レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2016/10/20
- 登録日時
- 2017/01/12 00:30
- 更新日時
- 2017/01/12 00:30
- 管理番号
- 6001020037
- 質問
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解決
日本の司書養成が米国(アメリカ)のように修士課程ではないことが記された資料が見たい。
- 回答
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【図書】
『図書館という軌跡』(東條文規/著 ポット出版 2009.4)
p.24「いま、いかなる図書館員が必要なのか:わが国図書館職員の現状と将来」の中に「アメリカとわが国との図書館学教育における姿勢、理念の違いの大きさを考えざるをえない。それは、図書館がすでに市民のあいだに確実に根をおろしている一方、研究者にとってもライブラリアンがかけがいのないものとして存在しているアメリカと、いまだ公務員の閑職に考えられがちなわが国との相違だといいかえてもよい。」という記述があります。
※この論考は『現代の図書館』第20号3・4号(1982.12)に掲載されたものです。
『図書館情報専門職のあり方とその養成 シリーズ・図書館情報学のフロンティア』(日本図書館情報学会研究委員会/編
勉誠出版 2006.10)に以下の記述がありました。
p.8~9「3.日本の図書館員養成 3.1司書の養成」
「教員(一級普通免許)および学芸員は学士の称号と大学における科目の履修を標準としていたのに対し、司書資格は学士の称号は要求されず最初から講習を標準として出発していた。(中略)司書の専門的職務の前提は、教科担当教師や主題別の学芸員のように主題レベルの専門と組み合わせた専門性ではなく、どのような主題の資料であっても処理し提供できる主題汎用性にあったといってよい。」
p.12~13「3.日本の図書館員養成 3.4図書館員養成の限界」
「日本でも組織的な図書館員養成の必要性は早くから認められ、戦前には文部省図書館員養成所が置かれてはいたが資格制度は存在しなかった。戦後の図書館法は現職の図書館員に司書資格を与えることを優先させたため、大学での養成は法的に曖昧にされた。大学における「図書館に関する科目」が制度化されないままに、司書過程での養成は大学卒業者(2年間の学修者)に司書講習相当のものが与えられていた。
欧米の養成の図式でいえば、司書資格は講習で実施するという意味で初級レベルのトレーニングを施して養成機関が資格認定する制度である。また、司書教諭は教員に初級レベルの研修を施す場である。法制化されたのはこれだけであった。(中略)
外国の養成制度では、アメリカで1920年代から、ヨーロッパでも1960年代から大学における図書館専門職の養成がスタートしている。日本でも1960年代に大学教育に職業教育的要素が取り入れられ始めた時期がグレード化をはかるチャンスだったのだろう。事実1968年の図書館法施行規則の改正検討の過程で38単位案が提案され中級レベルの養成をめざす方向が一旦は示された。しかしながら、結局この案は採用されず、従来の15単位が19単位に増えたにとどまった。」
p.183~197「司書課程における専門職養成の現状と課題」
司書課程に焦点を当てて、その現状と課題および将来展望を論じています。
『図書館情報学教育の戦後史 : 資料が語る専門職養成制度の展開』(根本彰/監修 ミネルヴァ書房 2015.3)
p.14
「図書館法では大学で養成することが明記されているにもかかわらず、長い間、大学における司書養成のカリキュラムが省令として整備されなかった理由の解明は進んでいない。推測できる理由として、図書館法でいう「図書館学に関する科目」が慶應義塾大学のようなアメリカ流のライブラリースクールのカリキュラムに準ずるものなのか、大学基準協会の基準案レベルのものか、司書講習科目で代替するものなのかについて議論して、省令に含める要求を示すことに図書館関係者が一本化できなかったことに求められるように思われる。その背景には、1950年代に専任の教員を配置して図書館学を開講した大学は数校しかなく、まして学科構成をもつ大学は慶應義塾大学しか現れず、そうした議論を行うまでにいたらないままに司書講習にゆだねたという事情があったものと思われる。」
p.105~156「第2章 司書養成の変遷‐養成制度高度化の模索‐」に
専門課程と司書・司書教諭養成の展開を通史的に捉えた文章が掲載されています。
【論文】
・和田 幸一「日本の大学図書館員の専門職性 : 米国との比較(<特集>イケてる情報サービスプロフェッショナルを目指して)」
『情報の科学と技術』51(4)(情報科学技術協会 2001.4)p.208~212
[抄録]
