レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 20180307
- 登録日時
- 2018/03/15 11:59
- 更新日時
- 2019/02/06 09:37
- 管理番号
- 関大総図 17A-67J
- 質問
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1910年代の上海、マニラの貨幣価値について知りたい。
当時の上海の通貨1元=100角や、マニラの通貨1ペソ=100センタボがどれくらい価値があったのか。
当時の物価比較でもよいし、USDなどとのレートでも構わない。
- 回答
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1910年代の角・元(上海)、ペソ・センタボ(マニラ)の貨幣価値に関して、資料をご紹介します。
【角・元】
各種外国為替の統計によると、当時上海側のレートは「両」という単位で計算されていました。『データでみる中国近代史』という図書で当時の金融事情を確認しましたが、両と元・角の換算は非常に複雑であり、算出は困難であると判断しました。そのため当時の物価(労働者の日給)から貨幣価値を判断して頂くために、以下の資料をご紹介します。
①『日中戦争と上海、そして私 : 古厩忠夫中国近現代論集』
pp.59-94に「上海労働者諸範疇の特質と生態」という項目があり、1910-20年代当時の労働者の職業別の日給や月の生活費などが記載されています。ここからある程度の物価水準、元・角の価値が類推できるのではないかと考えます。たとえばp.60の表によると、当時の大工の日当は5-8角だったようです。
また、労働者の賃金について、上記資料が参照にしたのは、以下の図書です。
②『五四運動在上海史料選集』
p.15の表が①のp.60表3に相当します。また、①の表は角・②の表は元が単位になっています。その数値から類推すると、1元=10角であると判断できます。1元=100角ではないのでご注意下さい。
【センタボ・ペソ】
こちらは逆に当時のフィリピンの物価や賃金を示す資料が発見できませんでしたので、外国為替のレートから貨幣価値を算出しました。
③永野善子. "アメリカ植民地期のフィリピン通貨制度--金為替本位制のドル為替本位制への変質過程." 『人文学研究所報』 26 (1993): p7-27.
pp.14-17に1903年~1918年のペソとUSDのレートについて記述があります。それによりますと当時1ペソは0.5 USDに相当すると位置づけられていました。
当時の0.5 USDが日本円でいくらに相当するかは、④の資料でご確認いただけます。
④『日本長期統計総覧 3巻』(1988年出版)
pp.104-107の「10-11-a 外国為替相場(明治7年~昭和18年)」では、1910年代の円は、ほぼ0.49 USD前後で推移しています。表には円/フィリピンペソのレートはありませんが、上記の情報と合わせて、1フィリピンペソ≒1円と類推することができます。従いまして、1センタボ≒1銭となります。
- 回答プロセス
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①ドルに対するレートが表示されていないかと考えるが、Economistの古い分には元やペソの表示は無し。The Financial Timesも古い資料のデータベースは契約されていないため確認出来ず。
②『日本長期統計総覧』(1988年発行分)第3巻 p.104からの「10-11-a 外国為替相場(明治7年~昭和18年)」を見るが、上海向の単位は“両”。両から元を割り出す計算が複雑なため、紹介できず。なお、フィリピンペソは記載なし。
③日本銀行金融研究所 歴史統計 > 外国為替相場
https://www.imes.boj.or.jp/hstat/data/ferdd/index.html 【最終アクセス2018/7/17】
「外国為替相場・参着払(1893年~1926年)」と「外国為替相場・横浜正金銀行建電信売(1912年~1941年)」のCSVを確認。
どちらの表も上海の単位は100円あたりの「テール」。これも元に換算するのが困難なため紹介できず。フィリピンペソは記載なし。
④University of British ColumbiaのPACIFIC Exchange Rate Service公開の表
「Foreign Currency Units per 1 Canadian Dollar, 1950-2016」 【最終アクセス2018/7/17】
1USDに対するフィリピンペソのレートはあるが、1950年から。
⑤フィリピンの公式統計が配信されている「Philippine Statistics Authority【最終アクセス2018/7/17】」内を検索するが、該当する統計は発見できず。
ここで学術書などに記載がないかを探す方向に転換。CiNii ArticlesやGoogle Booksなどで資料を検索。上記の通り回答をした。
- 事前調査事項
- NDC
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- 貨幣.通貨 (337)
- 参考資料
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- 狭間直樹〔ほか〕. データでみる中国近代史. 有斐閣, 1996. (有斐閣選書) , ISBN 4641182655 (当館請求記号 N8*222.06*6, 当館資料番号 206595816)
- 古厩忠夫著. 日中戦争と上海、そして私 : 古厩忠夫中国近現代論集. 研文出版, 2004. , ISBN 4876362335 (当館請求記号 N8*222.075*3791, 当館資料番号 230534732)
- 上海社会科学院歴史研究所[編]. 五四運動在上海史料選集 2刷 影印. 上海人民出版社, 1961. p.15 (当館請求記号 *222.072*S1*1, 当館資料番号 003906850)
- 永野善子. "アメリカ植民地期のフィリピン通貨制度--金為替本位制のドル為替本位制への変質過程.". 神奈川大学人文学研究所. 人文学研究所報 26 p.7-27, ISSN 02877082 (当館請求記号 M*041*K94, 当館資料番号 206951132)
- 日本長期統計総覧 第3巻. 日本統計協会, 1988. (当館請求記号 R*351*N6*3, 当館資料番号 203472918)
- キーワード
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- 貨幣制度--中国
- 貨幣制度--フィリピン
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 質問者区分
- 専任教員
- 登録番号
- 1000232535