レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2018年07月05日
- 登録日時
- 2018/12/16 16:12
- 更新日時
- 2018/12/18 10:48
- 管理番号
- 千県中参考-2018-07
- 質問
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解決
放電電圧がどれくらいだと人は死亡するのか、職場で安全について研修するための資料がほしい。
- 回答
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電圧とは「電気を流す圧力のようなもので、電気を水の流れにたとえると、電圧は水の落差[水圧]に相当する」(コトバンク「電圧」(https://kotobank.jp/word/%E9%9B%BB%E5%9C%A7-102030))もので、感電の「損傷の程度は、電流の強さ、通電時間、電流の通路によって決まる」(【資料9】)とされていた。
資料によって細部の記述が異なるが、電流量(mA・ミリアンペア)で危険を示す次のような資料があった。
【資料1】『日本大百科全書 6』(小学館 1985)(9102882008)p246「感電」
※コトバンク「感電」(https://kotobank.jp/word/%E6%84%9F%E9%9B%BB-49313)にも記載あり。
「電撃による傷害には個人差があるが、10ミリアンペアで痛みを感じ、20ミリアンペアでは筋肉が激しく収縮し、50ミリアンペアを超えるとやけどを生じて感電死することもある。生体が充電部に接触した部分と大地にアースした部分により、電流が体内を通過する部位が異なり、傷害の程度に差が生ずる。とくに心臓に電流が通過したときは、死亡率がきわめて高く危険である。」としている。
【資料2】厚生労働省「職場のあんぜんサイト:感電[安全衛生キーワード]」(http://anzeninfo.mhlw.go.jp/yougo/yougo74_1.html)
2 人体への影響
・人体を通過する電流の危険性の判定として、ドイツの「ケッペンの実験」を紹介。
「ケッペンは、「大きな電流であれば短時間の人体通過でも危険であり、小さな電流であれば長時間の人体通過も危険でない」との考えに基づき、「人体通過電流[mA]×通過時間[s]=一定」であることを見出しました。そして、様々な検証を経て、人体通過電流の安全限界として、電流時間積を50[mA・s]とすることを提唱しました」とし、ヨーロッパや日本では更に厳しく安全限界を30[mA・s]としているとある。
・「人体への通過電流値と影響」の表を掲載。
電流値を0.5mA~1mA、5mA、10~20mA、50mA、100mAで分けて解説し、50mAの項目に「心室細動電流の発生ともいわれ、心肺停止の可能性も」との記載がある。
【資料3】公益社団法人 日本電気技術者協会「感電災害の防止対策 | 音声付き電気技術解説講座」 (https://www.jeea.or.jp/course/contents/10102/)
・第一表「人体への通過電流値と影響」は50mAの危険性の記載等は【資料1】【資料2】とほぼ同様だが、1mA、5mA、10~20mA、50mA、100mA~3A、6A以上で分けている。
・第1図「商用周波数の交流に対する人体反応曲線」掲載。
【資料4】『労働安全衛生管理実務便覧 安全衛生担当者必携』(増本清編著 労働調査会 2013)
「2-5電気災害防止」「(1)感電事故のしくみ」に「(前略)電流の経過時間によって、心臓が小刻みに震えだし、遂には鼓動が停止する。心臓が震える心室細動に必要な電流は、50から100ミリアンペア(5ワットの白熱電球に流れる電流が50ミリアンペア)」とある(p129)。
【資料5】『新しい時代の安全管理のすべて』(大関親著 中央労働災害防止協会 2011)
「第6章電気災害の防止」1電撃(感電)(1)電撃の危険性に記載あり(p551-557)。
・電流の値については、最小感知電流、苦痛電流、不随電流または離脱電流、心室細動電流に分けて危険性を解説している。不随電流について「電撃を受けていることの意識ははっきりしているが、自力でその電源から離脱できなくなり、長い時間の通電と苦痛の結果、呼吸困難になって意識を失ったり、窒息死することがあるといわれている」と危険性を指摘。
・表「動物の心室細動を起こす電流値」を掲載。「人間については、IEC(国際電気標準会議:International Electrotechnical Commission)が3~10秒の通電で、許容限界は交流で40mAといっている」とある。
・「電撃危険に対する安全電圧」として、表「各国の安全電圧」を掲載。「わが国では、安全電圧とは称していないが、特別教育を必要とする業務(安衛則第36条)の中で、対地電圧が50V以下のものは除外されているので、これを安全電圧とみなしても差し支えないと考えられる」とある。
【資料6】『目で見てわかる稼げる電気保全』(竹野俊夫著 日刊工業新聞社 2012)
「1-4感電の防止」に「人体に電流が流れるとどうなる」に解説があり、「(前略)電流が25~50mA前後で強い痙攣を起こし、失神し長時間の感電では死亡する可能性もあります。電流が50mA以上では、心肺停止ややけどにより死亡する可能性が極めて高くなります」とある(p13)。
【資料7】『安全衛生用語辞典』(中央労働災害防止協会編 中央労働災害防止協会 2005)
p150 「感電」
