レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2015/08/13
- 登録日時
- 2015/12/11 00:30
- 更新日時
- 2015/12/11 00:30
- 管理番号
- 6001010940
- 質問
-
解決
「出産前後の里帰り」について、その是非や効用について書かれた資料を探しています。
親世代とは環境がずいぶん違ってきているので、特に家事や育児についてできるだけ新しいものを探しています
インターネットでは数多くのサイトが出てくるのですが、できたら図書や雑誌で当事者の「その結論にいたった考え方」や、「実際に里帰りした/しなかった」という統計があれば読んでみたいです。
- 回答
-
出産・育児環境も大きな変化があるため、当館の蔵書から2001年以降に出版された資料を探しました。
なお、著名人の「出産・子育てエッセイ本」も探しましたが、「出産前後、里帰りした/しなかった」「何故そちらを選んだのか」という点にも触れた内容のものは所蔵していませんでした。
1.『ニッポン人の暮らしの統計: 2004年版生活者アンケート編』(日本能率協会総合研究所/編 生活情報センター 2004.8)当館請求記号【365.5/67N】貸出不可
※図書には図表だけ掲載されていますが、次のサイトからは解説文もご覧いただけます。
森永乳業「赤ちゃんのことならなんでもエンゼル110番」エンゼル110番レポート
2003年12月15日 Vol.41 ママたちの育児スタート ? 産後に望む支援サービス?(2015/8/12現在)
http://www.angel110.jp/press/angel/pdf/report031215vol41.pdf
第3章 育児・子供・教育に関するデータ
2.育児支援(p.174-175)
森永乳業(株)「ママたちの育児スタートー産後に望む支援サービス」
2003年8月~10月調査、「エンゼル110番」に電話してきた2歳未満の子どもがいるお母さん100人への電話による聞き取り調査
■出産後は「妻の実家」で過ごす人が約7割。「自宅派」は2割に。
図表3-2-1 産後1カ月間をどこで過ごしたか
妻の実家71%、自宅20%、親と同居5%、夫の実家4%
図表3-2-2 里帰りor自宅を選んだ理由(複数回答)
一人では不安、体を休めたい、ゆっくりしたい: 里帰り派34%、自宅派1%
人手がある: 里帰り派12%、自宅派6%
夫が忙しい、転勤族、単身赴任: 里帰り派11%、自宅派1%
帝王切開、切迫流産、双子、ママに持病あり: 里帰り派7%、自宅派1%
両親からの勧め: 里帰り派6%、自宅派-
実家に帰れない理由あり: 里帰り派ー、自宅派9%
実家が遠い: 里帰り派ー、自宅派5%
夫婦、新しい家族の結束を重視: 里帰り派ー、自宅派5%
その他: 里帰り派4%、自宅派4%
2は統計はありませんが、アンケートにより女性7人の意見が掲載されています。
2.『21世紀のお母さんお父さんに贈るお産サイドブック 2』(あんふぁんて・お産本グループ/編 あんふぁんて出版部 2002.3)【598.2/129N】貸出可
※「はじめに」によると、「前回の本(注:1のこと)は・・・・・、今回も『あんふぁんて』という子連れ女性のグループが1997年に『あんふぁんてのお産本作成のためのアンケート』を実施・・・・全国の会員を中心に800部配布し、530部回収。そのほか27年間で延べ6859名の会員をつないできた『あんふぁんて』の会報276号分に寄せられたお産体験やお産特集、追加の補充アンケートからもピックアップしてつくりました。」とのことです。したがって、内容は必ずしも2001年以降だけとは限らないようです。
「里帰り出産のプラスとマイナス」(p.40-42)
里帰り出産とそれ以外について、それぞれプラスとマイナスの説明があり、以下のタイトルに続けて7人の意見が名前入りで紹介されています。
・里帰り出産は夫との間にみぞができる気がする
・夫婦2人の力で自宅近くのいい病院を見つけた
・里帰りせず、自宅近くの助産院で夫と娘の立会いで出産
・夫を巻き込んで正解、育児にも自発的に参加してくれる
・3人目は夫と友人に支えられた
・出産直前姑と家に帰ってしまった夫
・私は実家に里帰り、夫は自宅から励ましてくれた
2の「アンケート」「体験談」という点から、3・4・5・6の雑誌に特集や連載があるかと考え、次の目次データベースにより「里帰り」をキーワードに検索しました。しかし、この雑誌自体が目次を採録する対象にはなっていませんでした。
3.『たまごクラブ』(福武書店)
4.『初めてのたまごクラブ』(福武書店)
5.『ひよこクラブ』(福武書店)
6.『増刊ひよこクラブ』(福武書店)
目次データベース: インターネット検索できるもの
・NDL-OPAC雑誌記事検索(国立国会図書館)
