レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2015年08月13日
- 登録日時
- 2015/09/27 17:37
- 更新日時
- 2015/10/06 20:12
- 提供館
- 岐阜県図書館 (2110001)
- 管理番号
- 岐県図-2190
- 質問
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解決
「勝鬘経(しょうまんぎょう)」と「勝鬘経義疏(ぎしょ)」を、それぞれ漢文と日本語訳で見たい。
「勝鬘経」の漢訳は、聖徳太子が「勝鬘経義疏」を書くにあたって参照したものを見たい(漢訳の訳者はわからない)。
- 回答
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下記の資料①~⑥を提供。
①『勝鬘経義疏』(四天王寺事務局)義疏・現代語訳
②『勝鬘経義疏』(花山信勝校訳、岩波文庫)義疏の訓読に「勝鬘師子吼…」の本文を併記
③『大日本仏教全書 第4冊 勝鬘経義疏外三部』(名著普及会)義疏・漢文
④『大正新脩大蔵経 第12巻 宝積部 下』(大正新脩大蔵経刊行会)勝鬘経・漢文
⑤『新国訳大蔵経 如来蔵・唯識部1』(大蔵出版、2001) 勝鬘経・訓読
⑥『現代語訳大乗仏典3』(中村元訳、東京書籍 2003)勝鬘経・現代語訳(抄録)
- 回答プロセス
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【調査前に考慮した点】
・経典(仏典)の漢訳は、訳者が異なるものが数種類存在する場合がある。
・通常使われている経典名は、正式名称ではない場合がある。
・今回の調査順序としては、参考図書や「勝鬘経義疏」関係書等の解題から元となる漢訳を特定し、その漢訳の正式名称から「勝鬘経」の掲載図書を調査することを想定。
・経典の漢訳は、ほとんどの場合、『大正新脩大蔵経』(1-85巻、図像1-12巻、索引1-45巻)で見ることができる。
【調査過程】
(1)『大蔵経全解説大事典』の「勝鬘経義疏」の項目を確認。
「「勝鬘経」(正確には勝鬘師子吼一乗大方便方広経(しょうまんししくいちじょうだいほうべんほうこうきょう)に対する注釈書」とあり。
「勝鬘師子吼一乗大方便方広経」の項には、「勝鬘経」などの別名のほか、「訳者・訳年代」として「劉宋の求那跋陀羅(ぐなばつだら)」とあり。
(2)「勝鬘経」「勝鬘」をキーワードに蔵書検索。まず「勝鬘経義疏」の関係書から調査。
①『勝鬘経義疏』(四天王寺事務局)義疏・現代語訳 p.224「勝鬘経の流伝」
「五世紀の初頃曇無讖(どんむしん)(385-432)によって漢訳され、続いて求那跋陀羅によって訳され、また八世紀の初頃には菩提流志(ぼだいるし)が『大宝積経(だいほうじゃくきょう)』の中に『勝鬘夫人会(しょうまんぶにんえ)』として訳出している(706-713)。ただし、曇無讖の漢訳はいまは現存せず、後の二訳だけが伝えられている。聖徳太子の義疏は求那跋陀羅訳の『勝鬘師子吼一乗大方便方広経』に拠られたもので…(以下略)」
②『勝鬘経義疏』(花山信勝校訳、岩波文庫)義疏の訓読に「勝鬘師子吼…」の本文を併記
③『大日本仏教全書 第4冊 勝鬘経義疏外三部』(名著普及会)義疏・漢文
(3)『大正新脩大蔵経総目録』(大蔵出版)で、義疏の漢文、勝鬘経の漢訳の掲載巻・ページを確認。
・「勝鬘経義疏(一巻)日本 聖徳太子撰」No.2185、56巻p.1~(上記③と同じ内容)
・「勝鬘師子吼一乗大方便方広経 劉宋 求那跋陀羅訳」No.353 12巻p.217~
→ ④『大正新脩大蔵経 第12巻 宝積部 下』(大正新脩大蔵経刊行会)勝鬘経・漢文
(4) (2)の蔵書検索結果から、「勝鬘経」の関係書にあたり、訓読と現代語訳を探す。
⑤『新国訳大蔵経 如来蔵・唯識部1』(大蔵出版、2001) 勝鬘経・訓読 … 「勝鬘師子吼…」を読み下し、注をつけたもの。
⑥『現代語訳大乗仏典3』(中村元訳、東京書籍 2003)勝鬘経・現代語訳(抄録) … 「勝鬘師子吼…」の読み下しと日本語訳、解説(抄録)
(5) 利用者に資料①~⑥を提供。日本語訳は、現代語訳より訓読を必要とされていた様子。
限られた時間内に探した範囲ではあったが、ひとまず上記資料で了解していただき終了。
(6) 上記以外の主な資料
・『勝鬘経』(仏典講座10、雲井昭善著、大蔵出版)勝鬘経・現代語訳(全文)…『大蔵経典解説事典』(北辰堂、1997)に「勝鬘師子吼…」の和訳(全訳)として紹介されていた図書。巻末に「参考文献・解説」があり、他の関係図書も探すことができる。
・『国訳一切経 寶積部7』(大東出版社) 勝鬘経・訓読 … 国訳(読み下し)、注、解題が掲載されている叢書。総目録から該当巻を探すのに手間取り、対応時には提供できず。『日本仏教全集叢書資料総覧 総索引編』(本の友社)など、別の参考図書から掲載巻を探す方法もあった。
- 事前調査事項
- NDC
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- 経典 (183 9版)
- 参考資料
- キーワード
- 照会先
- 寄与者
- 備考
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・現代語訳の中には、漢訳以外のもの(チベット語訳など)を元としているものもある。解題や凡例を確認して提供する。
・効率よく探すには慣れが必要。参考図書や仏典の叢書は複数あるので、実際に使った時に、それぞれの特徴や索引の引き方(五十音順か部首索引か)など、自分にとって探しやすいものを見つけておくとよいと感じた。
・蔵書検索から探すだけでなく、遠回りのようでも、参考図書や関係資料中の解題で紹介されている文献を探す方が、定評ある資料に確実にたどりつける。
・国立国会図書館「リサーチ・ナビ」の調べ方案内が参考になる。
トップ>調べ方案内>歴史・地理・哲学・宗教 >大蔵経(一切経)(http://rnavi.ndl.go.jp/research_guide/entry/theme-honbun-101024.php 2015年9月確認)
トップ>調べ方案内>歴史・地理・哲学・宗教 >大蔵経(一切経)の日本語訳(http://rnavi.ndl.go.jp/research_guide/entry/post-167.php 2015年9月確認)
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000181749