レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2016/10/22
- 登録日時
- 2017/12/24 00:30
- 更新日時
- 2024/03/30 00:38
- 管理番号
- M16040717079688
- 質問
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日本国内のマンボウに関する記録はいつ頃から残されているのか。江戸時代に描かれたマンボウの絵が見たい。
- 回答
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・『資料 日本動物史』(資料①)では、古文献上のマンボウの呼称(表記)を次のとおり紹介する。
「マンボウ」 「翻車魚」 「浮木(うきき)」 「万才楽」 「?魚」 「雪魚」 「鏡魚」
17~18世紀初頭のマンボウに関する古記録は、次のとおり。
・『日本博物誌総合年表 索引・資料編』 (資料②)の「資料別・動植物名初見リスト」では、寛永20年(1643)刊『料理物語』(資料③)の「浮木」をマンボウの初見資料に挙げている。
・慶応義塾図書館蔵『料理物語』の写本(資料④)には、寛永13年(1636)の跋文があり、「うきき」の名称も確認できる。
・「珍禽異獣奇魚の古記録」(資料⑤)では、『徳川実紀』(資料⑥)の「深川の漁夫網引して貢したる萬歳楽といふ魚」(正保3年(1646)2月5日)という捕獲の記録を挙げている。また、正保2年(1645)8月23日の記録中にも「萬歳楽にいへる魚をさゝげらるる之は紀州の浦にて漁得し所とぞ」(資料⑦)と記載されている。
・元禄10年(1697)刊『本朝食鑑』(資料⑧)の「魚鱗部」には、「?魚」の名称による解説がある。
・宝永6年(1709)刊『大和本草 巻十三』(資料⑨)では、「マンボウ」「ウキ木」の名称で記載されている。
以上の文献③~⑨には、マンボウの絵の掲載は確認できなかった。
・澤井悦郎「正宗文庫蔵『備陽記』原本にみられた日本最古と考えられるマンボウの絵に関する考察」(資料⑩)によれば、1713年(正徳3年)頃に成立した『和漢三才図会』(資料⑪)の「?魚」の絵は「エイの姿で描かれており、外観からマンボウと判断することはできない」ため、1721年(享保6年)の序文をもつ正宗文庫蔵『備陽記』原本に掲載されたマンボウの絵を「現状で日本最古のマンボウの絵」として紹介している。
・『日本博物誌総合年表』(資料⑬)には、「江戸時代の絵図、とくに動物図には、他人の描いた図を転写した例がとても多い」として博物誌の資料調査にあたっての留意事項が述べられている。近世以降の写本・古典籍等に描かれたマンボウの絵には、次のようなものが挙げられる。
・享保8年(1723) 『紀州熊野浦諸鯨之圖』(東京大学総合図書館)
「満んほう」
http://gazo.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/kujira/
・松岡恕庵(1668-1746)『魚鳥写生図』(国立国会図書館)
享保17年(1732)
「満んぼう」
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2543098/12
宝永6年(1709)
「浮木」
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2543098/13
享保9年(1724)
「浮木」
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2543098/16
・元文6年(1741)序 神田玄泉 『日東魚譜.巻5』(国立国会図書館)
「雪魚」
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2558318/11
・宝暦12年(1762) 勝間竜水(生没年1697-1773) 『うみのさち』(早稲田大学図書館)
「うきゝ」
http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/he05/he05_06397/he05_06397_p0045.jpg
http://www.wul.waseda.ac.jp/kotenseki/html/he05/he05_06397/index.html
・原南陽(1753-1820) 『査魚志』(国立公文書館)
「査魚」
http://www.digital.archives.go.jp/das/meta/F1000000000000030300
http://www.archives.go.jp/exhibition/popup_jousetsu_23_1/popup_jousetsu_23_1_p0002.html
・栗本丹洲(1756-1834) 『鳥獣魚写生図』(国立国会図書館)
「沖マンザイ」「斑車魚」
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1288514/1
・栗本丹洲(1756-1834) 『翻車考』(国立国会図書館)
「翻車」
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2536150
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1286944
・佐藤中陵(1762-1848) 『海河魚属写真 魚部 ニ』〔画像15枚目〕(水戸市立図書館)
http://www.library-mito.jp/contents/kityou/tyuryou_img/kaiga_02/suraido.html
・佐藤中陵(1762-1848) 『海河魚属写真 魚部 四』〔画像10枚目〕(水戸市立図書館)
「?魚」
https://www.library-mito.jp/contents/kityou/tyuryou_img/kaiga_04/suraido.html
・服部雪齋(1807-) 『鳥獸魚圖譜』(国立国会図書館)
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2535932/32
・『採薬使記』 (国立国会図書館・早稲田大学図書館)
「ウキゝ」
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2535819/28
http://www.wul.waseda.ac.jp/kotenseki/html/ni01/ni01_00790/index.html
以上のリンクは、いずれも2016年12月現在で確認できたものである。
- 回答プロセス
- 事前調査事項
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・国立国会図書館蔵『節用集』(明応5年)の「槎」(うきき)は、「草」の分類項目に含まれていた。
・国立国会図書館『描かれた動物・植物』 国立国会図書館,2005,105p. 参照はp.82-83.
・山下欣二「マンボウの名称に関する歴史的考察」『動物園水族館雑誌』34巻4号,1992,p.80-83.
- NDC
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- 生物科学.一般生物学 (460 9版)
- 参考資料
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①梶島孝雄『資料 日本動物史』 八坂書房,2002,652p. 参照はp.341-342.
②磯野直秀『日本博物誌総合年表 索引・資料編』 平凡社,2012,434p. 参照はp.,299-300.
③吉井始子『翻刻 江戸時代料理本集成 第1巻』京都 臨川書店,1978,291p. 参照はp.5,21.
④松下幸子ほか「古典料理の研究 (八) : 寛永十三年「料理物語」について」『千葉大学教育学部研究紀要. 第2部』31,1982年12月,p.181-224.
⑤磯野直秀「珍禽異獣奇魚の古記録」『慶應義塾大学日吉紀要 自然科学』37,2005,p.33-59.
⑥国史大系編修会『国史大系 第40巻 徳川実紀 第3篇』 吉川弘文館,1964,752p. 参照はp.430.
⑦国史大系編修会『国史大系 第40巻 徳川実紀 第3篇』 吉川弘文館,1964,752p. 参照はp.410.
⑧丹岳野必大千里『本朝食鑑 9巻』江城 平野氏傳左衛門,1697,1冊. 参照はp.26-27.
⑨貝原益軒『大和本草 第2冊』 有明書房,1975,348p. 参照はp.116,118-119.
⑩澤井悦郎「正宗文庫蔵『備陽記』原本にみられた日本最古と考えられるマンボウの絵に関する考察」『BIOSTORY』vol.26,2016年11月,p.97-101.
⑪寺島良安『日本庶民生活史料集成 第28巻 和漢三才図会1』 三一書房,1980,936p. 参照はp.675.
⑫磯野直秀『日本博物誌総合年表 総合年表編』 平凡社,2012,750p. 参照はp.6-8.
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①梶島孝雄『資料 日本動物史』 八坂書房,2002,652p. 参照はp.341-342.
- キーワード
- 照会先
- 寄与者
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- 国立国会図書館
- 水戸市立図書館
- 国立公文書館
- 島根大学附属図書館
- 早稲田大学図書館
- 慶應義塾図書館
- 東京大学総合図書館
- 備前市歴史民俗資料館
- 正宗文庫
- 備考
- M2016040717022479688
- 調査種別
- 内容種別
- 質問者区分
- 全年齢
- 登録番号
- 1000227210