レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 20150207
- 登録日時
- 2018/12/09 00:30
- 更新日時
- 2018/12/11 14:22
- 管理番号
- 20150207-1
- 質問
-
解決
漢字を崩した形が行書や草書につながると思うが、日本の仮名とそれは関係があるのか。別物ではないのか?
- 回答
-
①「行書」「草書」「かな(仮名)」について辞典で確認。
『広辞苑(第六版)』より
p730「行書(ぎょうしょ)」は漢字の書体の一つで楷書と草書との中間の書体。隷書を簡略化したもの
p1624「草書(そうしょ)」は書体の一つで篆書・隷書を簡略にしたもの。俗に行書をさらにくずし、点画を略したもの
P562「仮名(かな)」は漢字から発生した、日本固有の音節文字、広義には万葉仮名・草仮名・平仮名・片仮名、狭義には後の二者をいう。万葉仮名は主に漢字の音読で国語を写し、平仮名・片仮名は平安初期、万葉仮名をもとにしてできた。と記載がある。
②「行書 草書 歴史」で検索、書道関連の資料がヒット。歴史や成り立ちについて確認。811の書架も目視確認。
『草書の覚えかた』p6「(略)もともと草書は補助書体として、早く美しく書くことを目的として生まれ、成立した(略)」
『書く 言葉・文字・書』P162「(ハ)平仮名の形状 (略)平仮名は、一字では言葉にならないので、他の文字と連結する。「ひ」と「と」が結びついて「ひと」になる。言葉をつくるために結合しようとして、漢字の宛字(万葉仮名)から形を変えてできた文字が平仮名である。(略)一 字では言葉として成り立たないから、平仮名は常に筆記体であり、楷書体は存在しない」
『やさしい書道入門』
行書…p132「三 行書の古典-五つのグループ (一)王羲之(おうぎし)中心(基礎的古典) 行書の萌芽はすでに漢代に見られ、(略)東晋時代に、王羲之とその子王献之によって完成されました」
草書…p146「草書の書き方 草書の特徴 (二)草書の種類 草書は漢代の頃に隷書を早書きして生まれた書体です。当時は隷書全盛の時代でしたが、公文書は隷書で書かれ、日常の書は早書きの略体で書かれていました。」
『図説日本の漢字』p172~ 漢字の書体 の項「「平仮名は平安時代に漢字の草書体をさらにくずして作られた」という書道史関連書の説明も目にする。」(略)「殷王朝の甲骨文から周代の金文を経て,春秋・戦国時代の大篆を簡略化して,秦の始皇帝が小篆を制定した。(略)小篆を改めた隷書は,すでに秦代にも使われていたが,(略)前漢と,(略)後漢に普遍的に使われ,後漢の滅亡後,(略)三国時代にも行われた。ついで草書・行書が発生して三国・六国時代に行われ,書体変遷の最終段階として,楷書が,隷書・行書の間に考案された」p174「(略)片仮名の字源となった音仮名を,漢字としての書体から見ると,楷書だけではなく,行書や草書が少なからずある。」との記載もある。
③「かな(仮名)の成り立ち」について調査
『図説かなの成り立ち事典』p2「(略)五世紀ごろには、漢字の音や訓を借りて日本語を書き表す方法が生み出されました。これが仮名の始まりです。仮名という語が記された最初の文献は、十世紀後半に成立した「宇津保物語」とされますが、仮名という名の由来は、漢字が正式の文字という意味で「まな」(真字・真名)と呼ばれたのに対して、略式の文字という意味で「かりな」(仮字・仮名」と呼ばれたことによります。「かりな」が「かんな」に転じて「かな」となったのです。」
p4以降に「あ行」から50音順に漢字の草書体やくずし文字などからひらがな、行書体や漢字の一部などからカタカナが生まれたとの記述が続く。
『日本書史』p17「日本の文化的独立 (略)日本文化誕生のカギを握ったのは女手(平仮名)の誕生である。この女手は、宛字・万葉仮名や片仮名とは異なり、独立した文と文体を形成しうる力を持った続字・分書(わかちがき)体の仮名文字である。(略)いずれにせよ女手(平仮名)のいちおうの成立は、九世紀末、十世紀初頭のころと推定される」p370 第48章「仮名文」と美学-女房奉書論に、仮名の発生について記載あり。
以上から「行書」「草書」は漢字をくずしたものではなく早く書くための書体であり、仮名の発生との関連性も見受けられるが、別物である。
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
-
- 書.書道 (728)
- 参考資料
-
- 『広辞苑 第6版』新村 出/編 岩波書店 2008.1 , ISBN 978-4-00-080121-8
- 『草書の覚えかた 改訂 初版:雄山閣 1987年刊』佐野 光一/編著 天来書院 2006.4 , ISBN 4-88715-182-9
- 『書く 言葉・文字・書』石川 九楊/著 中央公論新社 2009.9 , ISBN 978-4-12-102020-8
- 『やさしい書道入門』城所 湖舟/著 成美堂出版 1999.8 , ISBN 4-415-00640-X
- 『図説日本の漢字』小林 芳規/著 大修館書店 1998.11 , ISBN 4-469-23201-7
- 図説かなの成り立ち事典 森岡 隆/著 教育出版 2006.8 , ISBN 4-316-80181-3
- 『日本書史』石川 九楊/著 名古屋大学出版会 2001.9 , ISBN 4-8158-0405-2
- キーワード
-
- 行書
- 草書
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000247757