図書館員は, 米国でさえ準専門職とされている。専門職の要件に沿って, 米国と日本の大学図書館員を比較したところ, 少なくとも教育, 資格, 自律性の点で明らかに日本の大学図書館員は, 専門職の度合が低いことがわかった。一方, 業務区分・何をもって専門職とするかの困難さ, 終身雇用制の存在, 社会奉仕の概念の欠如から, 日本の専門職化が困難であることを指摘した。そして, 筆者が目の当たりにした米国の専門職制の背景として, (1)専門職というラベルがポジションにつけられていること, (2)社会への大学図書館の奉仕, (3)図書館員が図書館界全体を育てていくという意識の存在を紹介した。
※こちらの論文はインターネット公開されています。(2016/10/20現在)
http://ci.nii.ac.jp/naid/110002828925
・金 容媛「主要国の司書養成教育および資格・司書職制度の現状 : 韓国、米国、英国を中心に」
『文化情報学 : 駿河台大学文化情報学部紀要』14(2)(駿河台大学文化情報学部 2007.12)p.35~45
※こちらの論文はインターネット公開されています。(2016/10/20現在)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/igakutoshokan1954/55/2/55_2_112/_article/-char/ja/
・諏訪部直子、酒井由紀子「米国と日本における医学図書館員の認定資格制度」
『医学図書館』55(2)(日本医学図書館協会 2008.6)p.112~120
※こちらの論文はインターネット公開されています。(2016/10/20現在)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/igakutoshokan1954/55/2/55_2_112/_article/-char/ja/
・三輪眞木子「図書館情報専門職教育の課題 : 国際的な調和を目指して」
『情報管理』55(10)(科学技術振興機構 2011)p.611~621
[抄録]
情報通信技術の発展に伴う知識経済社会の到来により,図書館を取り巻く環境は急激な変化を遂げつつある。図書資料の電子化とネットワークを通じた流通の進展は,図書館員に求められる知識やスキルを印刷資料を対象とするものから電子資料や情報通信ネットワークを対象とするものに拡大している。欧米では,図書館情報専門職教育の質保証と専門職資格の国境を超えた流動性向上を目指して,専門職養成カリキュラムの等価性や互換性を支える仕組みが構築されてきた。また,教育機関の名称を,library schoolからinformation schoolに変えるとともに,カリキュラムの内容を大きく変化させている。日本の「司書」制度はこの動きから取り残されている。本論文は,日本の図書館が,知識経済社会の基盤を支える組織として生き残るために必要な情報専門職教育の在り方と,それを実現するために必要な取り組みを提案する。
※こちらの論文はインターネット公開されています。(2016/10/20現在)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/johokanri/54/10/54_10_611/_article/-char/ja/
[事例作成日:2016年10月20日]
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
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- 図書館.図書館情報学 (010 8版)
- 参考資料
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- 図書館情報学ハンドブック 第2版 図書館情報学ハンドブック編集委員会∥編 丸善 1999.3 (121-125,129-131)
- 図書館という軌跡 東條/文規∥著 ポット出版 2009.4 (24)
- 図書館情報専門職のあり方とその養成 日本図書館情報学会研究委員会∥編 勉誠出版 2006.10 (8-9,12-13,183-197)
- 図書館情報学教育の戦後史 根本/彰‖監修 ミネルヴァ書房 2015.3 (14,105-156)
- http://ci.nii.ac.jp/naid/110002828925 (日本の大学図書館員の専門職性 : 米国との比較(<特集>イケてる情報サービスプロフェッショナルを目指して))
- http://ci.nii.ac.jp/naid/110006574668 (主要国の司書養成教育および資格・司書職制度の現状 : 韓国、米国、英国を中心に)
- https://www.jstage.jst.go.jp/article/igakutoshokan1954/55/2/55_2_112/_article/-char/ja/ (米国と日本における医学図書館員の認定資格制度)
- https://www.jstage.jst.go.jp/article/johokanri/54/10/54_10_611/_article/-char/ja/ (図書館情報専門職教育の課題 : 国際的な調和を目指して)
- キーワード
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 書誌事項調査
- 内容種別
- 出版情報
- 質問者区分
- 個人
- 登録番号
- 1000206187