レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2019年06月05日
- 登録日時
- 2019/06/10 17:00
- 更新日時
- 2019/07/17 12:29
- 管理番号
- 1723
- 質問
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解決
「おんぶ」について調査したい。歴史的、民族的、教育的な意味、現代のおんぶ事情、日本vs外国、おんぶグッズなど。
- 回答
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「おんぶ」に関する資料
【定義】
▼『世界大百科事典4』 平凡社 P481~482
赤ん坊を背負う習慣は、広く、アジア諸国、アフリカ、南太平洋諸島、アメリカ・インディアンの諸部族等に見られるが、欧米にはない。
背負い方は、地域及び部族によって異なる。例えば、アフリカのある部族は母親のしりに乗せ、アメリカ・インディアンは額から背に背負子をつるし、これに赤ん坊を後ろ向きにくくりつける。日本では、すでに縄文中期の土器、古墳時代の人物埴輪、平安後期の≪年中行事絵巻≫にも子どもを背負ったものが見られる。江戸時代以前の背負い方は今日とは異なり、母親の着物の中に赤ん坊を入れる。さらに着物の上から赤ん坊のおしりの部分に<タナ>(反縄の略)と呼ばれる幅広の布をかけ、前で結ぶ場合もある。また来日した欧米人(L.フロイス、E.S.モース等)は、幼い少女が赤ん坊を背中にひもでくくりつけていることを報告している。こうして赤ん坊は年長の子どもの遊びに加わり、また大人たちの生活と文化とを学んだ。しかも赤ん坊は、母や祖母の肌のぬくもりに触れることによって情緒的満足を得られ、母親は赤ん坊を満足させつつ家事や仕事ができた。
明治以降、西欧式育児法が移入され、おんぶは乳幼児の心身の発達に害があるという疑問が出され、おんぶは胸と腹を圧迫し、手足の血液循環をさまたげ、運動不足になるという報告(1944)も出された。しかし昭和40年代以降、自閉症児の発生などから西欧式育児法一般に対する反省がおり、在来の育児法が見直される中で、おんぶは赤ん坊を運搬する安全な方法として、家事とスキンシップとを両立させる方法として、長時間でなければよいとされるようになった。
【歴史】
▼『逝きし世の面影』 渡辺京二/平凡社
第十章 子どもの楽園 P390、404~406
貧しい家庭の幼な児のほうがおんぶされる時期が早く来る。子どもが母親の背からおりるようになって第一にする仕事は、弟や妹の子であったため、子どもに背負われた子どもや、子どもを背負った子どもが街中でみられた、などの記述あり。 他、日本のくらしの歴史についてかかれている。
▼『怪異と身体の民俗学』 安井眞奈美/せりか書房
第5章 おんぶと抱っこの変容 P137~169
おんぶの特徴や乳幼児との関係、おんぶが減少した要因、おんぶとだっこの違い、大人をおんぶする習慣などが書かれている。
第8章 狙われた背中 P235~252
身体論と妖怪、怪異譚など「背負う」「背負われる」に着目した妖怪、怪異についても記述有。
▼『日本の子ども60年』 日本写真家協会/新聞社 P15,P58
昔のおんぶの写真、絵の記載あり。
▼『日本のこどもたち1』 歴史教育者協議会/日本図書センター PⅢ,P22,P51
昔のおんぶの写真、絵の記載あり。
▼『朝日新聞DB「聞蔵Ⅱビジュアル」』
1931年11月18日通常号が写真としてみることができる。(別紙1)
【世界では・・・】
▼『季刊銀花 第129号』 文化出版局 P88~95
おんぶの習慣がある中国貴州省でのリポート掲載。
日本とは違うおんぶ帯をみることができる。
▼『世界こども大学事典』 ポーラ・S.ファス(編)、北本正章(監訳)/原書房 P739,741,895(おんぶ版)
16世紀にヨーロッパからの侵略者がアメリカに到達しはじめた頃、最初にヨーロッパ人の影響を受けたウッドランド・インディアン(北東お よび北西部の人々)。ヨーロッパからの観察者たちがインディアンの育児を見て感動を覚えたという。その頃のヨーロッパの上流階級では自分の子どもを乳母のもとへ送り出し母親が子育てをするという文化がなかった。乳児死亡率が高いがインディアンたちは母乳育をしていた。子もどはその間母親のすぐ近くにとどまっており、おんぶ板にしばりつけられて運ばれていた。写真も確認できる。背負うのではなくおんぶについている紐を頭につけるのだそう。
▼『世界のだっことおんぶの絵本』 エメリー・バーナード(文)、ドゥルガ・バーナード(絵) 仁志田博司、園田正世(監訳)/メディカ出版
世界でのだっこ、おんぶの習慣、方法について絵本で見ることができる。
巻末にはこの本に登場した人々がどのような生活を営んでいるのか詳しく書かれている。
【効能・効果】
▼『免疫力をあげる子育て法』 安保徹、西原克成、真弓定夫/実業之日本社 P46~47
▼『あやす・あそぶ2』 藤田浩子(編著)、保坂あけみ(絵)/一声社 P22
