レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2016/12/22
- 登録日時
- 2017/03/18 00:30
- 更新日時
- 2017/03/18 12:11
- 管理番号
- 千県中参考-2016-34
- 質問
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解決
市会議員と県会議員の兼任について調べたい。
『千葉市議会史 記述編1』(千葉市議会史編纂委員会編 千葉市議会 2005)p478に、当時(昭和12年3月7日の第5回市会議員選挙から昭和17年6月1日の第6回市会議員選挙までの間)は兼任できたとあり、具体的な氏名も挙がっているが、法的に問題はなかったのか。
- 回答
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ご質問の時期(昭和12年3月7日から昭和17年6月1日)の法律を調査しましたが、府県会議員と市会議員の兼任を禁ずる規定は見当たりませんでした。
なお、【資料4】『官報』(1950年4月15日号外第27号)(国立国会図書館デジタルコレクション)p38~(30コマ~)「公職選挙法の施行及びこれに伴う関係法令の整理等に関する法律」(昭和25年4月15日法律第101号)によると、地方自治法に府県会議員と市会議員の兼任を禁ずる規定が盛り込まれて施行されたのは昭和25年5月1日で、当時も兼任している者がいたとする資料(【資料5】「参議院選挙法改正に関する特別委員会会議録」(第13号 昭和25年4月1日))がありました。
(インターネットの最終アクセス:2016年12月22日)
- 回答プロセス
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(1)地方議員の兼業禁止規定について
【資料1】「地方議員の兼業禁止規定の理論と実務(1)」p90によると「地方議員の兼業禁止は、明治時代の府県制にはじまり、途中その廃止を含む幾多の変遷を経て、現在では地方自治法(中略)92条の2に規定されている」とありました。
なお、この資料の注に立法の経緯について次のような資料が挙げられています。県立図書館未所蔵のため内容は未確認です。
久世公堯「地方自治法における請負禁止について-1-」(『地方自治』通巻107号 1956.11)p32-40
【資料1】の記述を基に、以下、府県制と地方自治法について調査しました。
(2)昭和12年3月7日から昭和17年6月1日の府県制の規定について
府県制(明治32年3月16日法律第64号)について、「日本法令索引」(http://hourei.ndl.go.jp/SearchSys/)で調査しました。
昭和12年3月7日の直前の改正は昭和10年7月3日法律第44号で、その後昭和17年6月1日までに昭和15年3月29日法律第62号による改正がありました。
国立国会図書館デジタルコレクション(http://iss.ndl.go.jp/)でこの時期の府県制を掲載した資料を探しました。
・昭和10年7月3日法律第44号を反映した資料
【資料2】『最新六法全書』「地方制」p2~(353コマ~)「府県制」
→第六條に被選挙権を有しない者の規定がありますが、市会議員は挙げられていません。なお、「衆議院議員ハ府県会議員ト相兼ヌルコトヲ得ズ」との規定はあります。
・昭和15年3月29日法律第62号を反映した資料
【資料3】『現行法令輯覧 昭和17年2月現在 第3巻』p1~(8コマ~)「府県制」
→内容は【資料2】と同様でした。
(3)地方自治法の規定について
「法令データ提供システム」(http://law.e-gov.go.jp/)によると、現行(最終改正平成28年11月28日法律第86号)の第92条第2項は次のとおりです。
「普通地方公共団体の議会の議員は、地方公共団体の議会の議員並びに常勤の職員及び地方公務員法(昭和二十五年法律第二百六十一号)第二十八条の五第一項に規定する短時間勤務の職を占める職員(以下「短時間勤務職員」という。)と兼ねることができない。」
契約しているデータベース「D1-law.com 現行法規」(第一法規)で遡って調べたところ、第92条第2項で兼業を禁ずる対象に「地方公共団体の議会の議員」が初めて見られるのは昭和25年4月15日号外法律第101により改正された昭和25年5月1日施行の条文です。その直前の改正である昭和23年8月1日施行の条文では「普通地方公共団体の議会の議員は、地方公共団体の有給の職員と兼ねることができない」となっていました。
昭和25年4月15日号外法律第101について「官報」を調べました。
【資料4】『官報』(1950年4月15日号外第27号)(国立国会図書館デジタルコレクション)p38~(30コマ~)「公職選挙法の施行及びこれに伴う関係法令の整理等に関する法律」(昭和25年4月15日法律第101号)
下のような規定があり、第3条により地方自治法に「地方公共団体の議会の議員」が盛り込まれたことがわかり、第33条により改正以前は兼職が可能であったことが類推されます。
「(地方自治法の一部改正)
第三條 地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)の一部を次のように改正する。
(9)第九十二條第二項中「地方公共団体の職員」を「地方公共団体の議会の議員及び有給の職員」に改める。」
「(改正法施行の際現に二以上の地方公共団体の議会の議員を兼ねている者の特例)
第三十三條 本法施行の際現に二以上の地方公共団体の議会の議員を兼ねている者については、これらの職を兼ねている間に限り、第3條に規定する地方自治法第九十二条第二項の改正規定を適用しない。」
「公職選挙法の施行及びこれに伴う関係法令の整理等に関する法律」の審議経過を「日本法令索引」(http://hourei.ndl.go.jp/SearchSys/)で調べました。
「公職選挙法の施行及びこれに伴う関係法令の整理等に関する法律」で検索し、検索結果から「審議経過」を開いて「会議録一覧」画面に入り、会議録を順に開いて探したところ、【資料5】「参議院選挙法改正に関する特別委員会会議録」(第13号 昭和25年4月1日)に次のようなやりとりが見られました。
「○岡本愛祐君 八十九条の第三項を削つて、地方公共団体の議会の議員は、在職中、他の地方公共団体の議会の議員の候補者となることができないことにしてしまうとですね、今現に兼ねている人が沢山ありますね。それは差支ないのだという経過規定が要りませんか。
○法制局参事(菊井三郎君) それにつきましてこの施行に関する法律案の修正案として次に出ております。」
- 事前調査事項
- NDC
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- 地方自治.地方行政 (318 9版)
- 参考資料
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- 【資料1】中村健人「地方議員の兼業禁止規定の理論と実務(1)」(『判例地方自治』通巻389号 2015.2)(1502732876)
- 【資料2】『最新六法全書』(尾山万次郎著 浩文社 1935)「地方制」(http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1270319/350)(国立国会図書館デジタルコレクション インターネット公開(裁定))
- 【資料3】『現行法令輯覧 昭和17年2月現在 第3巻』(内閣官房記録課編 帝国地方行政学会 1930-1942)(http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1449802)(国立国会図書館デジタルコレクション インターネット公開)
- 【資料4】『官報』(1950年4月15日号外第27号)(http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2963521)(国立国会図書館デジタルコレクション インターネット公開)
- 【資料5】「参議院選挙法改正に関する特別委員会会議録」(第13号 昭和25年4月1日)(http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/007/1326/00704011326013a.html)
- キーワード
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- 地方議員(チホウギイン)
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000212226