レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2017年09月20日
- 登録日時
- 2017/11/30 10:55
- 更新日時
- 2017/11/30 11:02
- 管理番号
- 相-170013
- 質問
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解決
戦前、戦中において、国宝や重要美術品を所有する博物館や社寺に対し、文部省がどのような管理、指導をしていたかを示す史(資)料を探している(戦中であれば、防護対策についてなど)。
また、当時は文部省主催で「国宝関係博物館事務協議会」という会議が開かれていた。参加館は、東京・奈良の帝室博物館、恩賜京都博物館、遊就館、大阪市立美術館、鎌倉国宝館の6館であるが、いつからいつまで開催されていたか、なぜこの6館が選ばれたのか、規約等があったのかなど不明な点が多い。この協議会の実態についての史(資)料も探している。
- 回答
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ご参考になりそうな当館所蔵資料およびインターネット情報等は次の通りです。なお、一部旧字を新字にあらためております。ご了承ください。
○戦前、戦中における文部省の管理、指導について
・枝川明敬著「我が国における文化財保護の史的展開:とくに戦前における考察」『文化情報学:駿河台大学文化情報学部紀要』9巻1号 p.41-47 2002-6<Z007/516>
戦前については、p.42~43「2.2 古社寺保存法と史跡等保護」に「1913年6月には内閣の行政改革に沿い、文部省に内務省から宗教局が移管され、文化財保護行政(ただし、史蹟名勝天然記念物保存会所管は内務省)も文部省が行うこととなった。」と記述があり、p.43「2.3 国宝保存法と重要美術品等の保護」に1929年に「国宝保存法」、1933年に「重要美術品等ノ保存ニ関スル法律」が制定されたことや、国宝の指定等を審議する文部大臣の諮問機関として、国宝保存会、重要美術品等調査審議会等が設置されていたことについて記述がありました。
戦中については、p.45~46「2.6 第2次世界大戦で大きい被害」に「戦争中の1943年12月には、国宝・重要美術品等に対する防空施設設置の閣議決定がされるが、翌年2月には重要美術品等の認定事務及び名勝天然記念物の指定事務の停止が行われる」といった記述がありました。
なお、こちらの論文は機関リポジトリによりインターネット公開されています。
(http://doi.org/10.15004/00000690)
・『文化財保護法五十年史』文化庁著 ぎょうせい 2001<709.1/42>(21414701)
戦前については、「第1編 文化財保護法の制定と発展」「第1章 我が国における文化財保護制度の始まりと発展」「第1節 有形文化財(建造物・美術工芸品)に関する制度」のp.8~9「7「国宝保存法」による建造物・美術工芸品の保護」、p.10~11「8「重要美術品等ノ保存ニ関スル法律」による古美術品等の海外流出の防止」等に記述があります。
戦中については、同編同章「第4節 太平洋戦争中及び戦後の文化財保護行政」のp.17「1 戦時中の保護行政」で国宝、重要美術品等の防空対策について言及されており、「8割の国庫補助のもとに府県によって行われた。」と記述がありました。
・『保存行政関係法規 昭和12年12月1日現在』文部省宗教局保存課編 内閣印刷局 1938
国立国会図書館デジタルコレクションによりインターネットで公開されている資料です。
(http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1124977)
「国宝保存法」等、国宝保存や重要美術品等保存に関する法令例規が収録されています。
巻末の「附録 三 博物館美術館等ニ於ケル出陳物受託規則」に、帝室博物館・遊就館・恩賜京都博物館・大阪市立美術館・鎌倉国宝館の規則もありました。
・『文化財保護の歩み』文化財保護委員会編 文化財保護委員会1960<709.2/17>(11677929)
「第七章 太平洋戦争前後における文化財の保護」のp.84~88「第一節 太平洋戦争中の保存行政」に「一 重要美術品等認定事務並びに名勝天然記念物の指定事務の停止」、「二 国宝重要美術品等の防空施設の実施」等の項目がありました。
・『文化財保護法制定前の文化財の保護をめぐる座談会』文化財保護委員会編 文化財保護委員会 1960<709.2/18>(11677937)
