レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 登録日時
- 2012/01/25 02:00
- 更新日時
- 2012/02/28 18:24
- 管理番号
- 千葉市中央017
- 質問
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解決
稲毛浅間神社の稲毛あかり祭(夜灯よとぼし)が開催されるきっかけとなった、夜とぼし漁について知りたい。
- 回答
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検見川の漁の漁法の一つに、「夜とぼし」の記述がみられた。
夜の干潟や刈田で灯をつけて獲る漁のこと。
夜の漁は主に夏から初冬までで、エビやハゼ、カレイなどを獲った。エビやハゼは「パッチン」という網をかぶせて獲り、ハゼ、カレイは「ヒシヤリ」でついて獲った。
刈田の中では、ドジョウを針でついて獲る漁を行った。
灯りは、灯油のカンテラかアセチレンガスを用い、後には電池の灯りを使うようになった。
- 回答プロセス
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・『千葉市史』、『千葉図誌』で「夜とぼし漁」について調べるも、確認できなかった。
・『けみがわ』P120 検見川の漁業として、「夜とぼし」の説明があった。「夜の干潟や刈田でエビ、ハゼ、カレイ、ドジョウ等を灯りをつけて獲る漁」 「パッチン」の漁具の説明もある。
P119 「エビ掻き」について
漁期は、春の潮干狩りから夏、秋の大潮時。漁場は、花見川が東南沖へ流れ込む印旛澪(いんばみお)と稲毛寄りに流れる大澪の間の干潟。干潟には水溜りが残り、土地の言葉で「ウタリ」と言った。潮に残されたエビやカニなどをエビ掻桁で掻き出して獲った。
・『市原の失なわれた漁撈』P91 「市原各浦の各種漁撈」として、八幡(やわた)・五所(ごしょ)の漁撈区に「夜トボシ(かんてら)漁」の記述あり。「カンテラ(カーバイトランプ)を持って、夜眠る魚を船の上または、徒歩でみつけるとパッチンで獲物を獲った。」
P102 椎津(しいづ)の漁撈区に「パチン漁(カンテラ漁)」の記述あり。「カンテラ漁は、6月終りから7月中旬迄のあいだ椎津では、20人程海老を獲っていたが、本来は禁止の漁であった。」
・『千葉市の漁撈』P41 バッチンの漁法として、「夜カンテラを使用し、エビを見つけると、上からバッチン(バッチンアミ)をかぶせ、バチンと口金を止めて獲る。」
・『千葉市南部の歴史』P78 「昭和二十年前後は」、「秋のかんてら(夜灯しで、つけ針でハゼをとる)も、内湾漁村の風物詩であった。」
・『黒砂いまむかしⅤ』P72 聞き書きによる資料。
P72 「海老掻き 干潮時にウタリ(水溜り)で、エビ・小蟹・小魚などを獲る。」
P76 「黒砂の海は、夜はヨトボシの漁の灯りが遠浅の海面に浮かんで、きれいなものでしたよ。お魚の種類も多かったようですね。私のうちでも新鮮な魚や貝をよく分けてもらったものです。」
・『千葉市いなげ「夜灯」(よとぼし)祭-第4回(’09)・第5回(’10)の社会学的分析と記録-』(千葉大学社会学研究室) より
「稲毛地区は1960年代に埋め立てが行われるまで東京湾に面し、数キロにわたる遠浅の海が広がっていた。秋の新月の夜になると、潮が引いて潮だまりができる。そこにいる小エビや小魚を狙って、住民がカンテラを持って漁を楽しむのが夜灯漁だった。戦時中に米軍機の機銃掃射の目印になるとして行われなくなったとみられる」
・かるた『ふるさとすごろく』に、カンテラの明かりで漁をする様子の絵が描かれている。
更に、「夜灯し漁」という言葉を方言の観点から調査した。
・『房州方言』P86 「とぼす」の意味として、「燃やす、灯りをつける」という房州方言があることがわかった。
・『下総、ことばの風土』P34~P36 流山の農家における「夜灯し」について記載あり。「「夜灯し」あるいは「泥鰌打ち(どじょうぶち)」」は、「子供の遊びのひと時」で、「四月末から五月初め」の宵の口に、「針金で出来た「打っ刺し(ぶっつぁし)」で泥鰌を捕まえたとある。
- 事前調査事項
- NDC
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- 水産業 (660 9版)
- 漁労.漁業各論 (664 9版)
- 参考資料
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- 『千葉市の漁撈』(千葉市教育委員会社会教育部 千葉市教育委員会文化課)(当館請求記号:C664//)
- 『千葉市南部の歴史』(宍倉健吉/原著 千葉市教育委員会)(当館請求記号:C210.1//)
- 『黒砂いまむかし Ⅴ(平成16年度)』(黒砂の資料を保存する会/編 黒砂の資料を保存する会)(当館請求記号:C213//5)
- 『ふるさとすごろく』 第1集~第7集 (生浜公民館社会教育推進会/編 生浜公民館社会教育推進会)(当館請求記号:C384//)
- 『房州方言』(鈴木英之/著 鈴木英之) (当館請求記号:C818.4/スズ/)
- 『下総、ことばの風土』(稲澤秀夫/著 崙書房) (当館請求記号:C818.2/イナ/)
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『千葉市いなげ「夜灯」(よとぼし)祭-第4回(’09)・第5回(’10)の社会学的分析と記録-』(千葉大学社会学研究室)(当館請求記号:C386//)
- 『けみがわ』(検見川郷土史編集委員会 検見川小学校同窓会)
- 『市原の失なわれた漁撈 』(瀧本 平八 市原を知る会事務局)(当館請求記号:C664//)
- キーワード
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- 夜とぼし
- 稲毛
- 漁
- 祭り
- 照会先
- 寄与者
- 備考
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【補足:稲毛あかり祭について】
稲毛あかり祭は、稲毛せんげん通り商店街をはじめとした地域住民(大学生・町内会等)が実行委員会を立ち上げ、行っている。夜灯し漁をモチーフとして、手作り灯籠で浅間通りを飾るお祭りである。2006年から実施され、11月中旬~下旬頃に開催されている。
<稲毛あかり祭について掲載されている資料>
・「稲毛あかり祭 夜灯(よとぼし)[第2回]~第6回」パンフレット
・「千葉市いなげ「夜灯」(よとぼし)祭-第4回(’09)・第5回(’10)の社会学的分析と記録-」(千葉大学社会学研究室 2011)
・「mi-ru-to 千葉市2011年保存版 Actiz 稲毛区」(ゼンリン 2011)P7 稲毛あかり祭り夜灯
・「千葉市Walker 2010」
・「千葉とっておき 2011」 P15
・「ちばシティガイド 稲毛海岸物語」
・「新・がんばる酒店外77選 地域コミュニティの担い手をめざして」
・各新聞記事、あでるは、ぐるっと千葉など
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000100499