▼『おんぶで整うこころとからだ』 松園亜矢/駒草出版
▼『ひよこクラブ』2018/12号 P158~163
▼『AKAGO テキスト版1』子育ての文化研究所 P16~
すべて重複する内容あり。おんぶを絶対した方がよい!という内容のものはあまりないがスキンシップのひとつとして取り入れていくと良い。
おぶられることにより、大人の目線と同じになることで脳の発達を促す。両手を使えるので便利、というような内容が主。
【その他】
▼『定本育児の百科』松田道雄/岩波書店 P229-230
おんぶについて網羅されているが著者の意見がかなり盛り込まれている・・・。
▼『泣いて、笑って、昭和の子育て』全国老人クラブ連合会 P98~99
自身の子育てで積極的におんぶをしていた方の子育てエッセイ。
▼『サルの子育てヒトの子育て』中道正之/KADOKAWA P140~145、170~178
サルとヒトの類似性についての本。かなりサルについての記述が多いがサルとヒトの共通点としておんぶと抱っこが挙げられている。
▼『スリングで抱っこ』ふじわらよしこ/雄鶏社 P13
スリングは基本抱っこで使用するものだが、こちらはスリングでおんぶをする方法も載っている。
▼『最新月齢ごとに「見てわかる!」育児新百科』松井潔/ベネッセコーポレーション P136
おんぶをしすぎるとO脚になる?という質問に対しての回答。
おんぶと足の形は関係なし。赤ちゃんの足の変化は誰にでも起こり、3歳~少しずつ戻るものなので気にせずおんぶしてあげて、と書いている。
▼『アロマザリングの島のこどもたち』根ケ山光一/新曜社
アロマザリング(母親以外による子育て)が島全体で行われている。小学生くらいの子どもが幼児をあやしている姿がよく見られる。
おんぶのことが直接書かれているわけではないが、掲載されている写真が子どもが幼児をおんぶしている姿が多い。
【DB利用により確認できたおんぶについての記事、論文等】
▼国立国会図書館デジタルコレクション
『子どもの「運搬」における身体的負担』 犬飼博子
日本家政学会誌Vol.49 №11(別紙2参)
『望ましい子守帯についての一考察 -子守帯の変遷と使用状況から-』
名古屋大学医学部保健学科教育・研究年報1(別紙3参)
▼中日新聞・東京新聞データベース(別紙4参)
『2017/07/09 中日新聞朝刊24頁』
『2011/07/14 中日新聞朝刊18頁』
『2016/10/14 中日新聞21頁』
『2017/07/01 中日新聞朝刊18頁』
『2018/07/11 東京新聞朝刊20頁』
『2019/04/11 中日新聞27頁』
▼聞蔵Ⅱビジュアル:朝日新聞記事データベース(別紙5参)
『2007/06/12 朝刊17頁』
『2016/02/09 朝刊20頁』
『2017/06/26 朝刊25頁』
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
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- 通過儀礼.冠婚葬祭 (385 9版)
- 育児 (599 9版)
- 社会教育 (379 9版)
- 参考資料
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渡辺京二 著 , 渡辺, 京二, 1930-. 逝きし世の面影. 平凡社, 2005. (平凡社ライブラリー ; 552)
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000007974758-00 , ISBN 4582765521 -
安井眞奈美 編著 , 安井, 眞奈美, 1967-. 怪異と身体の民俗学 : 異界から出産と子育てを問い直す. せりか書房, 2014.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I025961301-00 , ISBN 9784796703376 -
歴史教育者協議会/編 , 歴史教育者協議会. 写真絵画集成日本の子どもたち : 近現代を生きる 1. 日本図書センター, 1996.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I026573434-00 , ISBN 4820562886 -
ポーラ・S・ファス 編 , 北本正章 監訳 , Fass, Paula S., 1947- , 北本, 正章, 1949-. 世界子ども学大事典. 原書房, 2016.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I027728503-00 , ISBN 9784562053322 -
エメリー・バーナード文 ; ドゥルガ・バーナード絵 ; 仁志田博司, 園田正世監訳 , Bernhard, Emery , Bernhard, Durga , 仁志田, 博司 , 園田, 正世. 世界のだっことおんぶの絵本 : だっこされて育つ赤ちゃんの一日. メディカ出版, 2006.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000096-I002910260-00 , ISBN 4840418357 -
