1 漢和辞典を参照。
『角川新字源 改訂版』(角川書店,1994年刊)、『漢字源 新版』(学研,1994年刊)、『広漢和辞典』(大修館書店,1982年刊)
… いずれも漢音「ジョウ」、慣用音「ノウ」とされている。
2 インターネットで「濃州 じょうしゅう」検索。日本美術刀剣保存協会岐阜支部のウェブサイトに掲載されている論文「「濃州」の読みについての疑問」(近藤邦治著 『刀剣美術』613号に収録)では、「じょうしゅう」と読むことについて以下3つの根拠が示されている。
・刀剣書『往昔抄』(当館では筆写版を所蔵)の濃州住人銘に「志やう志う」とある。
・『信長公記』などの軍記で「ぢょうしう」と振りがなが付されている。
・『童訓往来新大成』などの往来物で「濃州」に「じやうしう」と振りがなが付されている
「濃州」の読みについての疑問:
http://www.nbthk-gf.or.jp/ronbun10.htm 2019年9月確認
また武将絵の画集『太平記英勇傳』(歌川国芳画・柳下亭種員文)では「じょうしゅう」と「のうしゆう」の両振り仮名を使い分けているところから、同時期に二通りの読み方があったことが窺われるとしている。
3 上記について、当館所蔵資料で確認。
・『往昔抄』(筆写,1955年の解説文(辻本直男))
…「濃州」に「じょうしゅう」と振りがなが付されているものがある(31,32丁)。
・『信長公記』(奥野高広校注 角川書店,1969年刊)
… 地名索引は「し」の項目に「濃州」があり、参照先には「ぢょうしう」と振りがなが付されている。(首巻(p.74)、巻七(p.166)など)
・『往来物大系』(大空社,1992~1994年刊)
… 以下の往来物で「濃州」の読みを確認。
「童訓集」(15巻収録 江戸時代初期刊(寛文頃か)) = 「でう」
「国名尽図抄」(52巻収録 江戸時代後期刊) = 「ぢやうしう」
「万用字尽教鑑」(14巻収録 江戸時代後期刊か) = 「のう」
「席書之熟字」(19巻収録 江戸時代後期刊) = 「のう」
4 その他の論文を検索。「近世地誌・軍記・系譜等における濃姫の呼称「帰蝶・胡蝶・桔梗」について -二十一巻本『武功夜話』巻一の表記」(松浦由起著 豊田工業高等専門学校研究紀要 46 p143-152)に、『絵本太閤記』では「濃州」に「ぜうしう」の振り仮名があること、「濃」は変体仮名では「の」と読まれるが、漢音では「ジョウ(ヂヤウ)」、慣用音が「ノウ」であることが記載。
https://doi.org/10.20692/toyotakosenkiyo.KJ00008915460 2019年9月確認