「一、国宝の保護をめぐる座談会」では元文部省関係者等による座談会が記録されており、p.26~33に「戦時中の保存行政」の項がありました。昭和18(1943)年の「国宝重要美術品の防空施設整備要綱」閣議決定前後の動き(昭和16年に国宝防護のための予算が通らず、「宝物類は疎開、建造物は防火施設」という方針の通牒を出したこと等)について記述がありました。
・『わが国土・わが文化財』江口正一ほか著 学芸出版社 1961<709/64 常置>(11676848)
「I.文化財をめぐって」のp.3~14「1.保存の歴史と行政のあらまし」にp.8「国宝保存法と重要美術品等認定物件ノ保存二関スル法律」やp.8~9「太平洋戦争と文化財疎開」等の項目がありました。
p.7「古社寺保存法」の項には、「国宝の命令出品は活用面で、古社寺保存法の当初から考えられ、政府の命令によって社寺はその宝物を官公立の博物館に出品公開する義務を課せられた。現在でもこの伝統をひいて東京・京都・奈良の国立博物館と大阪市立美術館・鎌倉国宝館の5館に、社寺所有の国宝・重要文化財が多く出品されている。」という記述がありました。
○国宝関係博物館事務協議会について
・『保存:随筆』青戸精一著 昭和図書 1942<709.1/98>(22528111)
国立国会図書館デジタルコレクションによりインターネットで公開されている資料です。
(http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1124971)
「序」に、「私が五年近く国宝・史蹟名勝天然記念物等の保存の事業に携はつた間に得た保存事業に関する見聞・感想・意見等の諸記録を纏めたものである。」とあり、戦前の保存行政について記述があります。
p.115~119「保存事業と博物館」(昭和十五年十二月)に「現在この〔国宝保存法第七条による:引用者注〕「命令出陳」の取扱の認められるのは、東京帝室博物館・奈良帝室博物館・靖国神社附属遊就館・恩賜京都博物館・大阪市立美術館・鎌倉国宝館の六館に限られている。」(p.116)等の記述がありました。
p.148~151「国宝出陳の調整」(昭和十六年十月)の最後に、国宝関係博物館事務協議会の検討結果について記述がありました。
・「国宝出陳に対する文部省の統制」『博物館研究』14巻2号 日本博物館協会 p.13 1941-02
※国立国会図書館 図書館向けデジタル化資料送信サービスにて閲覧可
(http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/3462548)
二月廿五日文部省において国宝関係博物館事務協議会が開催されたことについて記載がありました。
※図書館向けデジタル化資料送信サービスにより国立国会図書館の承認を受けた図書館内の指定のパソコン端末で資料を閲覧することが可能です。
当館でご利用を希望される際は、当館ホームページの利用案内ページをご覧ください。
(http://www.klnet.pref.kanagawa.jp/common/guide.htm)
ホーム>利用案内 左端の「デジタル化資料送信サービス」をクリック
(インターネット情報 2017/11/30 最終確認)
- 回答プロセス
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①当館所蔵の文化財保護関係の資料を検索、分類709付近をブラウジング
②CiNiiArticesの論文検索にて「戦前 国宝 保護」をキーワードとして検索、ヒットした資料を確認
③国立国会図書館デジタルコレクションにて「保存」「行政」「国宝」「博物館」等のキーワードを組み合わせて検索、ヒットした資料のうち、新聞記事の掲載年(1941年)頃のものを確認
- 事前調査事項
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「国宝関係博物館事務協議会」については、昭和16年2月26日付け朝日新聞朝刊の「国宝陳列を交流」というタイトルの記事に名前が出てくる(聞蔵Ⅱビジュアルより)。
- NDC
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- 芸術政策.文化財 (709 9版)
- 参考資料
- キーワード
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- 国宝
- 重要美術品
- 文化財保護
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介 事実調査
- 内容種別
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000225636