レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2015年2月15日
- 登録日時
- 2015/02/15 19:06
- 更新日時
- 2021/01/10 00:30
- 管理番号
- PML20150215-02
- 質問
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解決
日本では、なぜ太さの一様なサンセリフの書体をゴシック体と言うのか。ヨーロッパのゴシック建築や、グーテンベルクなどの初期活版印刷から使われている装飾の多い書体をゴシックと呼んでいるのに、なぜか。
※サンセリフ
セリフのない書体の総称。セリフとは、文字の線の端につけられる線・飾りで、「うろこ」、「ひげ飾り」、「ひげ」とも呼ばれる。
(凸版印刷(株)WEBサイトより http://www.toppan.co.jp/news/2013/03/newsrelease1481.html )
- 回答
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アメリカでもサンセリフの書体を「ゴシック」と称しており、日本は明治2年に本木昌造が、中国で漢字の活版印刷術の基礎を築いた米国人 William Gamble から近代活版印刷術を学んだため、米国の書体の呼称がそのまま導入されたと思われる。
なお、アメリカではヨーロッパで言うゴシック体は「ブラックレター Black letter 」や「テキスト text 」という。
後藤吉郎ほか「William Gambleとゴシック体:W.ギャンブルの活字分類用語とゴシック体の由来についての考察」『日本デザイン学会研究発表大会概要集』57(0), E09, 2010
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jssd/57/0/57_0_E09/_pdf
山本政幸ほか「G03 アメリカ活字鋳造会社の設立とゴシック体活字の発達(タイポグラフィ,「想像」する「創造」~人間とデザインの新しい関係~,第56回春季研究発表大会)」『デザイン学研究.研究発表大会概要集』(日本デザイン学会)(56),258-259, 2009
http://ci.nii.ac.jp/naid/110007380298
石川重遠ほか「創成期の和文ゴシック体」『日本デザイン学会研究発表大会概要集』57(0), E07, 2010
http://ci.nii.ac.jp/naid/130004637878
石川重遠ほか「G02 和文ゴシック体創出の研究経緯(タイポグラフィ,「想像」する「創造」~人間とデザインの新しい関係~,第56回春季研究発表大会)」『デザイン学研究.研究発表大会概要集』(日本デザイン学会)(56),256-257, 2009
http://ci.nii.ac.jp/naid/110007380297
- 回答プロセス
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『印刷事典 第5版』
ゴシック
①欧文活字書体の一種で、グーテンベルクらの初期活版印刷時代以来最も古くから使われた活字書体。これを英国ではゴシックというので、我が国でもまれにそう呼ぶことがある。米国ではテキストまたはブラックレターと呼ぶ。
②欧文書体の一種。我が国および米国では、太さの一様な、セリフのない肉太の書体のことを呼ぶ。
③和文活字書体の一種。文字の線の太さが一様な肉太の書体
当館企画展図録『活字文明開化:本木昌造が築いた近代』(印刷博物館 2003年) ※ゴシックの話は特になし。
上記②および上記図録より、書体の呼称は米国より日本に導入されたと推測。
NDL-OPAC、および CiNii Articles 検索、CiNii でヒット
参考:学芸員より、2説。
以前、アメリカの文献で、Black Letter と書かれるべき部分が Block letter と誤記(誤植?)されているのを見たことがあるので、その可能性が一つ。
もう一つは、おそらくは建築におけるゴシック(ローマでもギリシャでもない、すなわち古典的でない)と同じ感覚で使われたのではないかとの説
大曲都市氏(欧文書体デザイナー)「ゴシックという名称の由来」 http://tosche.net/2013/08/origin-of-gothic_j.html (2015年2月確認)
参考文献表示あり)
おまけ:由来のデマの検証含めた下記
Togetter まとめ「ゴシック体の名前の由来」 http://togetter.com/li/573499
いずれも当館で短時間では裏づけとなる文献を見つけられなかったので、参考情報として。
- 事前調査事項
- NDC
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- 印刷 (749 9版)
- 参考資料
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後藤吉郎ほか「William Gambleとゴシック体:W.ギャンブルの活字分類用語とゴシック体の由来についての考察」『日本デザイン学会研究発表大会概要集』57(0), E09, 2010
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jssd/57/0/57_0_E09/_pdf -
山本政幸ほか「G03 アメリカ活字鋳造会社の設立とゴシック体活字の発達(タイポグラフィ,「想像」する「創造」~人間とデザインの新しい関係~,第56回春季研究発表大会)」『デザイン学研究.研究発表大会概要集』(日本デザイン学会)(56),258-259, 2009
http://ci.nii.ac.jp/naid/110007380298
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後藤吉郎ほか「William Gambleとゴシック体:W.ギャンブルの活字分類用語とゴシック体の由来についての考察」『日本デザイン学会研究発表大会概要集』57(0), E09, 2010
- キーワード
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- 書体
- ゴシック体
- 照会先
- 寄与者
- 備考
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なお、現在ではアメリカでもサンセリフ Sanserif という言い方が一般的らしいが、
ゴシックGothic と呼んでいたことについては、書体名にも付与されており、また下記の文献でも確認できる。
W. Turner Berry, A.F. Johnson and W. Pincus Jaspert. Emcyclopaedia of typefaces: 3rd edition. London: Blandford Press, 1962
p.198 Sans Serifs
「(前略) Thorowgood called the type Grotesque and the American name Gothic was often used. The type was monotone and the capitals were of equal width.(後略)」
※W. Pincus Jaspert, W. Turner Berry and A.F. Johnson. Emcyclopaedia of typefaces: 55th anniversary edition. London: Cassell Illustrated, 2008
では、p.245 「Lineales」に同じ解説文が付与されている。
Stevenson, George A.. Graphic arts encyclopedia. New York:McGraw-Hill, 1968
p.164 gothic Typeface that is square-cut, sans serif, and without hairlines.
The American Typefounders Company. Book of American types : standard faces. Pennsylvania: Schiffer Publishing, 2007
Cees W. De Jong. Sans serif : the ultimate sourcebook of classic andcontemporary sans serif typography. London: Thames & Hudson 2007
p.19 Sans serif: a style of lettering without final serifs, also known as grotesque, lineal or gothic.
James Mosley. The nymph and the grot : the revival of the sanserif letter. London: Friends of the St Bride Printing Library, 1999
p.55-56 「11.Egyptian or Antique? Names for Sanserif and Slab-serif types」
「(前略)Gothic was uniformly adopted for the sanserif, compelling later makers of type to employ black letter for types based on mediaeval letterforms.(後略)」
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 言葉
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000167757