景」と呼んだり、ある人の弟子の中で特に
優れた人10人をまとめて「十哲」と呼んだりするようなものである。
必ずしも最も優れたもの(トップ3、トップ10など)を選んでいるとは限らない。
諸説あって「三大○○」「四大○○」に何が入って何が入らないのか、厳密に定まっていない場合もある。
(2) 名数辞典、数詞・数字を使った用語の辞典、便覧の記述内容比較
ア「三大河」のみ記載されているもの
『和訓栞』『廻国雑記標注』
『日本名数辞典』『数(かず)のつく日本語辞典』
『日本三大ブック』『「七つの海」を知っていますか?』
「名数小辞典」(『日本大百科全書22』)「名数録」(『朝日新聞の用語の手引』)
「名数」(『日本史必携』)「数字を含む慣用語」(『NHK間違いやすい日本語ハンドブック』)
イ「三大河川」と「三大河」が併記されているもの
『名数数詞辞典』『日本三大四大五大事典 自然/動・植物編 日本の名数シリーズ』『日本数字用語辞典』
ウ「三大暴れ川」の記載があるもの
『事典・日本の観光資源 〇〇選と呼ばれる名所15000』
(3) 参照資料・引用資料の書誌事項等
『倭訓栞 上巻 増補語林』 谷川士清/著 名著刊行会 p513
『廻国雑記標註 勉誠社文庫』 関岡野洲良/〔著〕 勉誠社 1985.5 p211
『日本名数辞典』 朝倉治彦,井門寛,森睦彦/編 東京堂出版 1974.8 p55
『数(かず)のつく日本語辞典』 森睦彦/著 東京堂出版 1999.04 p119
『名数数詞辞典』 森睦彦/編 東京堂出版 1980.6 p
『日本数字用語辞典』 村石利夫/著 日本文芸社 1980.12 p233、234
『日本大百科全書 22 ませ―もぬ』 小学館 1988.7 p708~713「名数小事典」
『NHK間違いやすい日本語ハンドブック』 NHKアナウンス室/編 NHK出版 2013.5 p353
『朝日新聞の用語の手引』 朝日新聞社用語幹事/編 朝日新聞出版 2010.12 p664~675「名数録」
『日本史必携』 吉川弘文館編集部/編 吉川弘文館 2006.1 p211~230「名数」
『事典・ 日本の観光資源 〇〇選と呼ばれる名所15000』 日外アソシエーツ株式会社/編 日外アソシエーツ 2008.1 99p4
『日本三大四大五大事典 自然/動・植物編 日本の名数シリーズ』 日本情報センター/編 ナンバーワン 1987.10 p48、55
『日本三大ブック』 加瀬清志,畑田国男/著 講談社 1993.3 p41
『「七つの海」を知っていますか?』 伊宮伶/著 新典社 2002.06 p38
『古事類苑 〔4〕 地部』 吉川弘文館 1981 p1157
『広辞苑』 新村出/編 岩波書店 2008.1 p2755
『日本国語大辞典 第12巻(ほうほ-もんけ)』 日本国語大辞典第二版編集委員会/編 小学館 2001.12 p1008
『日本国語大辞典 第6巻(さこう-しゆんひ)』 日本国語大辞典第二版編集委員会/編 小学館 2001.06 p353
国立国会図書館デジタルコレクション
『和漢名数 2巻. [1]』貝原篤信 編輯 佐野与兵衛 元禄5(1692) コマ番号13
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2580212
国文学研究資料館日本古典籍総合目録データベース
『本朝俗諺志』米山翁/沾涼 著 コマ番号10
http://dbrec.nijl.ac.jp/KTG_B_200020677
レファレンス協同データベース(国立国会図書館)
https://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000004121
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
-
- 日本語 (031 8版)
- 参考資料
- キーワード
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000228188