目次データベース: 大阪府立図書館契約データベース
・CiNiiArticles(国立情報学研究所)
・マガジンプラス(日外アソシエーツ)
・雑誌記事索引記事データベース(皓星社)
・ELNET(エレクトロニックライブラリー)
・Web OYA-bunko(大宅文庫)
出版社「福武書店」のホームページからは在庫がある巻号についての目次情報しか見ることができなかったため、Fujisan.co.jp(雑誌のオンライン書店)から目次情報を探しました。次の2件の記事が、ご依頼の内容に近いと推察されます。
3.『たまごクラブ』(2014年7月号)
◇妊娠中からやっておきたい7つのこと「里帰りする人×里帰りしない人」(2015/8/12現在)
http://www.fujisan.co.jp/product/1581/b/1090136/
2011年1月号まで遡って目次情報あり。当館は所蔵していないため、内容は未確認です。
5.『ひよこクラブ』(2015年5月号)
◆“第1子”の育て方 後悔&正解(2015/8/13現在)
http://www.fujisan.co.jp/product/2166/b/1219819/
2011年1月号まで遡って目次情報あり。当館は所蔵していないため、内容は未確認です。
『初めてのたまごクラブ』は2012年秋号まで、『増刊ひよこクラブ』は2013年7月号まで遡って目次情報を見れましたが、御依頼の内容と推察できる記事は見つけられませんでした。
6.『AERA with baby』(朝日新聞出版)
出版社「朝日新聞出版」のホームページから、品切れも含めてVol.1(創刊号 2007.1)まで遡って目次情報を見ることができました。次の2件の記事が、ご依頼の内容に近いと推察されます。
Vo.1(2007.1)
「親の言うこと、素直に聞いてますか 子育て世代間ギャップをどう乗り越える?」(2015/8/12現在)
当館所蔵あり 【599/354N】貸出可
Vo.2(2007.7)
「団塊グランマ vs 団塊Jr.ママ どうして生まれる?子育て世代間ギャップ」(2015/8/12現在)
当館は所蔵していないので、内容は未確認です。豊中市立野畑図書館が所蔵されています。貸出可。
同じく「アンケート」「体験談」という点から、新聞の生活面・家庭面に「特集」「連載」があるかもしれないと考え、当館契約の7・8・9・10のデータベースを「里帰り」のキーワードで2001年以降を検索しました。しかし、御依頼の内容の記事は見つけられませんでした。
7.朝日新聞「聞蔵」
8.読売新聞「ヨミダス歴史館」
9.毎日新聞「毎策」
10.産經新聞「Sankei archives」
しかしながら、9の毎日新聞の連載「おーい父親」(汐見稔幸著 2002.8.2 東京朝刊 12頁 家庭)に「脱”里帰り出産” 2人で担う姿勢が大事」という記事がありました。著者の近所の若いご夫婦の出産お祝いに訪問したところ、夫もできるだけ休暇をとって子どもを見ている様子がほほえましく、それは里帰り出産をしなかったからだったとのこと。以下、簡単に引用します。
※著者は教育学者で、執筆当時は東京大学教授をされていました。
「私の妻は今大学院の学生だが、修士論文で、子どもを産んだカップルの親密度が、出産を機に増すのかどうかを聞き取り調査した。その結果、里帰り出産をしたカップルは、おしなべて出産後、夫婦の親密度が高まっていないという結果であった。逆に自分たちで出産・育児を担ったカップルは親密度が上がっていたのだ。」
「考えられるのは、妊娠期の母体保護、出産準備、出産後の育児などすべてをカップルで担っていこうとする姿勢が、里帰り出産組には相対的に弱いのではないかということだ。」
「この体験は私にもある。里帰りだと、どこか出産・育児はまず私の仕事だという感覚から離れてしまう。出産・子育ての責任はまず私にあると感じない自分がいるのだ。しかし、すべてを自分たちでやるのだとなると、まちがいなく姿勢が違ってくる。」
なお、引用文中の「妻」とは、現在、新渡戸文化短期大学教授の汐見和恵氏。立教大学社会学研究科で修士論文『親への移行期における夫婦関係―面接調査による事例分析を通じた夫婦関係類型化の試みー』(2000年1月)を執筆されています。
汐見和恵教授プロフィール(新渡戸文化短期大学)(2015/8/12現在)
http://www.nitobebunka.jp/teachers/child-life/shiomi.html
※論文自体は、インターネット検索をしましたが見つけられませんでした。
また、この記事を受けて「思わぬ反響があった」として、「脱“里帰り出産”再考 夫の育児参加の出発点に」(2002.08.23 東京朝刊 13頁 家庭)も続けて執筆されています。以下、簡単に引用します。
