レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2018年02月24日
- 登録日時
- 2018/06/04 15:08
- 更新日時
- 2018/06/08 11:36
- 管理番号
- 00001107024
- 質問
-
解決
松平春嶽著「虎豹変革備考」は『大英国志』を参考にしたとされている。また、「虎豹変革備考」では英国の議会政治の「二院政を提唱」している。山口県立山口図書館所蔵の『英国志』と『大英国志』の関係、また『英国志』『大英国志』で英国議会の二院制について書かれている部分が知りたい。
- 回答
-
当館所蔵の『英国志』と『大英国志』の関係について、下記資料1及び2では、イギリス宣教師ミュアーヘッドが漢訳し中国で発行された『大英国志』を、長州藩で翻刻したものが『英国志』としている。
両書の差異について、資料2p51によると、「日本版『英国志』」は、「中国版『大英国志』」と比べ、序文等に若干の改変があるが、『聯邦志略』等の他の宣教師の著書の日本版に比べると削除・改変は緩やか、としている。また、資料3によると、「日本版は大体原本そのままの忠実な翻刻」で、一部の図や「大英国志続刻」の部分が削除されているとある。両書はまったく同一ではないが、かなり近似しているものと思われる。
『英国志』において、英国議会の二院制について書かれた箇所については、国立国会図書館デジタルコレクションに収録されている『明治立憲思想史に於ける英国議会制度の影響』(p106,68コマ目)によると、「本書には其性質上英国議会に関する記述が各所に散在して居るが、其最もまとまったものは、第八巻中に「職政志略」と題してある部分」とし、「職政志略」の大部分を引用してその内容を解説している。なお『明治立憲思想史に於ける英国議会制度の影響』はインターネット公開されている。
国立国会図書館デジタルコレクション:『明治立憲思想史に於ける英国議会制度の影響』(2018年6月3日最終確認、以下同)
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1444655/68
また、資料4にも「英国志」の翻刻(抄録)があり、「職政志略」の書き下しと頭注が収録されている。『英国志』「職政志略」の原文については、当館のWEB版明治維新資料室で利用できる。
WEB版明治維新資料室:『英国志』8
https://trc-adeac.trc.co.jp/Html/ImageView/3500115100/3500115100200010/9610060981/
なお、松平春嶽著「虎豹変革備考」は資料5に収録されているが、「巴力門」「高門士」(p99)など、『英国志』の「職政志略」と共通の語が用いられていることは確認できる。
- 回答プロセス
-
1.当館所蔵『英国志』について確認
当館所蔵『英国志』はWEB版明治維新資料室で公開している。メタデータの解説によると参考文献として『洋学史事典』『十九世紀中国・日本における海外事情摂取の諸資料』が挙げられている。
『洋学史事典』p85「英国志」の項
『英国志』は、イギリス宣教師ミュアヘッドの『大英国志』を長州藩で翻刻したもので、8巻本と5巻本があるとしている。
『十九世紀中国・日本における海外事情摂取の諸資料』p35も同様で、『英国志」8巻本と5巻本は、内容的にほぼ同様としている。なお、p50に、「中国語版『大英国志』」と「日本版『英国志』を一部比較した記述がある。それによると、「日本版『英国志』」は、「中国版『大英国志』」序文等に若干の改変があるが、『聯邦志略』等の他の宣教師の著の日本版に比べると削除・改変は緩やか、としている。
また、『十九世紀中国~』に引用のあった『鎖国時代日本人の海外知識』p404-405によると、「日本版は大体原本そのままの忠実な翻刻であるが、原本には最後にイギリスの略図三枚(英倫図・蘇格蘭図・阿爾蘭図)が附され、また「大英国志続刻」と題する追加がある」が、日本版にはないとのこと。
『英国志』『大英国志』は、ほぼ同様と思われた。
2.『英国志』における英国議会の二院制に関する記述について
『十九世紀中国~』によると、『大英国志』は7巻までが歴史、8巻は「志略」として、「職政志略」「行法志略」など、国家的社会的な重要事項をまとめたものとなっており、うち、「職政志略」がイギリスの政治制度の機構をまとめたもの、とある。
『英国志』8巻本の第8巻に「職政志略」あり。ただし、白文。
3.「英国志」の翻字されたものを探す。
NDLサーチにて「英国志」で検索、『明治立憲思想史に於ける英国議会制度の影響』がヒット。68~69コマ目に「職政志略」本文を引用し、その解説がある。
Google書籍検索にて「"英国志"」で検索、『日本近代思想大系』第24巻がヒット。現物を確認し、著者別史料索引からミュアヘッドの(ミューアヘッド)の項を探す。13巻にあり。
13巻に「英国志」の翻刻(抄録)あり。「職政志略」の書き下しが含まれており、頭注がある。
4.松平春嶽の著作を探す。
当館蔵書検索で「松平春嶽」で検索。全集あり。内容を確認。
なお、松平春嶽著「虎豹変革備考」が『大英国志』を参考にしたことについては、『幕末維新と松平春嶽』(三上一夫 著,吉川弘文館,2004)p186-189等に記述がある。
- 事前調査事項
- NDC
-
- 日本史 (210 9版)
- 図書.書誌学 (020 9版)
- 参考資料
-
-
1.日蘭学会 編 , 日蘭学会. 洋学史事典. 雄松堂出版, 1984. (日蘭学会学術叢書 ; 第6)
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001702688-00 , ISBN 4841900020 (p85) -
2.吉田寅 編 , 吉田, 寅, 1926-. 十九世紀中国・日本における海外事情摂取の諸資料 : 『聯邦志略』『地理全志』『大英国志』の資料的考察. 立正大学東洋史研究室, 1995. (立正大学東洋史研究資料 ; 6)
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002494635-00 (p24-29,35,50-51) -
3.開国百年記念文化事業会 編 , 開国百年記念文化事業会. 鎖国時代日本人の海外知識 : 世界地理・西洋史に関する文献解題. 原書房, 1978.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001368289-00 (p405) -
4.加藤周一 [ほか]編 , 田中, 彰, 1928-2011 , 宮地, 正人, 1944-. 日本近代思想大系 13. 岩波書店, 1991.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002110125-00 , ISBN 4002300137 (p38-41) -
5.松平春岳全集編纂委員会 編 , 松平, 慶永, 1828-1890. 松平春岳全集 第2巻. 原書房, 1973. (明治百年史叢書)
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001228534-00 (p93-100)
-
1.日蘭学会 編 , 日蘭学会. 洋学史事典. 雄松堂出版, 1984. (日蘭学会学術叢書 ; 第6)
- キーワード
-
- 松平, 慶永, 1828-1890
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000236925