次のような資料がある。
(1) 史蹟名勝天然記念物調査報告 4 香川県史跡名勝天然記念物調査会/編 香川県 1929.3
P123「第九 サヌキット(SANUKIT)(讃岐岩)磐石 カンカン石」の項に次の文あり。
※「・・・学問上の名は、サヌキット、此のサヌキットなる名は、世界に於ける岩石学の権威ワインセンク氏(独逸人)が、この岩石につき精細なる研究を施したる結果、地球上、また他に発見せざる岩石なることが分かつたので、氏は其の産地、讃岐の国名に因みて、サヌキット(讃岐岩)」と命名して、学会に発表したのである。
(略)
ワインセンク氏の発表は明治20年頃である。この岩石のワインセンク氏の手に入った経路は不明であるが、明治8年、帝国大学地質学教師として、ナウマン氏(独逸人)が来任した。明治12年、日本政府は氏の建議を入れ、時の農商務省に、地質調査所を設立した。氏は其の調査所に移つて、日本の地質の調査に従事したのである。故にカンカン石のワインセンク氏の手に入つたのは、ナウマン氏が送つたのでは無いかと思はれるのである。
然しナウマン氏は、明治17年日本を去つて、ワインセンク氏の発表はこれから3年の後である故、日本人が送つたのではないかとも云われている。・・・」
(2)香川県地質概説 香川県師範学校郷土紀要 香川県師範学校郷土研究部/編 香川県教育図書 1932.12 P45
※「独人ワインシエンク氏によりて讃岐岩(Sanukite)と命名せられたるものにして・・・」
(3)讃岐の岩石と地層 瀬尾完太/編 香川県教育会 1939.11
※綾歌郡の項の「カンカン石 サヌキット(讃岐岩)」に次の文あり。
「(略)
明治20年頃独乙のワインセンク博士は、このカンカン石を研究して、地球上何れの地にも未だ発見しない珍らしい岩石なることがわかり、産地讃岐の国名に因みて、サヌキット(讃岐岩)」と命名して学会に発表した。爾来、学会では、此岩石を、サヌキット、又は、サヌカイト、と呼ぶことになつた。
サヌキットは独語で、英語ではサヌカイトと読むのである。
ワインセンク博士は日本の地を踏んだことはないが、カンカン石が、研究の材料になつた其経路を調べてみると、当時の帝国大学地質学教師ナウマン氏の手によつたのであらうと思はれるのである。
ナウマン氏は、又独乙の人で、明治8年来任、後、地質調査所に移り、日本の地質学界を開拓して明治17年10年間の長い任期を終へて帰国した人である。」
(4)香川の理科ものがたり 香川県小学校理科教育研究会/編 日本標準 1982
p.107「カンカン石(讃岐岩・さぬきがん)」の項にに次の記述がある。
「・・・明治24年(1891)年、岩石を研究しているドイツの学者ワインシェンクという人が香川県をおとずれ、この岩石を調査研究して、サヌカイト(讃岐の石という意味)という名前をつけて世界の人びとにしょうかいした。・・・」
(5) 香川県大百科事典 四国新聞社出版委員会/編 四国新聞社 1984
p.398「サヌカイト」の項に次の記述がある。
「・・・サヌカイトの名の由来は、ドイツの岩石学者バインシェンクが、1891年(明治24)サヌキット(Sanukit)u-2として岩石を記載し報告したことに始まるが、これが英語読みのサヌカイト(Sanukite)となり、わが国でも「讃岐岩」として知られるようになった。・・・」
(6)「さあかす 第5号 2000年夏号」(※当館未所蔵)
http://www.kbn.ne.jp/home/circus/magazine/pdf/5-1.pdfp.14
「石の音に魅せられて!〈カンカン石・磬石・讃岐岩・サヌカイト〉 平井二郎」
「・・・サヌカイト(讃岐岩)という名が世界的に知られるようになったのは、ドイツの世界的な地質学者エドモンド・ナウマン博士(1854~1927年、ナウマン象の命名でも知られる)が、1875年から10年間日本に滞在し、その時採取した岩石について「私の最後の大旅行で初めて出会った最高に興味深い一群の火山岩は、その分布が特定の地域に限られている点でも重要で・・・(中略)、讃岐のジュシャマと大阪近くの甲山に産し、貝殻状の割れ方とガラス質が特徴で土地の人々によってカンカン石と名付けられている。主たる分布地域である四国の島の讃岐国に因んで讃岐岩〈SANUKIT〉という名を提唱したい」(1885年〈日本群島の構造と起源について〉)と記述し、それを学会に報告した。
それを受けて、ドイツの地質学者バインシェンク博士は1891年(明治24年)、「サヌキットU-2」として岩石を記載し学会に報告。これが英語読みの「サヌカイト」となったのである。・・・」
(7)日本地質の探究 ナウマン論文集 ナウマン/〔著〕 東海大学出版会 1996.9
p.167-231「 日本群島の構造と起源について」あり。
p.193に「私の最後の大旅行で初めて出会った最高に興味深い一群の火山岩は、その分布が特定の地域に限られている点でも重要で・・・(中略)、讃岐のジュシャマ[屋島?]と大阪近くの甲山に産し、貝殻状の割れ方とガラス質が特徴で土地の人々によってカンカン石と名付けられている。・・・」という記述あり。
(※(6)の記事中の「主たる分布地域である四国の島の讃岐国に因んで讃岐岩〈SANUKIT〉という名を提唱したい」という記述は見当たらなかった。)
(8)香川県地質図説明書 斉藤実,坂東祐司/共編 内場地下工業株式会社 1962.12
p.37に「讃岐岩」についての説明あり。
また、巻末の「参考文献」に関連のありそうな論文として、次の2点が掲載されていた。
・ナウマン(1890):四国地質一班,地学雑,2巻
・Weinschenk,E(1891):Beitrage zur Petrographie Japans Neues Jahrbuch fur Min.,Petro.,Paleont.,B-Bd.Ⅶ
(9)日本の岩石と鉱物 通商産業省工業技術院地質調査所/編 東海大学出版会 1992.7
p.91「PL17-1 サヌカイト」の項に次の記述あり。
「・・・サヌカイト(讃岐岩)とは香川県高松市付近の古銅輝石安山岩をドイツ人Weinschenkが命名した岩石名で、香川県の旧国名にちなむ。・・・」