「・・・・・自分は里帰り出産をしてたいへん助かったというもの。里帰りをしなければ産むことができなかったという人のことも考えろという批判だ。」
「・・・・・里帰り出産をしなくてもすむのは、夫がいっしょに出産を担おうとするという場合だけで、そうでないときは産んだ女性がかえってたいへんなのだという批判もあった。近所に助けてくれる人がいるという条件が必要という意見も。」
「私が問題にしたかったのは、子どもを産むときは里帰りをして、母親の実家で産むのが当然あるいは自然という考え方が、日本人には疑われていないのではないか、ということだった。」
「特に父親には、子どもを産むということを、自分の問題として真剣に担ってほしいという気持ちがある。出産前後、妻はどういう不安を持っているのか、夫としてやれることは何か、生まれたら父親として何をすればよいのか等々、それをいっしょになって考え乗り切っていけば、おのずと夫婦の親密性は高まっていくし、その後の育児もできるだけ協力してやろうという夫婦が増えていくのではないか。」
として、労働時間の短縮を提案され、「できるだけ自分たちで、それがかなわないときのみ里帰りで。こういう原則こそが夫婦関係を発展させ、楽な育児を生みだしていくように思う。」と結論付けられています。
この2点は、連載をまとめた『お~い父親 Part2: 夫婦篇』(汐見稔幸/著 大月書店 2003.9)のp.44-47で読むことができます。
なお、「里帰り出産(分娩)」とその後の「実家滞在」は日本の伝統的な慣習らしく、長期間にわたる家族別居が原因の「父子愛着」「夫婦関係」への影響について、古くから母性看護学・母子保健学・発達心理学・教育心理学・フェミニズム等の視点から学術研究の対象とされてきたようです。
前述の目次情報データベース「CiNiiArticles」をキーワード「里帰り」で検索した結果から、PDFでご覧いただける論文をご紹介します。
11.「出産・子育て体験が親の成長と夫婦関係に与える影響」予備的研究、(1)-(8)
(田村毅[ほか]/著 『東京学芸大学紀要. 第6部門, 技術・家政・環境教育』 V.52-56,2000.11-2004.11)
全9件のうち、(4)から(8)をPDFでご覧いただけます。バナー「CiNii外部リンク」をクリックしてください。(2015/8/12現在)
http://ci.nii.ac.jp/search?range=0&title=%E5%87%BA%E7%94%A3%E5%AD%90%E8%82%B2%E3%81%A6%E4%BD%93%E9%A8%93%E3%81%8C&nrid=&count=20&sortorder=1&type=1
このうち、参考にしていただけるのは次の3件かと思われます。
(4)「第一子出生後の夫婦関係の変化と子育て」の「6.まとめと今後の課題」(p.121-122)
(5)「里帰り分娩との関連」の「まとめ」(p.130)
(6)「家族形態別にみた生活の変化と夫婦関係」の「考察」(p.28-29)
これ以外にも、当事者へのインタビューやアンケートの結果等も掲載されているため、参考になるかと思われます。
また、大阪府立中央図書館ではPDF化されていない4件についても、『東京学芸大学紀要. 第6部門, 技術・家政・環境教育』V.52とV.54を所蔵しております。
12.「育児初期の母親の育児支援のあり方に関する検討 : 「産後の里帰り」経験に焦点をあてて」(南貴子[ほか]/著 『日本家政学会誌』 V.57(12), p.807-817, 2006.12)(2015/8/12現在)
http://ci.nii.ac.jp/naid/110005717598
※バナー「CiNii論文 PDFアクセス」をクリックしてください。「4.考察」が参考になるかと思われます。
13.「出産に関わる里帰りと養育性形成」(小林由希子、陳雀仁著 『北海道大学大学院教育学研究院紀要』 (106) p. 119-134, 2008)(2015/8/12現在)
http://ci.nii.ac.jp/search?range=0&title=%E5%87%BA%E7%94%A3%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%82%8F%E3%82%8B%E9%87%8C%E5%B8%B0%E3%82%8A%E3%81%A8%E9%A4%8A%E8%82%B2%E6%80%A7%E5%BD%A2%E6%88%90+&nrid=&count=20&sortorder=1&type=1
2件の論文が出てきますが、1のバナーは2つとも有料のため、2のバナー「機関リポジトリ」をクリックしてください。
北海道大学学術成果コレクションHUSCAP>バナー「pdf」か「見る/開く」をクリックしてください。
「4.まとめ:結論」が参考になるかと思われます。
さて、今回の調査では、次のことがわかってきました。
