朝鮮出兵関係、瀬戸内水軍関係、造船史関係の資料には、
「鳳凰丸」に関する記述を見出すことができませんでした。
小豆島関係資料の中に、関係する記述がありましたので
以下にご紹介いたします。
『小豆郡誌』(香川県小豆郡役所 1921)
「第十二編 兵事」の「第一章 朝鮮征伐」(p.509-513)
に、次の記述があります。
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豊太閤ノ朝鮮ヲ征スルヤ本郡ニ於テモ夥多ノ船舶ト水主
トヲ徴シタルノミナラス淵崎村ノ田井ニ於テハ軍用船ヲ
新造セリ役後大谷ニ於テ之カ保存ヲ命セラレシカ遂朽チ
果テタリト傳フ
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この章では、4点の史料から「軍用船」に関係する箇所を
抜粋して掲載しています。
・御用船加子舊記ノ寫
・小豆島風土記
・小豆島三才圖會
・八代田氏由緒
このうち、「八代田氏由緒」抜粋の一部に「鳳凰丸」の
名前が見られます。
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豊太閤大軍ヲ發向シテ朝鮮ヲ征伐セントスルトキ
小豆島大谷肥土ニ據リ軍船阿多計丸鳳凰丸ヲ造リヌ
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この記述以下、船の建造時のエピソードが続きます。
『小豆島八十八カ所ガイド』(横山拓也/著 朱鷺書房 2008.9)
「第79番 薬師庵」(p.137)に、次の記述があります。
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本尊の薬師如来は、豊臣秀吉が海上安全のために作った
守り本尊。秀吉が朝鮮出兵の際に、薬師庵の東隣に設けた
造船所で、孔雀丸と鳳凰丸の2艘の軍船を造り、武運長久
を祈って本尊を安置したという。
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『香川叢書 第3』(香川県 1943)
『香川叢書』は全3巻からなり、香川県関係の各種史料を
活字化したものを掲載しています。
第3巻に収録されている「小豆嶋名所圖會」の「薬師堂」
の項(p.559)に、上記『小豆島八十八カ所ガイド』と
類似の記述があります。
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藥師堂
田井村にあり。本尊藥師佛。長壹尺二寸餘。遍禮七十九番の
札所也。同堂の左傍に大師堂あり。
本尊瑠璃光佛は、往昔太閤秀吉公の御船の守護佛なりしを、
賜るところといふ。靈験殊に新たなり。凡て當嶋は舊は賦
税といへることなくして、常に公の御用船の橈手の役を勤
しとぞ。故に戦國の間は軍艦の棹手を專ら勤め、且は此田
井村に於て朝鮮渡海の軍艦を造りしよし。是等の由縁によ
りて、當藥師佛を賜りしなりと言傳ふ。
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