安保徹, 西原克成, 真弓定夫著 , 安保, 徹 , 西原, 克成 , 真弓, 定夫. 免疫力をあげる子育て法 : かしこく元気な子どもをつくる本当の知識. 実業之日本社, 2012.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000096-I006058838-00 , ISBN 9784408453774 -
藤田浩子 編著 , 保坂あけみ 絵 , 藤田, 浩子, 1937-. あやす・あそぶ 2. 一声社, 2003. (人と人とのかかわりを育てる ; 赤ちゃん編)
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000004368144-00 , ISBN 4870771772 -
松園亜矢 著 , 松園, 亜矢. おんぶで整うこころとからだ. 駒草出版, 2018.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I029045953-00 , ISBN 9784905447986 -
松田, 道雄(1908-1998) , 松田, 道雄(1908-1998). 育児の百科 : 定本. 岩波書店, 1999.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I090074933-00 , ISBN 4000098500 -
中道正之 [著] , 中道, 正之, 1955-. サルの子育てヒトの子育て. KADOKAWA, 2017. (角川新書 ; K-150)
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I028387471-00 , ISBN 9784040821313 - ふじわらよしこ. スリングで抱っこ. 雄鶏社. , ISBN 9784277431002
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ベネッセコーポレーション, 風讃社 編. 最新月齢ごとに「見てわかる!」育児新百科mini : 新生児期から3才までこれ1冊でOK!. ベネッセコーポレーション, 2016. (ベネッセ・ムック. たまひよブックス. たまひよ新百科シリーズ)
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I027763278-00 , ISBN 9784828868196 -
根ヶ山光一著 , 根ヶ山, 光一. アロマザリングの島の子どもたち : 多良間島子別れフィールドノート. 新曜社, 2012.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000096-I003721353-00 , ISBN 9784788513174 - 世界大百科事典4. 平凡社. (当館請求記号 031/ヘイ, 当館資料番号 000327403)
- 日本写真家協会. 日本の子ども60年. 新潮社. , ISBN 4103005513
- 季刊銀花 第129号. 文化出版局. (当館請求記号 384.5/ブン/CS, 当館資料番号 007157886)
- ひよこクラブ 2018/12号. (当館資料番号 007507486)
- AKAGOテキスト版1. 子育ての文化研究所. (当館請求記号 599/コソ/CS, 当館資料番号 007342926)
- 泣いて、笑って、昭和の子育て. 全国老人クラブ連合会. (当館請求記号 379.9/ナイ/CS, 当館資料番号 007143654)
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国立国会図書館
http://dl.ndl.go.jp/
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渡辺京二 著 , 渡辺, 京二, 1930-. 逝きし世の面影. 平凡社, 2005. (平凡社ライブラリー ; 552)
- キーワード
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- おんぶ
- 子守帯
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- スリング
- 子育て
- 乳児
- お母さん
- 一般書
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介 事実調査 所蔵調査
- 内容種別
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000257224