1)日本では、「里帰り出産(分娩)」とその後の「実家滞在」は伝統的な慣習であること。
2)しかし、プラス面とマイナス面があること。
3)特に、長期間にわたる家族別居が原因の「父子愛着」「夫婦関係」への影響について、多分野から学術研究の対象とされてきたこと。
4)近年では働く女性の増加により、妊婦の母親世代も職業を持っている場合が増えてきたこと。その一方で。高齢出産の増加により、妊婦の母親世代の支援が得にくくなってきていること。
5)3)を未然に防止し、4)を補完するためにも、夫も家事・育児に関われるように働き方をかえていったほうがよいこと、
6)同時に、外部環境である「家事・育児の支援サービス」として公的・民間のサービス事業のより一層の充実が必要になってきていること。
[事例作成日: 2015年8月13日]
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
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- 家庭衛生 (598 8版)
- 参考資料
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- ニッポン人の暮らしの統計 2004年版生活者アンケート編 日本能率協会総合研究所∥編集 生活情報センター 2004.8 (174-175)
- 21世紀のお母さんお父さんに贈るお産サイドブック 2 あんふぁんて・お産本グループ∥編集 あんふぁんて出版部 2002.3 (40-42)
- お~い父親 Part2 汐見/稔幸∥著 大月書店 2003.9 (44-47)
- http://www.angel110.jp/press/angel/pdf/report031215vol41.pdf (森永乳業「赤ちゃんのことならなんでもエンゼル110番」エンゼル110番レポート 2003年12月15日 Vol.41 ママたちの育児スタート ? 産後に望む支援サービス?(2015/8/13現在))
- http://www.fujisan.co.jp/product/1581/b/1090136/ (『たまごクラブ』(2014年7月号)◇妊娠中からやっておきたい7つのこと「里帰りする人×里帰りしない人」(2015/8/13現在))
- http://www.fujisan.co.jp/product/2166/b/1219819/ (『ひよこクラブ』(2015年5月号)◆“第1子”の育て方 後悔&正解(2015/8/13現在))
- http://ci.nii.ac.jp/search?range=0&title=%E5%87%BA%E7%94%A3%E5%AD%90%E8%82%B2%E3%81%A6%E4%BD%93%E9%A8%93%E3%81%8C&nrid=&count=20&sortorder=1&type=1 (「出産・子育て体験が親の成長と夫婦関係に与える影響」予備的研究、(1)-(8)(田村毅[ほか]/著 『東京学芸大学紀要. 第6部門, 技術・家政・環境教育』 V.52-56,2000.11-2004.11)(2015/8/13現在))
- http://ci.nii.ac.jp/search?range=0&title=%E5%87%BA%E7%94%A3%E5%AD%90%E8%82%B2%E3%81%A6%E4%BD%93%E9%A8%93%E3%81%8C&nrid=&count=20&sortorder=1&type=1 (「育児初期の母親の育児支援のあり方に関する検討 : 「産後の里帰り」経験に焦点をあてて」(南貴子[ほか]/著 『日本家政学会誌』 V.57(12), p.807-817, 2006.12)(2015/8/13現在))
- http://ci.nii.ac.jp/search?range=0&title=%E5%87%BA%E7%94%A3%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%82%8F%E3%82%8B%E9%87%8C%E5%B8%B0%E3%82%8A%E3%81%A8%E9%A4%8A%E8%82%B2%E6%80%A7%E5%BD%A2%E6%88%90+&nrid=&count=20&sortorder=1&type=1 (「出産に関わる里帰りと養育性形成」(小林由希子、陳雀仁著 『北海道大学大学院教育学研究院紀要』 (106) p. 119-134, 2008)(2015/8/13現在))
- キーワード
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 統計データ
- 質問者区分
- 個人
- 登録番号
- 1000185468