質問者が「キンダーブック」ではなかったかと言っていたことを頼りに、発行元のフレーベル館へバックナンバーの調査を依頼したが、該当作品は見当たらないとの返事であった。
堺市立図書館所蔵資料で、児童書についてのエッセイや解説書等を調査、『なつかしい本の記憶』(岩波書店2000年発行)の中川梨枝子・山脇百合子の対談で、「イチゴを食べて角の生えてくるお姫様」の絵本に触れている文章を発見(P.22)。それによると「講談社の絵本シリーズ」と推測されたため、バックナンバーを所蔵している、大阪府立国際児童文学館へ調査を依頼したところ、『コガネノフネ』1941年(千葉省三・文 立野道正・絵)ではないかとの回答を得た。ただし、お姫様はドレスを着ていて、十二単ではないことや、イチゴを食べて角は生えるが、イチゴの色によって角の色が変わるというような記載は無いとのことであった。
大阪府立国際児童文学館の資料は借用不可のため、東京都立日比谷図書館に協力貸出を依頼(館内閲覧のみ)。質問者は、作品を確認し、「この作品です。ずっと心に残っていた作品だったのでうれしい。」と言われた。十二単やイチゴの色で角の色が変化する件は、同時期に読んだ他の絵本の中身を質問者が混同したものだろうと思われる。作品の中で重要な役割をする、タイトルにもなっている「コガネノフネ(きんのふね)」について、質問者は全く覚えておられない様子であった。
なお、同作品は、後の1950年にタイトルを「きんのふね」に変更し、講談社の絵本として出版されている。
上記の『なつかしい本の記憶』(岩波書店2000年発行)の他に、『ページをめくる指』金井美恵子・著 (河出書房新社 2000年発行)の50頁~55頁に「記憶のひずみ」と題して、『きんのふね』が紹介されている。
(以上は2001年時点での調査結果)
追跡調査
2001年の調査ではインターネット検索は行えていなかった。
国立国会図書館サーチで「イチゴ 角が生える」と検索してみたが、該当なし。「お姫様 角が生える」で検索しなおしたところ、レファレンス協同データベース、レファレンス事例詳細、管理番号Q2012Y0024(2013年06月20日)に記載あり。
現在、国会図書館ではこの資料は保存のためデジタル化していて、原資料は利用できない。国立国会図書館内設置端末のみでの本文の画像公開となっている。
他にも検索サイトで「イチゴ 角が生える 絵本」を入力すると、『きんのふね』にたどりつくことは出来る。