p151 表「電流の大きさと人体への影響」掲載。
「感知電流、少しちくちくする」「苦痛を伴わないショック、筋肉の自由がきく」等電撃の影響を7つのレベルに分け、直流と交流(60Hz・10,000Hz)について男女別に、電流の大きさを記載している。
【資料8】『よくわかる!管理・監督者のための安全管理技術 実践編 管理と技術のココがポイント』(梅崎重夫著 日科技連出版社 2011)
p38 表「交流電流(周波数:15Hz~100Hz)に対する人体の反応」掲載。IEC60479-1に定められているとあり、国際電気標準会議(IEC)の標準規格を引用している。IECについては国立国会図書館リサーチナビ「IEC規格」(http://rnavi.ndl.go.jp/research_guide/entry/theme-honbun-400391.php)を参照。
【資料9】『世界大百科事典 6』平凡社 2007)p448「感電」
乾燥しているか湿潤しているかどうかや、体の部位によって危険性が異なることを数値で示し、「安全な電圧を明確に求めるのは難しいが、いちおう24Vが安全限界とされている」としている。
(インターネット最終アクセス:2018年9月27日)
- 回答プロセス
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百科事典【資料1】を参照した後、NDC54(電気工学)の書架を確認したが見つけられず。
NDC598.3(家庭医学)の辞典類には、感電した場合の対応は書いてあるが数値は掲載されておらず。
googleで「感電 人体」をキーワードに検索し、【資料3】を発見。より公的なものがないかと、「感電 site:go.jp」で検索し、【資料2】を発見。
図書資料で探しているとのことなので、全項目「労働衛生 電気」で蔵書検索し、検索結果資料の分類からNDC509.8(工業災害、労働災害、工場安全)の当館開架の書架を確認したところ、【資料4】~【資料6】が見つかった。後日、同様の調査方法で西部図書館所蔵の【資料7】【資料8】を追加した。
なお、事例掲載にあたり、電圧と電流の違いをコトバンク「電圧」および【資料9】で確認し補記した。
その他
『電線のスズメはなぜ感電しない 電気&絶縁の初歩の初歩』(速水敏幸著 講談社 1991)(9103417942)<540/H47> p250-255
→『電気用品に関する安全』という技術報告を引用、表8ー2 人体に対する電流の限界値
このほか、以下の資料には記載が見つけられなかった。
『人間の許容限界ハンドブック』(関邦博[ほか]編集 朝倉書店 1990)(9102914353)<5018/N76>
『人間の許容限界事典』(山崎昌廣編集 朝倉書店 2005)(0105894365)<49036/2>
事典の序によると、「執筆者のほとんどは異なっているので、同じ項目であっても別の観点からの「人間の許容限界」となっている」とあり、両者読み比べることを推奨している。両者とも索引に「感電」なし。
- 事前調査事項
- NDC
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- 工業.工業経済 (509 9版)
- 参考資料
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【資料1】『日本大百科全書 6』(小学館 1985)(9102882008)<031/N71/6>
※書誌情報の後に当館資料番号()と当館請求記号<>を記した。以下同じ。 - 【資料2】厚生労働省「職場のあんぜんサイト:感電[安全衛生キーワード]」(http://anzeninfo.mhlw.go.jp/yougo/yougo74_1.html)
- 【資料3】公益社団法人 日本電気技術者協会「感電災害の防止対策 | 音声付き電気技術解説講座」 (https://www.jeea.or.jp/course/contents/10102/)
- 【資料4】『労働安全衛生管理実務便覧 安全衛生担当者必携』(増本清編著 労働調査会 2013)(0106391398)<5098/29>
- 【資料5】『新しい時代の安全管理のすべて』(大関親著 中央労働災害防止協会 2011)(0106280218)<5098/22>
- 【資料6】『目で見てわかる稼げる電気保全』(竹野俊夫著 日刊工業新聞社 2012)(0106324591) <50968/10>
- 【資料7】『安全衛生用語辞典』(中央労働災害防止協会編 中央労働災害防止協会 2005)(1101957502)<5098/42/>
- 【資料8】『よくわかる!管理・監督者のための安全管理技術 実践編 管理と技術のココがポイント』(梅崎重夫著 日科技連出版社 2011)(1102292590)<5098/64/2>
- 【資料9】『世界大百科事典 6』平凡社 2007)(0106013608)<031/8/6>
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【資料1】『日本大百科全書 6』(小学館 1985)(9102882008)<031/N71/6>
- キーワード
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- 感電
- 電気災害
- 労働衛生
- 労働安全
- 安全管理
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000248574