レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2018年06月24日
- 登録日時
- 2019/03/22 11:08
- 更新日時
- 2019/03/22 11:09
- 管理番号
- 相-180006
- 質問
-
解決
画指(かくし)」とは具体的にどういうことでしょうか。具体的な説明とともに、その絵図などが残っていたらその情報も教えてください。現代の拇印のようなものなのか、全く見当がつきません。辞書には「古代、無筆の者が文書の書名代わりに食指の長さ、関節の位置などを黒点で記した。」「中指か食指の指節の横筋を3つの点で表し、この3点に指の外形を描いたり指の長さを書いたりする男は左手、女は右手を用いた。」とありますが、具体的によくわかりません。
- 回答
-
・『日本史大事典 第二巻』下中弘編 東京印書館 1993
p.131に「画指(かくし)」の項があり「法律文書において諾約者が、自己の指の形状を抽象化して紙上に記すことをもって、真正に自己の意思に基づくものであることの証とするものを、画指という。」等の記述があります。参考文献として「荻野三七彦『印章』吉川弘文館、一九六六年」が記載されています。また画指の画像「長屋王宅跡出土の木簡。710年代。山城国高田郷長解。849年(嘉祥2)。佐伯四郎丸田畠作手売券。1250年(建長2)」が掲載されています。
・『印章』荻野三七彦著 吉川弘文館 1966
「第五 書名方法の変遷 1花押」のp.340~341に「しかしさらに下級の無筆者になると指の節を画(かく)した画指(かくし)があり、そのような画指は平安初期の文書の方が量の上からは奈良朝文書より遥かに多く遺っていて、(中略)画指は無筆者の署名の代用であったが、平安中期以降のものは女性の画指ばかりである点から推して、女性の間のみに遺されていた慣行であると看做してよい。」とあります。
・『印鑑』太田淸文著 近代社 1956
「第四章 花押と自署」のp.90に「画指」があり「画指というのは自己の名の下か横に自己の人差指を置いて、他の人に指の大きさを紙に記して貰うのである。大宝律令の戸令にも、(中略)夫婦ともに文字を知らない場合は「画ケレ指ヲ」と記してあるのもその一例である。」
・荻野三七彦「中世の画指-慣習法の終焉(研究余録)」『日本歴史』1982.6 409号 p.73~77
鎌倉時代の画指文書について原本の三例と謄写一例について紹介しています。それぞれの画像も掲載しています。
・藤原秀之「画指の研究 -9、10世紀を中心として-」『史観』2000.3 第142冊 p.1~20
「はじめに」に「画指は一般に、文字を書けない者が指の長さと節の位置を記して自署のかわりとしたものであり、その起源は中国にあり、唐代以降に日本を含めた周辺各国にも広まった、とされている。」とあり、日本における画指の使用例ついて地域・形式・性別などを吟味しています。
p.17~20には現存する画指の画像が複数掲載されています。
・『虚心文集 第5』黒坂勝美著 吉川弘文館 1941
p.281~「大宝令に見えたる官位の稱呼幷に画指について」のp.300に「正倉院文書續修巻二十四に、宝亀四年四月六日山邊千足月借銭解といふ文書の中に(中略)確に画指の一であります」とあり、画像がついています。
こちらの資料は国立国会図書館デジタルコレクションで全文公開されています。(http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1265289)
- 回答プロセス
- 事前調査事項
-
なし
- NDC
-
- 日本史 (210 9版)
- 印章.篆刻.印譜 (739 9版)
- 参考資料
- キーワード
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000253521