レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2015年02月07日
- 登録日時
- 2015/10/27 18:19
- 更新日時
- 2015/10/27 18:19
- 管理番号
- r159
- 質問
-
解決
「遠仁者疎道不苦者」の読み方、意味、由来について知りたい。
- 回答
-
以下の資料に読み方、意味の記述がありました。
(資料によって漢字・読みが異なっていますが、原文どおり引用しています。)
由来については、江戸時代の作とされる落語に登場した旨の記述を確認しましたが、これが初出であるのかは確認できませんでした。
・『中国像への新視角』(三宅正樹/編 南窓社 2004)
p.50に次の記述があります。
「「遠仁者疎道 不苦者迂智」という聯詩がある。「じんにとおきものはみちにうとし、くるしまざるものはちにうとし」と読み下し文になる。「仁者は人の道、あるいは道理をわきまえているもの、そして、苦労していない、あるいは努力なくして本当の智は得られないもの」といった意味である。(中略)江戸時代の作とされる落語の演目『一目上がり』にでてくるもので、語呂合わせ、ユーモアなのである。その読み方は、「おにはそと、ふくはうち」である。」
この資料を参考に、落語「一目上がり」の内容を確認しました。
・『古典落語名作選』(富田宏/著 金園社 1978)
p.83-92に「一目上がり」が収録されています。
p.89に「イヤこれを棒読みすれば滑稽になる、おわかりになるかどうか、ごらんよ遠仁者疎道不苦者干智で、遠の字が上になって、仁の字が下になっているだろう、この遠の字はおとも読む、そこでこれを上から棒読みにするとおにはそとふくはうちとなるのだ」という台詞があります。(※レ点省略)
なお、「遠仁者疎道不苦者干智」には「じんにとおきものはみちにとおしくるしまざるものはみちうとし」」とルビが振られています。
また、次の資料にも関連する記述が確認できました。
・『茶席の禅語大辞典』(有馬頼底/監修 淡交社 2002)
p.580に「不苦者有智」の項目があります。
読み方は「智有れば苦しからず」、意味は「どんな逆境にあっても、智恵が有ればそれを乗り切ることができる。だからこそ順境にあっても智恵を磨いておくことが大切である。」とありました。
「遠仁者疎道」の項は確認できませんでした。
なお、落語「一目上がり」について、「遠仁者疎道不苦者」が登場しない資料もありましたので、参考までにご紹介します。
・『五代目古今亭志ん生全集 第8巻』(古今亭志ん生/〔著〕,川戸貞吉/編 弘文出版 1992)
p.37-45に「一目上がり」が収録されていますが、こちらでは「遠仁者疎道不苦者」は出てきません。
作品解説(p.342-344)に「一目上がり」の原話と思われるものが2つ紹介されていますが、こちらの本文にも「遠仁者疎道不苦者」は出てきませんでした。
原話とされている資料は「安永二年板『再成餅』所収の『掛物』」「文化五年板『一九ばなし坤巻』所収の『品玉』」と記載されています。
- 回答プロセス
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1.レファレンス協同データベース( https://crd.ndl.go.jp/reference/ )で検索
次の事例を確認した。
「「遠仁者疎途 不苦(富久)者有知」の読み方、意味、由来を知りたい。インターネット検索では複数の情報が見つかったが、活字資料がほしい。」(埼玉県立久喜図書館)
https://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000020321 (2015.8.2確認)
この事例に挙げられている『茶席の禅語大辞典』(再掲)を当館でも確認した。
事例の回答から「遠仁者疎道不苦者」は禅語の可能性があると推測したが、以下の資料に「遠仁者疎道不苦者」に関する記述は確認できなかった。
・『禅語の茶掛を読む辞典』(沖本克己/著,角田恵理子/著 講談社 2002)
・『茶席の禅語大辞典』(有馬頼底/監修 淡交社 2002)
・『禅語小辞典』(佐橋法龍/著 春秋社 1978)
・『禅語辞典』(古賀英彦/編著 思文閣出版 1991)
・『禅語事典』(平田精耕/著 PHP研究所 1988)
2.リサーチ・ナビ( http://rnavi.ndl.go.jp/rnavi/ )で検索
次のウェブページを参考に、漢詩関係の当館所蔵資料について調査したが、「遠仁者疎道不苦者」に関する記述は確認できなかった。
漢詩の口語訳、書き下し文
https://rnavi.ndl.go.jp/research_guide/entry/theme-asia-15.php (2015.8.2確認)
日本漢詩の作品を調べる
https://rnavi.ndl.go.jp/research_guide/entry/post-399.php (2015.8.2確認)
確認した資料は以下の通り。
・『新註墨場必携』(大文館書店/編 改訂 大文館書店 1976)
・『墨場必携日本漢詩選』(北川博邦/編 二玄社 1999)
・『日本漢文学大事典』(近藤春雄/著 明治書院 1985)
・『書作のための禅林名句墨場辞典』(宮負丁香/編 可成屋 2005)
・『新釈禅林用語事典 平仄付』(飯田利行/著 柏美術出版 1994)
・『新撰禅林墨場必携』(飯田利行/編著 柏美術出版 1993)
・『五字名句墨場必携 仏語・格言篇』(木耳社編集部/編 木耳社 1995)
・『五字名句墨場必携 仏語・格言篇』(木耳社編集部/編 ワイド版 木耳社 1998)
・『漢詩大観 索引 2』(佐久節/編 鳳出版 1974)
3.Googleブックス( http://books.google.co.jp/ )で検索
このデータベースの検索結果を参考に『中国像の新視角』(三宅正樹/編 南窓社 2004)を確認した。
「一目上がり」の調査において、落語関係の以下の資料も調べたが、掲載は確認出来なかった。
・『現代落語辞典』(穴田音羽/編 光風社 1977)
・『現代落語事典』(古典芸能研究会/編,穴田音羽/編著 新版 光風社出版 1988)
・『落語ことば辞典』(榎本滋民/著,京須偕充/編 岩波書店 2004)
・『落語事典』(東大落語会/編 青蛙房 1973)
・『増補落語事典 改訂新版』(東大落語会/編 青蛙房 2003)
・『古典落語鑑賞事典』(永田義直/著 金園社 1971)
- 事前調査事項
- NDC
-
- 大衆演芸 (779)
- 参考資料
- キーワード
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- 遠仁者疎道
- 鬼は外
- 福は内
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介 事実調査
- 内容種別
- 言葉
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000182988