○江戸川乱歩
『江戸川乱歩小説キーワード辞典』(東京書籍/貸出可)という資料があり、”小説を読み解く上でキーワードとなりうる人物、場所、物、用語等”を見出し語としており、短い用例が掲載されています。
【象】の項目には、すでに貴館でお調べの「知恵の一太郎」をのぞくと、以下の4作品が引用されています。目次および、関連のありそうな箇所にざっと目を通しましたが、”象が川の中に死に行く”ようなシーンはないようです。
いずれも、ポプラ社の『少年探偵江戸川乱歩全集』で確認しました。このシリーズは貸出可能ですので、じっくり読んでみられるのであれば、協力貸出でお申込ください。
「灰色の巨人」
「魔法博士」
「サーカスの怪人」
「塔上の奇術師」
また、【真珠のゾウ】の項目には、「おれは二十面相だ」(「二十面相の呪い」と改題)が引用されています。こちらも、上記シリーズで確認しましたが、動物の象ではなく、象の置物でした。
他に、江戸川乱歩関連資料も確認しましたが、手がかりになりそうな情報は見つかりませんでした。目次や作品レビューにざっと目を通した資料は、以下のとおりです。
『江戸川乱歩(新潮日本文学アルバム41)』(新潮社 1999.10)
『江戸川乱歩と大衆の二十世紀(国文学解釈と鑑賞別冊)』(藤井淑禎/編 至文堂 2004.8)
『江戸川乱歩(新文芸読本)』(河出書房新社 1992.4)
『江戸川乱歩アルバム』(新保博久/編 河出書房新社 1994.10)
『江戸川乱歩(コロナブックス46)』(太陽編集部/編 平凡社 1998.6)
○エドガー・アラン・ポー
キーワード事典のような資料がないために、検索はできなかったのですが、関連資料を確認しました。
索引がある資料も作品の内容までは項目に挙がっていませんでした。
『小説家ポウ』(高島清/著 国書刊行会 1995.3)
『エドガー=A=ポー(人と思想94)』(佐渡谷重信/著 清水書院 1990.9)
『E・A・ポウを読む(岩波セミナーブックス52)』(巽孝之/著 岩波書店 1995.7)
『エドガー・ポオ:存在論的ヴィジョン』(山本常正/著 英宝社 1999.10)
『ポーと雑誌文学:マガジニストのアメリカ』(野口啓子/[ほか]編 彩流社 2001.3)
『ポウ研究:肖像と風景』(内田市五郎/著 日本古書通信社 2007.3)
『後ろから読むエドガー・アラン・ポー:反動とカラクリの文学』(野口啓子/著 彩流社 2007.5)
『E.A.ポーの短編を読む:多面性の文学』(板橋好枝/[ほか]編 勁草書房 1999.2)
『ポーと日本 その受容の歴史』(宮永孝/著 彩流社 2000.5)
○国際こども図書館の児童書総合目録(Web版)は、あらすじからの検索も可能なので、「象(ゾウ)」「川」「死」「泳ぐ」「入る」などのキーワードで掛け合わせて見ましたが、出てきませんでした。
○国会図書館の雑誌記事索引とCiNiiも検索しましたが、乱歩でもポオでも、象や動物が出てくる作品に関する論文は見つかりませんでした。
(論文の内容からの検索はできないため、論題にキーワードが含まれていない場合はヒットしません。)
○内容が関連している物語
WebcatPlusで掛け合わせ検索をしても、5万件近くになり、件数の絞込みができません。ヒットした資料のうち、いくつかを見たところ、以下の資料がみつかりました。
『アルプスを越えた象 ハンニバルの進攻』(キャヴィン・デ・ビーア/著 思索社 1991)は、紀元前218年にハンニバルがアルプスを越えてイタリアまで進攻したルートを検証した資料です。
p97に、「ローヌ川からポー川まで、ハンニバルのたどったルートを追ってきた」とあります。著者は、乱歩でもポオでもありませんが、川の名前に”ポー”が登場します。
また、p99には「ハンニバルの象は一頭を残してすべて死んでしまい」とありますので、”川に入る””死ぬ”というキーワードと関連しています。
このハンニバルの進攻を題材にした児童書に『ハンニバルの象つかい』(ハンス・バウマン/作 岩波書店 1966)があります。象つかいの少年の目をとおして、ハンニバル軍の大行軍や戦いを描いた物語です。A5版、361頁、ハードカバー。