次の資料に記述を確認しました。
今回の調査資料からは、栃木県内でモロが食されるようになった時代に関する記述は確認できませんでした。
1 図書
・『鹿沼市史 民俗編』(鹿沼市史編さん委員会/編 鹿沼市 2001)
「第一編 鹿沼市の民俗誌 第一章 農村の暮らし 第四節 食べ物」p.112-117「(二)毎日の食事」の項に、「モロ・サガンボは、サメの一種であり…特にモロ・サガンボは、正月や結婚などに用いられたもので、また、一晩においての後にできる煮こごりが美味ともいわれる」との記述があります。
・『鹿沼市下沢の生活と伝承 武蔵大学日本民俗史演習調査報告書 ⅩⅧ』(武蔵大学人文学部日本民俗史演習/編 武蔵大学 1995)
「Ⅳ食生活 (7)ハレの日の食事」p.46「葬式」の項に、「モロ(サメの肉)の煮付け」との記述があります。
・『栃木「地理・地名・地図」の謎 意外と知らない栃木県の歴史を読み解く!』(篠崎茂雄/監修 実業之日本社 2014)
p.152-153「栃木県は日常的に“海のギャング”を食べている?」の項があり、栃木県内でサメ肉を食するようになった背景を考察する記述があります。
「栃木県では「さがんぼ」、あるいは「モロ」と呼ばれる白身魚がよく食べられている。(中略)さがんぼはアブラツノザメ、モロはネズミザメのことを指し、スーパーでは切り身として売られている。」との記述があります。
2 新聞記事
当館は下野新聞・朝日新聞・読売新聞・日本経済新聞の記事検索データベースを契約しています。検索の結果、以下の新聞記事が確認できました。
・朝日新聞 2009年1月1日13面「食べるって何だ? 郷土の味知恵凝縮 海なし県のモロ おいしく先人が工夫」
1841(天保12)年、現在の鹿沼市の農民が記した家計簿に「六六四文 さめ壱貫目」との記述があることが書かれています。
・朝日新聞 2011年6月9日29面「サメ肉使い、今風献立 栃木市PR・気仙沼支援で一石二鳥 5店食べくらべ会/栃木県」
「モロはサメの切り身で、「日持ちする魚」「骨がないから食べやすい」などとして、栃木や茨城、福島などの内陸部で重宝がられた」との記述があります。
・下野新聞 2011年6月12日28面「サメの身「モロ」で新料理 研究会設け開発、食べ比べ コロッケなど高評価 栃木の飲食店主ら」
「内陸で新鮮な魚が手に入りにくかった栃木市では、昔から煮付けなどの食材として定着しているが、全国的にはあまり食べられていない」との記述があります。
・日本経済新聞 2015年8月9日22面「文学食べ物図鑑(10)内田百ケン「御馳走帖」(上)鮫-鱶のほかにも第3の名。」
「モウカザメは栃木ではモロと呼ばれる…海がない栃木県でも体内のアンモニアのために腐敗しにくい鮫は、貴重な海の幸として食卓を飾ってきた」との記述があります。
3 その他(次の資料からは記述を確認できませんでしたが、参考までにご紹介します)
・『栃木県民俗事典』(尾島利雄/著,下野民俗研究会/編 下野新聞社 1990)
・『日本の食生活全集 9 聞き書栃木の食事』(「日本の食生活全集栃木」編集委員会/編
農山漁村文化協会 1988)
・『全国の伝承江戸時代人づくり風土記 聞き書きによる知恵シリーズ 9』(加藤秀俊/〔ほか〕編纂 農山漁村文化協会 1989)
・『関東の郷土食・伝統食 地域に根ざした特色ある食文化の伝承への取組事例』(関東農政局/編 関東農政局 1999)
・『伝承写真館日本の食文化 3』(農文協/編 農山漁村文化協会 2006)
・『下野の衣食住』(尾島利雄/編 下野民俗研究会 1966)